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しおりを挟むこれ以上問題事に巻き込まれたくない。だから不問に、と発した言葉だったがディランとアランは目を点にした。
「……お前、頭がおかしいのか? 生命を失いかけたんだぞ」
「いや、アラン。もしかしたら生死観が狂っているんじゃないか?」
生徒会長も風紀委員長も好き勝手に言うなぁ。……まぁ、確かに一度死んでるから他の人に比べると生死観は狂ってるかもしれないけどさ。
乾いた笑い声がふと、口からこぼれ落ちた。
「いや、俺は単純に恨まれるのが嫌なんですよ」
「だが、身の安全は——」
「保証されたとしても、それは学園内だけ。外に出れば袋叩きに遭う可能性だって無きにしも非ずだろ」
エリオットの言葉に、ディランは口をつぐむ。
「それに、退学になったら間違いなく俺に矛先が向くのは容易に想像出来るしな」
「……まぁ、その通りかもな」
アランはエリオットの言葉を肯定するかのように頷いた。
「アランっ、だが——」
「ディラン、今回の一件はこいつに委ねることになっている」
「そうだが……しかし」
「正義感が強いお前は納得いかないだろうが、もしこの決定を覆したとしたら……リルがお前に何か仕掛けるかもしれねえぞ」
ボソリと耳元へ囁くその言葉はエリオットには届かなかったが、たちまちディランの顔が青くなる。その後視線をグルグルさせると、咳払いをした。
……どうしたんだ?
一連の流れを呆れ気味にエリオットは眺めていた。
「で、本当に不問にしていいんだな」
アランの最後の確認の言葉に、エリオットは頷いた。
「……分かった。なら、そのように手配をしておく」
そう言うと、アランは風紀委員室を後にした。
……なんか、何処か疲れていそうな表情だったな。
エリオットはアランを見送ると、ディランに向かって気になっていたことを訊く。
「というか、何故俺にこの一件を委ねたんだ?」
どう考えてもこの一件は生徒会や風紀委員。それか教師が表に出てくる案件だと思うのだが。
エリオットの言葉に
「……ま、まぁ、ちょっとした理由があってな」
はははと、歯切れの悪い返事をした。
一体何があったんだと首を捻ったが、自分に関係ないことなら別にいいかと結論付けたのであった。
ディランに別れの挨拶をし、風紀委員室から出て数分後、突如目の前に見知らぬ三人が現れた。進行方向を封鎖するかのように突っ立って、尚且つ此方を凝視していた。
……誰だ、何か用でもあるのか? 面倒くさそうだし、Uターンするか。
「この度は大変申し訳ございませんでした!!」
「…………は?」
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