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第一章 離宮の住人
閑話 ノラード4
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◇
リーシャは、翌日もやって来た。
緊張で寝付けなかった僕は、ようやく朝日が差し始める頃、窓からここへ向かってくる彼女の姿を見つけた。
……本当に来た。リーシャは、僕に近づくのが怖くないのかな。
挨拶をすると決めたものの、ドアを開けた途端に顔をしかめられたらどうしよう。怯えて、近寄るなと言って逃げられたら?
リーシャは今日も、すぐにはここへ向かって来なかった。
彼女を待つ間、僕はそんな不安と緊張で、どうにかなってしまいそうだった。
「第二王子殿下、おはようございます。リーシャです。朝食を持って参りました。昨日のように、こちらへ置いておきますね」
リーシャがすぐに行ってしまいそうになったので、僕は慌ててベッドから飛び降り、勢い余って体勢を崩してしまった。手を床についてしまい、ドタッ、バタンと大きな音がしたけれど、気にしている場合ではない。早く出ないと、リーシャが行ってしまう。
勇気を出してドアを開けると、驚いたように目を見張る年上の女の子がいた。大人というより少女だったことに、僕も少し驚く。茶色の髪と、水色のぱっちりした目が可愛らしい女の子だった。
「あ、あの……あなたが、リーシャ?」
誰かに話しかけるのは久しぶりすぎて、声が少し裏返ってしまったかもしれない。怖がられないだろうか、逃げられないだろうかと緊張していたのに、リーシャはにこりと僕に笑いかけてくれた。
「はい! 初めまして、第二王子殿下。お会いできて光栄です」
僕は固まって動けなくなった。
化け物の僕に、こんなふうに笑顔を向けてくれるなんて。
好意を示してくれるなんて。
胸がざわざわした。
ざわざわして苦しいのに、嬉しくてたまらなかった。
お湯が必要かと聞かれたので、洗浄魔法を見せると、リーシャは目を輝かせながら褒めてくれた。なんだか恥ずかしくて、僕はリーシャが持ってきてくれた朝食に目を向ける。
リーシャが持ってきてくれたのは、ソーセージが中に入ったパンだった。ソーセージは食べ慣れているはずなのに、これはすごく美味しそうに見える。
聞けば、リーシャが作ったのだと言う。
それなら何も迷うことはなかった。
思ったとおり、口へ入れれば、しっとりふわふわしたパンにジュワッとしたソーセージの肉汁が合わさって、とても美味しかった。
いつも味気なかったソーセージが、パンに包まれているだけで、こんなに美味しくなるなんて。
……ううん。たぶん、リーシャが僕のために、ちゃんと作ってくれたからだ。
美味しすぎてやっぱり少し物足りなかったが、もっと食べたいなんてわがままを言えば、嫌われてしまうかもしれない。それだけは嫌だった。
お礼を言えば、リーシャは嬉しそうに笑ってくれた。
その日から、リーシャは僕の全てになった。
リーシャは、翌日もやって来た。
緊張で寝付けなかった僕は、ようやく朝日が差し始める頃、窓からここへ向かってくる彼女の姿を見つけた。
……本当に来た。リーシャは、僕に近づくのが怖くないのかな。
挨拶をすると決めたものの、ドアを開けた途端に顔をしかめられたらどうしよう。怯えて、近寄るなと言って逃げられたら?
リーシャは今日も、すぐにはここへ向かって来なかった。
彼女を待つ間、僕はそんな不安と緊張で、どうにかなってしまいそうだった。
「第二王子殿下、おはようございます。リーシャです。朝食を持って参りました。昨日のように、こちらへ置いておきますね」
リーシャがすぐに行ってしまいそうになったので、僕は慌ててベッドから飛び降り、勢い余って体勢を崩してしまった。手を床についてしまい、ドタッ、バタンと大きな音がしたけれど、気にしている場合ではない。早く出ないと、リーシャが行ってしまう。
勇気を出してドアを開けると、驚いたように目を見張る年上の女の子がいた。大人というより少女だったことに、僕も少し驚く。茶色の髪と、水色のぱっちりした目が可愛らしい女の子だった。
「あ、あの……あなたが、リーシャ?」
誰かに話しかけるのは久しぶりすぎて、声が少し裏返ってしまったかもしれない。怖がられないだろうか、逃げられないだろうかと緊張していたのに、リーシャはにこりと僕に笑いかけてくれた。
「はい! 初めまして、第二王子殿下。お会いできて光栄です」
僕は固まって動けなくなった。
化け物の僕に、こんなふうに笑顔を向けてくれるなんて。
好意を示してくれるなんて。
胸がざわざわした。
ざわざわして苦しいのに、嬉しくてたまらなかった。
お湯が必要かと聞かれたので、洗浄魔法を見せると、リーシャは目を輝かせながら褒めてくれた。なんだか恥ずかしくて、僕はリーシャが持ってきてくれた朝食に目を向ける。
リーシャが持ってきてくれたのは、ソーセージが中に入ったパンだった。ソーセージは食べ慣れているはずなのに、これはすごく美味しそうに見える。
聞けば、リーシャが作ったのだと言う。
それなら何も迷うことはなかった。
思ったとおり、口へ入れれば、しっとりふわふわしたパンにジュワッとしたソーセージの肉汁が合わさって、とても美味しかった。
いつも味気なかったソーセージが、パンに包まれているだけで、こんなに美味しくなるなんて。
……ううん。たぶん、リーシャが僕のために、ちゃんと作ってくれたからだ。
美味しすぎてやっぱり少し物足りなかったが、もっと食べたいなんてわがままを言えば、嫌われてしまうかもしれない。それだけは嫌だった。
お礼を言えば、リーシャは嬉しそうに笑ってくれた。
その日から、リーシャは僕の全てになった。
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