42 / 75
41
しおりを挟む◇◇◇
「………………い」
声が聞こえる。暗闇の中誰かが何度も自分に声を掛け、体はゆらゆらと揺れる。
誰か……いるのか。
少しずつ意識が覚醒していき、ゆっくりと双眸を開けると————
「すまない、ちょっといいか?」
目の前には、風紀委員長であるディランが此方を窺っていた。
陽の光で銀髪の髪がダイヤモンドのように、きらきらと輝いていた。
「い、委員長……何か用ですか」
突然の出来事に、眠気が飛んでいく。
一体何しにこんな場所に来たのだろうと首を傾げていると、ディランはただエリオットのことを凝視していた。
「……いや、確かに用はあるのだが。流石にこんな場所で寝ていたら風邪をひくぞ。昨夜、あまり眠れなかったのか?」
「ま……まぁ」
寮に着いた時には日付が変わっていたからな。
だからなのか、ポカポカとする太陽の暖かさに次第に眠気が襲い、この体育館裏の木陰で眠ってしまったのだ。
人気がない場所だったのでここで昼寝をしていたが、まさかこの人はずっと俺のことを探し歩いていたりとかしていたのか? ……なんか、それは申し訳がない気持ちになる。
「それより、用とは?」
「それは——」
ディランは口を開け言葉を発したが、突如ハッとし、そのまま口をつぐんでしまう。
…………? どうしたんだ、なんか固まってるが……。
「…………とにかく、一緒に来てくれないか?」
「はぁ……」
ディランの表情と言動を読み取ると、此処では話しにくいことのようだ。
そわそわと落ち着きがなく、視線を右往左往している様子は何処か面白さが存在していた。
相変わらず風紀委員とも関わりたくない気持ちはあるが、要件があるのなら致し方ない。
早々に終わらせようと立ち上がり、ディランの後を着いていく。
セドリックのことか、それともアリスティアが何かしら問題を起こしたのか……と、呑気に考えごとをしていたが、先に風紀委員室に到着していた人物を見てエリオットは絶句する。
「じゃあ、そちらに腰をかけてくれ」
ディランは座る……足を組みエリオットのことをじっと見つめている生徒会長であるアランの横に。
……一体どうして生徒会長が風紀委員室にいるんだよ。俺、知らず知らずに何か仕出かしたか? それとも、昨夜の……。
たくさんのもしかしたらが頭の中に溢れ、どうにかしてこの場を切り抜けなくてはと、二人の目の前に腰を下ろした。
そうだ、もし昨夜のことを訊かれたとしても、何も知りませんで通せばいいのでは? シラを切り通せば、あちら側が勝手に諦めてくれるだろう。うん、そうしよう。
エリオットが一人黙考をしている最中、ディランではなくアランが口を開けた。
「呼び出してすまないな。今回呼び出したのは、あの事件についてなのだが————」
「俺は何も知りません!!」
31
お気に入りに追加
730
あなたにおすすめの小説
ヒロインどこですか?
おるか
BL
妹のためにポスターを買いに行く途中、車に轢かれて死亡した俺。
妹がプレイしていた乙女ゲーム《サークレット オブ ラブ〜変わらない愛の証〜》通称《サクラ》の世界に転生したけど、攻略キャラじゃないみたいだし、前世の記憶持ってても妹がハマってただけで俺ゲームプレイしたことないしよくわからん!
だけどヒロインちゃんが超絶可愛いらしいし、魔法とかあるみたいだから頑張ってみようかな。
…そう思ってたんだけど
「キョウは僕の大切な人です」
「キョウスケは俺とずっといるんだろ?」
「キョウスケは俺のもんだ」
「キョウセンパイは渡しませんっ!」
「キョウスケくんは可愛いなぁ」
「キョウ、俺以外と話すな」
…あれ、攻略キャラの様子がおかしいぞ?
…あれ、乙女ゲーム史上もっとも性格が良くて超絶美少女と噂のヒロインが見つからないぞ?
…あれ、乙女ゲームってこんな感じだっけ…??
【中世をモチーフにした乙女ゲーム転生系BL小説】
※ざまあ要素もあり。
※基本的になんでもあり。
※作者これが初作品になります。温かい目で見守っていて貰えるとありがたいです!
※厳しいアドバイス・感想お待ちしております。
隠し攻略対象者に転生したので恋愛相談に乗ってみた。~『愛の女神』なんて言う不本意な称号を付けないでください‼~
黒雨
BL
罰ゲームでやっていた乙女ゲーム『君と出会えた奇跡に感謝を』の隠し攻略対象者に転生してしまった⁉
攻略対象者ではなくモブとして平凡平穏に生きたい...でも、無理そうなんでサポートキャラとして生きていきたいと思います!
………ちょっ、なんでヒロインや攻略対象、モブの恋のサポートをしたら『愛の女神』なんて言う不本意な称号を付けるんですか⁈
これは、暇つぶしをかねてヒロインや攻略対象の恋愛相談に乗っていたら『愛の女神』などと不本意な称号を付けられた主人公の話です。
◆注意◆
本作品はムーンライトノベルズさん、エブリスタさんにも投稿しております。同一の作者なのでご了承ください。アルファポリスさんが先行投稿です。
少し題名をわかりやすいように変更しました。無駄に長くてすいませんね(笑)
それから、これは処女作です。つたない文章で申し訳ないですが、ゆっくり投稿していこうと思います。間違いや感想、アドバイスなどお待ちしております。ではではお楽しみくださいませ。
乙女ゲーの隠しキャラに転生したからメインストーリーとは関係なく平和に過ごそうと思う
ゆん
BL
乙女ゲーム「あなただけの光になる」は剣と魔法のファンタジー世界で舞台は貴族たちが主に通う魔法学園
魔法で男でも妊娠できるようになるので同性婚も一般的
生まれ持った属性の魔法しか使えない
その中でも光、闇属性は珍しい世界__
そんなところに車に轢かれて今流行りの異世界転生しちゃったごく普通の男子高校生、佐倉真央。
そしてその転生先はすべてのエンドを回収しないと出てこず、攻略も激ムズな隠しキャラ、サフィラス・ローウェルだった!!
サフィラスは間違った攻略をしてしまうと死亡エンドや闇堕ちエンドなど最悪なシナリオも多いという情報があるがサフィラスが攻略対象だとわかるまではただのモブだからメインストーリーとは関係なく平和に生きていこうと思う。
__________________
誰と結ばれるかはまだ未定ですが、主人公受けは固定です!
初投稿で拙い文章ですが読んでもらえると嬉しいです。
誤字脱字など多いと思いますがコメントで教えて下さると大変助かります…!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。
なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。
転生したら乙女ゲームの世界で攻略キャラを虜にしちゃいました?!
まかろに(仮)
BL
事故で死んで転生した事を思い出したらここは乙女ゲームの世界で、しかも自分は攻略キャラの暗い過去の原因のモブの男!?
まぁ原因を作らなきゃ大丈夫やろと思って普通に暮らそうとするが…?
※r18は"今のところ"ありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる