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女神の呼び出し

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「……何が、ずーっと一緒、よ」

 失踪から1ヶ月、未だに琉生くんは見つからないまま、事件は闇に紛れようとしていた。

 あの言葉が本気だったとは思ってないけれど、琉生くんが自分からいなくなるような要素など、まるでなかった。何かの事件に巻き込まれている可能性が高いと思う。あんなに可愛いんだから、誘拐されてしまったとしてもおかしくない。彼の無事を願うしかできないことが、とても辛かった。
 
 ため息を吐きながら、ベッドでゴロリと寝返りを打った瞬間、聞き覚えのない声が頭に響いた。

“見つけた”

「っ!?」
 
 キィーン、と耳鳴りがした。
 思わずギュッと目を閉じると、次に目を開けた時には、私はなぜか真っ白な空間に、一人佇んでいた。

「えっ……」
 
 今いる環境と同じく、私の頭も真っ白になる。
 
 ……ここ、どこ!?

“ようやく見つけました。あなたがサリですね?”

 さっき聞こえたのと同じ声が、再び頭の中に響いた。
 
「えっ、あの、誰? ここ、どこ?」
 
 これは夢だろうか。上下左右、どこを見ても真っ白で果てがない。さっきまでベッドに寝ころんでいたことを思うと、夢でしかないように思える。

“急に連れてきてしまってごめんなさい。でもどうしても、あなたに私の世界へ来ていただかないといけないのです”

 ……はい? 私の世界って、どういうこと?
 
 えっと、こ、これは、もしかして。
 最近はまっているラノベによくある、あの展開?

「……もしかして、異世界の神様? ……なーんて」

 まさかね、と思いながらも問いかける。

“あら、話が早いですね。すると、召喚にも応じていただけるのかしら?”

 異世界召喚きちゃった!!

 これ、夢じゃないの?
 そう思った私は、思わず古典的な方法で確かめてみた。
 
 ……痛い。両頬を思いきりつねるんじゃなかった。

“まあ、両頬が真っ赤になっていますよ。面白いのね、サリは”

 クスクスと可愛らしい声で笑われる。
 やだ、こんな可愛らしい声の女神様に褒められるなんて、照れちゃうな~。

 ……って、いやいや、照れてる場合じゃない。

「いえ、あの、申し訳ないですけど、異世界へ行くわけにはいきません。両親も心配するでしょうし、第一、私なんか異世界に行っても、何の役にもたたないと思いますよ?」

 格闘技を習っているわけでもないし、成績もせいぜい中の上な私が、一体何の役に立つというのか。異世界料理チート定番の、マヨネーズの作り方だって知らないというのに。異世界に必要な、誰か別のサリさんと勘違いしてませんか?

“いえ、どうしてもあなたが必要なのです。来てもらわなければなりません。あなたやご両親、周りの方々には申し訳ないと思っています。私にできる限りのことはさせていただきますので、どうか、魔王を制し、私の世界を救ってください!”

 えーーー!?

 魔王を倒して、世界を救うって。そういうのは勇者の役目じゃないの? あ、私に勇者をやれってこと!? そりゃ、最近は女性の勇者も珍しくないけど。

「あの、どうして私なんですか? 他に勇者にふさわしい人はいくらでもいると思うんですけど……」
 
 全くもってわからない。

 私なんかにこんなに丁寧にお願いしてくださっている女神様を助けてあげたいのはやまやまだが、私にだって、簡単に捨てることのできないものはたくさんある。

 今まで大切に育ててくれた両親や、生意気な弟。友達も結構たくさんいる方だと思うし、こっそり集めている可愛いグッズたちだって! いや、それは最悪いいけれど、それを弟とかに見つけられるのは恥ずかしすぎる!

“あなたに勇者になって欲しいわけではありません。ただ、魔王をどうにかしてほしいだけなのです”

 ……ん? それ、どう違うの?

「とにかく、そんな大層なこと、私にできるとは思えません。戦闘技術や経験もないし、ゲームですらそんなに詳しいわけじゃないし」

 魔王を倒すようなRPGゲームなんて、弟と一緒に昔ちょっとやっていた程度の知識しかない。

“確かに、私の世界はあなたの世界に比べ、残念ながら文明レベルも低く、治安も決して良くありません。それに困ることのないよう、しっかりと加護を与えます。ええ、それはもうしっかりと”

 おおう。まあ、そっちで困らないようにしてくれるなら少し安心できるけど、問題はそれだけじゃないんですってば。

 私の困惑を察したのか、さらに女神様は続ける。

“少し前、恋人が行方不明になりませんでしたか?”
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