だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

文字の大きさ
上 下
61 / 76

60

しおりを挟む
 ふと頭上が暗くなる。顔を上げるとアリスティアから発せられた魔法が、フレディに向かって降り注ごうとしていた。

「フレ――っ!!」

 頭の中で術式を組み立てる。駄目だ、間に合わない。けどLv低い魔法では防げない。――なら。
 エリオットはフレディを突き飛ばす。「エルっ」と大きく目を見開いたフレディに、エリオットは笑い掛けた。
 もし魔法が直撃したとしても俺なら大丈夫と。

「地を穿て!! シュタール!!」

 しかしフレディが地面に倒れこんだのと同時に、巨大の石の壁が二人を守るように突如湧き上がる。
 誰だと魔法の主を視界に捉えると、そこには意外な人物がいた。

「お、お二人さん。怪我はおまへん?」
「せ、セドリック!?」

 グイっとグローブを引っ張ったセドリックは人懐っこい笑みを見せたかと思えば、突然獣を駆るような鋭い眼光。そして先ほどと同じように巨大の石の壁を作り出した。

「お二人さんとゆっくり話す暇はないようやなぁ」

 じゃっとセドリックは走り去った。まるで嵐のようだったが……。

「……セドリックってそれなりと魔法使えるんだな」

 あの規模の魔法を簡単に発動出来る者はそうそういない。
 エリオットが関心していると、フレディが一言。

「あれ、エル知らないの? セドリックは一年の中で魔法の成績一位の実力者だよ」
「……え?」

 魔法の成績が一年の中で一位?? 思ってもいなかった事実にエリオットは瞠目する。
 あの中二病セドリックが?? 如何せん信じ難いことだか、次々魔法を防御し、他の生徒たちのことを助けている光景を見るとそれは事実なのであろう。

「てかエルっ!! どうして僕を突き飛ばしたのさ!!」
「いや、あのままだとフレ危なかっただろ」
「それはエルだって同じでしょ!!」

 喧噪の最中で言い争う二人の姿は異様である。
 エリオットは息を吐くと

「俺は自分に防御魔法を掛けていたんだ。だから丸腰であるフレよりは大した怪我にはならない」

 まあ、それは嘘だ。悲しいことだが、自分に掛ける余裕はなかった。思いのほか魔法の腕が落ちているらしい。

「でも――っ!!」

 何処か納得出来ないフレディだったが、突如胸を押さえる。

「……え、何、今の」

 胸元……普段剣を封じている箇所が鋭利なもので抉られたような痛み。
 それと同様な痛みがエリオットにも訪れていた。
 今のピリついた空気はなんだ。咄嗟に抑えこんだが、黙示録が表に出ようと疼く。
 なんだ、何かがこの学園内にいるのか。
 視界をあちらこちらと巡らすと、足止めを食らったかのようにぼーっと突っ立っているセドリックの姿が目に入った。

「……なんや、今の……」

 セドリックの元へ脅威が迫る。

「セドリック!!」

 思わずエリオットは叫ぶ。
 ハッと我に返ったのと刹那、アリスティアの魔法が直撃し、体は宙に舞うと地面に叩きつけられた。

「フレはセドリックの様子を見てくれ!! 俺はアリスティアのところに向かう!」
「え、エルっ!!」

 エリオットはアリスティアの元へ走り出す。
 アリスティアの魔力の暴走の原因は分からないが、杖に送られている魔力の線を切れば強制的に流れを止めることは自分でも可能だ。
 この学園内で出来る者がいるかは不透明。自分がやるしかないと、地を駆けるが――突如空から人が舞い降りる。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

処理中です...