66 / 76
65
しおりを挟む◇◇◇
授業終了後の出来事だった。
「お二人さーん!!」
エリオットとフレディが廊下を歩いてる最中、後方から聞こえる馴染み深い声。振り向くと案の定セドリックで、人懐っこそうな笑みを見せると手を振る。
「どうしたの?」
「いやぁ、実はアリスティアの姿を見掛けへんねんけど、フレディとエリオットは知らんか?」
「僕は見掛けてないけど、エルは?」
「俺も知らないな」
思い返しても今日はアリスティアとは会っていない。
「んー、また何か事件に巻き込まれておらんかったらええけど……」
「アリスティアのことだから、会長さんのところにでも行っているんじゃないのか?」
「昨日のことを謝りに、か? 確かにそうかもしれへんな」
うんうんとセドリックは合点したように頷く。
無意識にエリオットはセドリックのことを凝視した。
身体や頭の包帯は外され、普段通りのセドリックが確かにそこにいる。強いていえば、風紀委員の証である黒いロングコートを羽織っていないことが唯一の違い。
ふとセドリックと視線が交わる。その蜂蜜色の瞳がエリオットのことを射抜く。普段通りのはずなのに、自分を正視するその蜂蜜色の瞳がーー何処かでーー
「そういえばもう大丈夫なの?」
「ん? あぁ、もう大丈夫や。充分寝たからな」
フレディの言葉に視線は逸れる。そのことを何処か安堵している自分がいた。
何故だろう、何かがおかしい。昨日のあの事件から何かが変わった気がする。絡まって行先も分からず、解くことも不可能だった魔力の糸が複数の何かと繋がっている……という何とも不可思議な気分だ。
その一つがセドリックな気がするが……グレイディなんていう姓を持つ者とは前世とは全く関わりがない。これが生徒会長のアランだったのなら、何となく理由も察せるが……。
「ん? 君たち、一体何をしているんだ?」
風紀委員の証である黒いロングコートを靡かせながら、ディランは不思議そうに三人に声を掛ける。
「ディラン委員長やん、どないしたん? あ、もしかして自分に仕事か?」
「……は?」
「あーもう、それならそうだと電話で言ってくれたら良かったやん。ディラン委員長のいけず~」
「何をーー」
「せやったらはよ着替えんと!!」
「さっきから君は何を言っているんだ!!」
セドリックの耳を思いっきり引っ張り上げる。
「いででで!! 何するん!?」
「それは俺の台詞だ! セドリックは大事をとって数日間仕事は無しだろ!?」
「いやぁー!! 仕事がないと暇なんよ!! このままだと暇過ぎて死んでしまうわー!!」
……何だこれ。一連の流れを見てエリオットは先程まで悩んでいたのが馬鹿馬鹿しく感じた。
「すまないな、騒がしくして」
「いや、それよりディラン先輩顔色悪いですよ」
「……え?」
「せ、先輩!?」
エリオットの言葉にフレディとセドリックは驚きの声を上げる。
「え、エル……どういう、こと?」
「お二人さんっ、いつの間にそこまで親密な関係に!?」
フレディは狼狽し、セドリックは「何でや……何で自分よりディラン委員長との仲が……」なんてブツブツ呟いている。
何故先輩呼びでそこまでの衝撃を受けているんだと疑問に思っていると
「俺のことを委員長呼びすると、他の委員長と区別がつかないからな。俺からお願いしたんだ」
「で、でもそれなら自分と同じようにディラン委員長呼びでええやん!? 何故先輩呼びやねん!? 自分許可出していないんですけど?」
いや何故お前の許可がいるんだと呆れていると、隣にいるフレまでもが同意していた。
「セドリック、君はそもそも病み上がりだろ? 大人しくーー」
ディランがぽんっと軽く横腹を叩くと
「ーーい゛!?」
刹那、沈黙が訪れる。
呆然とする三人と、しまったと言わんばかりのセドリック。
暫しの沈黙を割るように口を開いたのは
「そ、そろそろ自分はお暇でもーー」
「ちょっと待て。傷を見せろ」
「い、いやぁディラン委員長……そんな怖い顔せんでも……」
この場から逃げようとするセドリックを捕まえると、ディランはセドリックのシャツを引っ張り上げようとした途端
20
お気に入りに追加
738
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる