だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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◇◇◇

 あぁ……本当どうしましょう。
 アリスティアは現在の状況に欣喜きんきしていた。
 何度も願い続け。あの日、新入生歓迎会の時の出来事のお陰か、遂にこのイベントがやって来たのであった。
 それは————

「あんた、この場に呼び出されている理由はもちろん分かっているんだよね!」

 そう、制裁イベントである。
 生徒会長アランと親しくなったヒロインのことを良く思わない、一部の親衛隊が制裁を加えようとする。
 そんなヒロインの元に、風紀副委員長であるジェラールが登場するという、制裁&ジェラールとの出会いイベント。
 漸くこのイベントを起こすことが出来た。
 今まではフレディ以外のイベントは謎に起こすことが出来ず、疑問を抱いていた。
 実は悪役令嬢も転生者で、謎の愛されパターンになってる……というのなら納得はいくが、このゲームにはそんな立ち位置のキャラは存在していない。
 これは、バグ……ということなのかしら。

「あんたがアラン様のデュオになるなんて、なんて烏滸がましい!!」
「そんな願いごとなんて口に出すのも言語道断!!」

 何やらモブたちがギャーギャー騒いでいるわね。
 そんなに、ヒロインである私のことが羨ましいのかしら。
 でも残念ね。あなた達がいくら頑張ったとしても、わたくしと同じ土俵になんて立てないわ。
 さて……そろそろジェラール様がやって来るはずなんだけど。
 ちらりと扉の方を見るが、向こう側は静謐に包まれていた。
 ……おかしいわね。まさか、これもバグってこと?
 それともイベントを起こすための何かが必要とかじゃないわよね?

「ちょっと!! 聞いているの!?」
「きゃあっ!!」

 グイッと髪の毛を引っ張りあげられる。
 悲鳴をあげたのはもちろん演技であるが、一向に来る気配がない。
 せっかく制裁イベントが起こったというのに……そんなのって……。
 アリスティアは面倒臭いと言わんばかりに、ため息を吐いた。
 ジェラール様が来るのなら、と思ってこんなモブたちと同じ空間にいるというのに……来ないのなら致し方ないわね。
 大人しく制裁なんて受けないわ。
 返り討ちにしてしまおうと、腕輪アーティファクトを展開しようとした刹那——結界魔法によって閉じられていた扉が大きな音を立てる。
 親衛隊がざわつくのとは対称的に、アリスティアは表情を明るくする。
 これは、もしかして……。
 バチンっと、結界魔法が破壊されるのと同時に扉が吹き飛んだ。
 埃が舞い、現れた人物は——


「せっ、セドリック様!?」
「ほんま君ら、何しとん?」

 ジェラールではなく、セドリックであった。
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