だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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◇◇◇

 あの後直ぐに次の授業会場である校庭へ急いで向かった。幸い時間には間に合い、ほっと胸をなで下ろした。
 今回の授業は、デュオとのコンビネーションを向上させるための授業。簡単に言うと共闘だ。
 この学園の卒業生の大半は騎士団や何処かの冒険パーティに所属する者が多く、そのための練習試合ということだ。端から魔法省などの事務作業を中心とした仕事を志している者には苦な授業だろうが、それでも数人と共に戦うということは学んでおいて損は無い。
 だが今回の授業は一年生全員という大人数になるため、半分に分けられている。なので先ほどまで共に居たエドワードは今回は不参加だ。
 ……まぁ、フレと共に戦えるだけで俺はワクワクしているけどな。

「ふはは、この暗黒竜が封じられし左手の封印を解く時が来たんやな」

 フレディと合流した途端に聞き慣れた声。振り向くと案の定セドリックで、左手を目元に添え何やら呟いていた。
 ……こいつ、見た目だけじゃなくて性格も厨二病なのかよ。

「シェリーも一緒にやろうや」
「え!?」

 セドリックの隣にいたシェリーは、困惑した様子で声を漏らした。

「セドリック、彼女を巻き込むなよ…」

 流石に助け舟くらいは出してやろうと、セドリックに言葉を掛けた。
 にしても、セドリックとシェリーには風紀委員という接点以外は無さそうだが……。こうしてこの授業に参加しているということは、もしかしてデュオ同士だろうか。

「いやいやエリオット、こう見てもシェリーには才能があるんや!」
「さ、才能?」

 一体どんな才能なんだと聞き返すと、腕を高く上げ口角を上げ

「シェリーには自分と同じ深淵アビスの血が流れているんや!! そう、サラブレッドなんやぞ!!」

 ドヤ顔で言葉を発した。まるでそれが真実と言わんばかりに。
 これは聞き返した自分が馬鹿だった。今まで過ごしてきてセドリックの性格は知っていたというのに。

「……同じ血が流れているとか……どういう意味なんだよ」
「あれ? エルは知らなかったの。セドリックとシェリーはいとこ同士だよ」
「え!?」

 咄嗟に二人を凝視する。血の繋がりはとても感じられない。
 だが、厨二病なセドリックとふわふわな女の子のシェリー。双方顔の造形が良いという点だけは、何処か繋がりを感じてしまう自分もいる。

「なんやなんや、あんまりぎょうさんと見るんやない。恥ずかしいやろ」
「恥ずかしがるな。気持ち悪い」
「酷っ!!」

 そんな会話をしていると、周りの生徒たちがザワついたと思えば「キャー」と歓声も上がった。
 ふとその声の方向へ向けば、普段の軍服を脱いだワイシャツ姿のアランと、最早様々な問題の元凶化としたアリスティア。
 何故生徒会長が一年の授業に参加しているんだと一瞬思ったが、そういえばあの歓迎会後の出来事によって半ば強制的にアリスティアのデュオとなってしまった。
 あの一件に関しては、心の中でご愁傷さまと合掌してしまう。
 生徒会長として忙しい毎日を過ごしているというのに、問題児の面倒までみる羽目になったこと。どうしても不憫にしか思えない。
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