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第二章 魔塔の魔法使い
あくまで単純な理由
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彼の甘い笑顔と手つきに、いたたまれない気持ちになる。なんだか空気まで甘いような気がして、どうしたらいいのだろうかと私が視線を泳がせた時。
『きゃあ、見てコロン! アップルパイよ!』
『わぁ、美味しそうですね!』
どこから現れたのか、ピョンとテーブルの上に飛び乗ってきたカロンとコロンが、そんな空気を引き裂いた。
アップルパイは、二人の好物だ。以前作って持ってきた時に、ものすごく気に入ったらしく、また食べたいと催促されていたのだ。
急に現れたので少し驚いたが、これもいつものことだ。二匹は小さいからなのか、いつも急に視界の中に現れては人を驚かせている。主に、私とオラムを。
でも、今日ばかりは突然現れた二匹に私は感謝した。
「もちろん、あなたたちのぶんもあるわよ。はいどうぞ」
別に取り分けておいたお皿を勧めると、二匹は目を輝かせて飛びついた。
『わぁーいっ!』
『さすが、わかってるわねリーシャ!』
二匹は小さな手で器用にアップルパイをちぎりながら、次々と口の中へ放り込んでいく。
頬袋がパンパンになるまで詰め込むと、やがて膨らんだ頬を、満足そうにポフポフと撫でた。
……なにこれ、可愛すぎるんですけど!?
まさに悶絶級の可愛さである。
私がひたすら二匹を眺めていると、何やら横から視線を感じた。ハッとそちらを向くと、ノラード様がにこにこしながらこちらを見ている。
「……えっと、その、可愛いですよね」
「うん。とっても可愛いね」
……あの、キラキラした目で私を見ながら言わないでくださいませんか。私がそう言われているみたいで、なんだか恥ずかしくなってしまうじゃないですか!
カロンとコロンのことを言っているとわかっていても、そんなことをされては勘違いしてしまいそうだ。それもまた、恥ずかしくてならない。
「やっぱり、カロンたちと契約して良かったな。リーシャがこんなに喜んでくれるんだもの」
「えっ!? ……あの、ノラード様。その……カロンたちと契約したのは、この子たちがノラード様のお役に立つと判断したから、ですよね……?」
紹介を受けた時にも感じたが、まるで私のために契約したかのような言い方に、そんなわけないと思いながらも、つい確認するようなことを言ってしまった。
カロンの能力は聞いていないけれど、コロンは危険を察知できるなどの能力があると言っていた。何かしらの利益があるから、ノラード様は魔力を与えて彼らと契約を交わしているはずだ。
すぐに肯定の言葉が返ってくると思っていたのに、ノラード様はキョトンとした顔で首を傾げた。
「え? ううん。カロンたちを見つけた時に、以前リーシャがリスに触りたいって言っていたのを思い出したからだよ。使い魔にすれば、好きなだけ触らせてあげられるなって」
「……!?」
あまりに単純な理由に、唖然としてしまう。
使い魔と契約するメリットもデメリットも関係なく、まさか本当に、そんな理由で契約しただなんて。
『そうそう! だからリーシャのおかげで、ワタシたちはご主人さまの魔力をもらえるのよ!』
『そうです! だからリーシャは、好きなだけボクたちに触るといいですよ!』
ピョンと両肩に乗ってきた二匹が、さぁ撫でろと言わんばかりに上目遣いでこちらを見つめてきた。
「~~~~っ!」
ものすごく可愛い。
そんなふうに言われて、触らずにいられる人がいるだろうか。私はそろそろと右肩に乗るコロンを撫でてみた。
ふわふわで温かい。
滑らかな毛並みを撫でていると、コロンは気持ち良さげに目を細めた。
自分も撫でろとばかりにカロンが頭をぐいぐいと押し付けてくるので、カロンも撫でてみる。
コロンと同じくすべすべの毛並みが気持ちいい。
カロンが満足そうに喉をならした。
……この二匹を、私のために使い魔にしたなんて。
ノラード様の優しさと思いやりに、胸がじんわりと温かくなった。
「ありがとうございます、ノラード様。すごく嬉しいです」
「……ふふ。うん」
笑顔でお礼を言えば、なぜかノラード様の方が、とびきり嬉しそうに微笑んだのだった。
『きゃあ、見てコロン! アップルパイよ!』
『わぁ、美味しそうですね!』
どこから現れたのか、ピョンとテーブルの上に飛び乗ってきたカロンとコロンが、そんな空気を引き裂いた。
アップルパイは、二人の好物だ。以前作って持ってきた時に、ものすごく気に入ったらしく、また食べたいと催促されていたのだ。
急に現れたので少し驚いたが、これもいつものことだ。二匹は小さいからなのか、いつも急に視界の中に現れては人を驚かせている。主に、私とオラムを。
でも、今日ばかりは突然現れた二匹に私は感謝した。
「もちろん、あなたたちのぶんもあるわよ。はいどうぞ」
別に取り分けておいたお皿を勧めると、二匹は目を輝かせて飛びついた。
『わぁーいっ!』
『さすが、わかってるわねリーシャ!』
二匹は小さな手で器用にアップルパイをちぎりながら、次々と口の中へ放り込んでいく。
頬袋がパンパンになるまで詰め込むと、やがて膨らんだ頬を、満足そうにポフポフと撫でた。
……なにこれ、可愛すぎるんですけど!?
まさに悶絶級の可愛さである。
私がひたすら二匹を眺めていると、何やら横から視線を感じた。ハッとそちらを向くと、ノラード様がにこにこしながらこちらを見ている。
「……えっと、その、可愛いですよね」
「うん。とっても可愛いね」
……あの、キラキラした目で私を見ながら言わないでくださいませんか。私がそう言われているみたいで、なんだか恥ずかしくなってしまうじゃないですか!
カロンとコロンのことを言っているとわかっていても、そんなことをされては勘違いしてしまいそうだ。それもまた、恥ずかしくてならない。
「やっぱり、カロンたちと契約して良かったな。リーシャがこんなに喜んでくれるんだもの」
「えっ!? ……あの、ノラード様。その……カロンたちと契約したのは、この子たちがノラード様のお役に立つと判断したから、ですよね……?」
紹介を受けた時にも感じたが、まるで私のために契約したかのような言い方に、そんなわけないと思いながらも、つい確認するようなことを言ってしまった。
カロンの能力は聞いていないけれど、コロンは危険を察知できるなどの能力があると言っていた。何かしらの利益があるから、ノラード様は魔力を与えて彼らと契約を交わしているはずだ。
すぐに肯定の言葉が返ってくると思っていたのに、ノラード様はキョトンとした顔で首を傾げた。
「え? ううん。カロンたちを見つけた時に、以前リーシャがリスに触りたいって言っていたのを思い出したからだよ。使い魔にすれば、好きなだけ触らせてあげられるなって」
「……!?」
あまりに単純な理由に、唖然としてしまう。
使い魔と契約するメリットもデメリットも関係なく、まさか本当に、そんな理由で契約しただなんて。
『そうそう! だからリーシャのおかげで、ワタシたちはご主人さまの魔力をもらえるのよ!』
『そうです! だからリーシャは、好きなだけボクたちに触るといいですよ!』
ピョンと両肩に乗ってきた二匹が、さぁ撫でろと言わんばかりに上目遣いでこちらを見つめてきた。
「~~~~っ!」
ものすごく可愛い。
そんなふうに言われて、触らずにいられる人がいるだろうか。私はそろそろと右肩に乗るコロンを撫でてみた。
ふわふわで温かい。
滑らかな毛並みを撫でていると、コロンは気持ち良さげに目を細めた。
自分も撫でろとばかりにカロンが頭をぐいぐいと押し付けてくるので、カロンも撫でてみる。
コロンと同じくすべすべの毛並みが気持ちいい。
カロンが満足そうに喉をならした。
……この二匹を、私のために使い魔にしたなんて。
ノラード様の優しさと思いやりに、胸がじんわりと温かくなった。
「ありがとうございます、ノラード様。すごく嬉しいです」
「……ふふ。うん」
笑顔でお礼を言えば、なぜかノラード様の方が、とびきり嬉しそうに微笑んだのだった。
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