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しおりを挟む魔法が止められない……? まさか魔力操作が出来ないのか!?
魔力操作。それは魔法が扱える者たちが必ずしも習得せねばならないものだ。魔法を正常に発動するためにも勿論のこと、自由自在に威力を調節すること、自分の意志で発動を止めること。それが出来なければ決して魔法を魔法を扱ってはいけない。
近年では魔力操作の補助としての魔道具があるが、この学園に入学するためにはそのような魔道具に頼らずに操作出来るのが必須事項だ。
そもそも補助の魔道具を身に着けるものは魔法の才能はあってもそれを制御する能力が壊滅的な者がほとんどであり、大半は中等部に入学する前には制御する力が身についている。
なら、魔力操作が出来ないのではなく……。
――魔力の暴走。それしか考えられない。
既に役目を終えた剣を再度抜剣すると、アリスティアが発動させている魔法陣を切り裂く。が、思いのほか硬い。
この耐久度では依然生成されている魔法陣全て切り裂き破壊することは不可能だ。
「先生っ!! 緊急事態です!! 生徒たちを避難させてください!! そして、可能であればリルを呼んで来てください!!」
アランの言葉によってアリスティアの状況を一瞬にして把握した先生たちは緊急事態を知らせる笛を鳴らした。
「くそっ不味い!! 間に合わな――」
しかし破壊が間に合わず、魔法が一斉に発動した。
◇◇◇
「え、何?」
突然笛が鳴り響き、辺りは騒然とする。周りの生徒たちは何が何なのか把握出来ていないようだ。しかしそれはエリオットたちも同じだ。
状況を把握しようと立ち上がった時、今すぐ建物に避難しろと先生たちの言葉と同時に魔法が地面を抉った。
その真横にいた生徒が叫び声を上げたことによって、収拾がつかない混乱が巻き起こる。
「魔法!? 一体何処から」
「……っ、そういうことか」
エリオットは杖を瞬時に顕現させる。
この騒動の元凶はどうやらアリスティアのようだ。だが様子がおかしい。そばにいる生徒会長が一心不乱に魔法陣を破壊している状況から、これはどうやら魔力の暴走だ。
しかし、何故突然このようなことが起こっているかの理由が分からない。魔力の暴走は前兆がある。術者の魔力の波が一定ではないこと、まるで爆発したかのように暴発すること。大体この二つだ。
波が一定ではなければあの時二人が現れた際にアリスティアの異変に気付く。暴発なら、暴走が始まった時点での魔力の霧散で気が付く。しかし今回は何も感じられなかった。
まるで誰かが意図的に暴走させたような不気味さを感じる。
「エルっ僕は会長の援護に向かう。だから君は――」
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