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 一歩後ろに下がった刹那、目の前にいる三人は頭を勢いよくぶつけるように土下座をし、謝罪をする。
 あまりにも異常な光景に、エリオットは口をあんぐりと開けた。

「本当に申し訳ございませんでした!」
「もう二度としません!!」
「……は? へ? そもそも誰?」

 エリオットには目の前の生徒たちが一体誰なのか思い当たる節かなかった。
 そもそも自分はいじめられっ子であるため、その関連の誰かだと思う……のだが。
 だめだ。記憶の糸を辿っても、誰なのか分からない。
 それほど、自分にとってはどうでもいいことなのだろうが……如何せん、この場で土下座なんてされていたら目立って仕方がないっ。

「俺たちは取り返しのつかないことをしてしまいました」
「もう二度としないと誓います。一生掛けて償いますので、どうか許してくださいっ!!」
「許すって……何を?」

 エリオットの言葉に、目の前の三人は目を丸くした。

「え、いや……新入生歓迎会のこと……なんだけど」
「風魔法で……崖下に落ちて……」
「あー、あのことか」

 そういえば、風魔法で背中を押される形で転落したんだっけ。
 ということは、この目の前にいる三人が犯人か。
 まぁ、だとしても——

「別にいいんじゃね? 俺、生きてるし。そんなに気にしなくても」

 面倒事はごめんだと軽くあしらったが、目の前の三人は突如大きな声を上げた。

「はぁぁぁーー!!???」
「ちょっと待ちなさいよ!! 生命を落としそうになったというのに、何よその反応!!」
「そうだそうだ!!」
「えぇ……別にあれくらいどうって事ないし」

 前世の世界なんか、あの出来事と比にならない事件に巻き込まれることなんてざらにあったからなぁ……。
 天使様だと崇められていたが、それを良く思わない者は一定数いる。
 だから生命を狙われることなんて日常茶飯事だ。
 それは魔神王の配下だけではなく、守るべき存在である市民にだって生命を狙われることがあった。
 その度に自分で対処したり、守人たちに守ってもらっていたな……。
 そういえば、守人の一族はまだ存在しているのか……?
 そもそも、守人が誰だったのか思い出せない……せめて家名だけでも思い出せれば……。
 けれど、何度記憶の奥底を掘り返しても思い出せなかった。
 それに……守人たちは俺がいなくなってどうなったんだろうか。
 幸せになったのだろうか。
 生命を落とすこともなく、生涯を終えたのだろうか。
 一人、しんみりとしているエリオットのことには気が付かず、三人の生徒は何やらギャーギャー言っていた。
 そんな異様な空間の中、金髪の男子生徒が口を開いた。

「……すげぇ、かっけぇ……」
「……は?」

 一体何が? と、疑問を抱いたが、それは直ぐに氷解する。

「何をされても、絶対生き残るという確かな自信っ!! そんなのかっこよすぎだろ!!」
「はぁ……?」

 突然きらきらとした目でこちらを見据え、エリオットの顔は若干引き攣った。
 その金髪の男子生徒に続くように、他の二名も声を上げた。

「確かに、その通りかも……」
「漢の中の漢!!」
「……えぇ……」

 一体何を言っているんだと、呆れ気味にため息をつく。
 このまま会話を続けていても面倒だと、三人の横を通り抜けようとしたその時だった。

「これはもうっを作るしかない!!」
「————は?」

 咄嗟に足を止める。

「それは名案ね!」
「一生ついて行きます!! エリオットの兄貴!!」
「いやいや、ちょっと待て!!」

 一体こいつらは何を口走っているんだ。
 ファンクラブ? 兄貴? 一生ついて行くとか、ハッキリ言って迷惑でしかない。

「そんなの、迷惑だ。やめてくれ」
「しかし、兄貴は生命の恩人なんです!!」
「せめて、何か……」

 生命の恩人? やった側がどうして生命の危機に晒されるようなことがあったんだ?
 疑問を抱いたが、自分には関係ないと頭を振る。

「こうなったら舎弟として、一生お供致します!!」
「それも面倒臭いからやめてくれ!!」

 暫く一悶着あったが、結果携帯電話のアドレスと電話番号を交換し、必要以上に付きまとわないということで決着がついた。
 正直、アドレスも電話番号も交換したくなかったが、平穏な日々を脅かす脅威を取り払うためには必要な犠牲だったんだ。
 ちなみに金髪の男子生徒は、アベル。緑色の髪の女子生徒は、ジナ。青色の髪の男子生徒はラトレルと言うらしい。
 まぁ、覚えていられるかは何とも言えないが……。
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