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しおりを挟む昼食後。フレディが委員会の仕事に行っているため、エリオットは一人廊下を徘徊していた。
こういう時は教室でのんびり過ごしたり、中庭に行ったりとしたいのだが……生憎何方にも大勢の人がいる。
仮にもいじめられっ子という存在である自分がその場に飛び込むのには少々問題があるような気がして、行き場をなくしたエリオットはこうして廊下を徘徊するすべしかなかったのだ。
「……委員長?」
視線の先は光を浴び輝く銀色の髪の持ち主——風紀委員長のディラン・ディアンヴェーダだ。
彼は少し驚いたように目を見開くと、申し訳がなさそうに眉を下げた。
「先程は急にすまなかったな」
「いや、聞き取り調査というのは大事なことだと思うので大丈夫です」
……本音はあまり関わりたくない人物だけど、目の前にいる風紀委員長であるディランはどうしても雑な扱いはできない。
これがセドリックならば、適当にあしらって逃走するんだけどな……。
「それに、リルもお邪魔したとか……なんか変なことをされなかったか? 写真を撮られたりとか、物を拝借という名の持ち逃げとか……」
「いや、特に……」
写真を撮られることも、物を拝借されることもなかった。というより、あの人は一体どういう立ち位置にいる人物なのだろう。
広報委員会——新聞を製作している委員会だが、リル・ロンズデールという人物は噂話が好きで神出鬼没な地獄耳の持ち主。
そして、逆らえば世間的に抹消される。そのため学園内だけではなく、街の人たちにも恐れられているという生徒会長であるアランよりも影響力……いや、権力が強い。
それが一瞬霞んでしまう語尾の『にゃ』が強いて気になる程度だろうか。
「委員長が言うようなことはなかったですけど、個人的には怖いですかね……」
そう、あの謎の影響力&権力も怖いが、品定めをするような鋭い目付き。
地獄耳の持ち主であり、広報委員会に所属しているのならば気になっても仕方がないだろうが……明らかに此方に探りを入れてきた。
……新入生歓迎会の事件の一部始終のことを。
後々面倒事に巻き込まれたくないことも、フレと共に平穏に過ごしたいことも本音だ。
だけど、リルはそれではない何かを知りたがっているように見えた。
事件の話を聞きたかっただけ。それは何かの口実に過ぎない。そんな気がしてならないのだ。
「怖い、か。まぁ、リルは新聞のネタに関わるとギラギラするからな」
ディランは呆れ気味に言葉を吐いた。
「でも、悪い人ではないんだ。必要以上に怖らがらないでほしい。……というより、怖がっているとかえって目をつけられるから気を付けたほうがいい」
「そ、そうなんですか」
……それなら考え過ぎだろうか。
あまり凝視することは出来なかったが、あの眼鏡が魔道具である可能性も気のせいだったりするだろうか。
そもそも、目元に魔道具を設置するなんて聞いた事がない。
「それより、委員長は見回りですか?」
話題を変えようと口にした言葉だったが、ディランは少し顔を曇らした。
「まぁ、そうなんだが……その……委員長と呼ぶのは……」
「え?」
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