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……はぁ、マジでめんどくせぇ
髪の毛を掻き分けながら、アランはため息を吐いた。
生徒会の仕事も立て込んでいる中、何故このようなことをしなくてはならないのだろうか……。元凶は言わずもがな、アリスティアという季節外れの転校生だ。
「アラン様! 頑張りましょうね!」
横で笑うアリスティアを尻目に、アランは腰に掛けてある剣を抜く。
生徒会の仕事はクライヴたちに任せてある。大体のことはあいつらで処理出来るだろう。
今自分がやるべきことはデュオの授業を難なく終わらせ、さっさと生徒会室へ戻ることだ。
始め! という言葉と共にアランは地を駆ける。
授業自体、一年生の戦力を測るためだ。自分はなるべく魔物の攻撃を避け、軽く攻撃を与えるだけ。あとはアリスティアがとどめを刺すだけなのだが……。
「きゃー!! 怖いですわ~!!」
当の本人であるアリスティアは無造作に杖をブンブンと振り回しているだけであった。
想定していなかった出来事によって、アランは思わず「は?」と言葉を零してしまう。
「アラン様、どうしましょう。わたくし怖くて攻撃なんてできませんわ…」
うっうっうと泣く仕草をするが、泣き言で合格が出来るほどこの学園は甘くない。
……一体どうやってこの学園に転校してきたんだ。
希少な光属性を持っているからとは言っても……戦うことも出来ない世間知らずなお嬢様が転校出来る学園ではない。
……そういえば“グライスナー”という姓、何処かで聞いたことがあるような。
いや、考え事に耽る前に——
「アリスティア! この魔物はお前が倒さないと合格にはならないぞ!!」
アランの言葉に、アリスティアはハッとする。
「……確かにそうですわ。もし落第点になって、留年なんてしてしまえば物語に支障をきたす……」
一人言を呟くと、杖を魔物へと向ける。
「ヒロインであるわたくしのため、消え去りなさい!! 光の刃!!」
カッと杖が光り輝く。上空に現れた幾重の魔法陣から降り注ぐ光の刃。それは次々に魔物を貫き、消し去っていく。
言動はあれだが、魔法の腕前はかなり高いようだ。これなら編入試験も突破出来たことに文句はない。
「あ……あれ?」
魔物は全て消し去った。だが、アリスティアの様子がおかしい。
「え、うそ……」
アリスティアの杖は輝き続け、魔法陣も生成されていく。
「おい、何をしている! 早く魔法を中断するんだっ」
「あ、アラン様……どうしましょう」
アランの言葉にアリスティアは——
「わたくし、どうやって魔法を止めればいいのか分かりませんわ……」
顔面蒼白で言葉を返した。
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