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あぁ……本当どうしましょう。
アリスティアは現在の状況に欣喜していた。
何度も願い続け。あの日、新入生歓迎会の時の出来事のお陰か、遂にこのイベントがやって来たのであった。
それは————
「あんた、この場に呼び出されている理由はもちろん分かっているんだよね!」
そう、制裁イベントである。
生徒会長アランと親しくなったヒロインのことを良く思わない、一部の親衛隊が制裁を加えようとする。
そんなヒロインの元に、風紀副委員長であるジェラールが登場するという、制裁&ジェラールとの出会いイベント。
漸くこのイベントを起こすことが出来た。
今まではフレディ以外のイベントは謎に起こすことが出来ず、疑問を抱いていた。
実は悪役令嬢も転生者で、謎の愛されパターンになってる……というのなら納得はいくが、このゲームにはそんな立ち位置のキャラは存在していない。
これは、バグ……ということなのかしら。
「あんたがアラン様のデュオになるなんて、なんて烏滸がましい!!」
「そんな願いごとなんて口に出すのも言語道断!!」
何やらモブたちがギャーギャー騒いでいるわね。
そんなに、ヒロインである私のことが羨ましいのかしら。
でも残念ね。あなた達がいくら頑張ったとしても、わたくしと同じ土俵になんて立てないわ。
さて……そろそろジェラール様がやって来るはずなんだけど。
ちらりと扉の方を見るが、向こう側は静謐に包まれていた。
……おかしいわね。まさか、これもバグってこと?
それともイベントを起こすための何かが必要とかじゃないわよね?
「ちょっと!! 聞いているの!?」
「きゃあっ!!」
グイッと髪の毛を引っ張りあげられる。
悲鳴をあげたのはもちろん演技であるが、一向に来る気配がない。
せっかく制裁イベントが起こったというのに……そんなのって……。
アリスティアは面倒臭いと言わんばかりに、ため息を吐いた。
ジェラール様が来るのなら、と思ってこんなモブたちと同じ空間にいるというのに……来ないのなら致し方ないわね。
大人しく制裁なんて受けないわ。
返り討ちにしてしまおうと、腕輪を展開しようとした刹那——結界魔法によって閉じられていた扉が大きな音を立てる。
親衛隊がざわつくのとは対称的に、アリスティアは表情を明るくする。
これは、もしかして……。
バチンっと、結界魔法が破壊されるのと同時に扉が吹き飛んだ。
埃が舞い、現れた人物は——
「せっ、セドリック様!?」
「ほんま君ら、何しとん?」
ジェラールではなく、セドリックであった。
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