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しおりを挟む「……エル、昨日何処かに出掛けてた?」
「…………え」
前触れもなく発せられた言葉に、心臓が大きく飛び跳ねた。
生徒会長にばったり出くわし、アリスティアが乗り込んできた夜の次の日、通学路で突然フレディがぽつりと言葉を発した。
どうしてそんなことを……突然言うんだ。
「え、普通にいつも通り部屋にいた……けど」
口からこぼれ落ちたのは、嘘という声と言葉だった。
嘘はつきたくなかったが正直に言ってしまえばボロが出てしまい、あの二人にバレてしまう。
フレディはエリオットの言葉を聞くと少し沈黙し————それからいつも通りの微笑を見せた。
「そっか、それならいいんだ。早く学園に向かおう」
…………ごめんな、フレ。
嘘をついてしまったことを心の中で懺悔すると、フレディの後を追いかけた。
◇◇◇
————それは、懐かしい光景だった。
「……大変そうだな」
「……ディオル」
パキパキと木が燃える音が静かに鳴らしている深夜だというのに、焚き火でキラキラと輝く銀髪の男、ディオル。
ディオルは隣へ腰を下ろすと飲み物が入った器を差し出し、それを受け取った。
「天使様とか崇められ、魔神王を強制的に倒す命令を受けて」
「……もう、慣れたよ」
半ばヤケになりそうだが、これはもう仕方がないことなのだ。
「けどな、黙示録は俺だけの力じゃないのに……俺だけが崇められるのはいい気分がしないな」
「……それは————」
「別にディオルのことを責めている訳じゃないからな。エヴァンたちにだって……。もう、仕方がないことだから」
もし役割が逆であったら、俺じゃなくあいつが天使として崇めれていたのかもしれない。
日陰と陽、何方がいいのかは分からないが……生命を落とす危険性があるのなら俺はあいつを隠す陽となる。
「…………シグルト・イデア・ナディエージダ」
「ん? どうしたんだディオル。突然改まって」
突然ディオルはひざまつくと、続けて言葉を発した。
「例え生命を失うとしても貴殿を守ると誓おう。風を司るディアンヴェーダ家を始め、他の守人たちも——」
「ディオル」
圧を感じた声色に、ディオルは顔を上げる。
「……俺は、お前ら守人も他の仲間たちを犠牲にしてまで生き延びたくない」
「しかしっ」
「別に、いいんだ。人はいつか死を迎える。それが早まったくらいどうってことはない。ただ……一つ、悔いが残るとすれば————」
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