だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

文字の大きさ
上 下
41 / 76

40

しおりを挟む


「……エル、昨日何処かに出掛けてた?」
「…………え」

 前触れもなく発せられた言葉に、心臓が大きく飛び跳ねた。
 生徒会長にばったり出くわし、アリスティアが乗り込んできた夜の次の日、通学路で突然フレディがぽつりと言葉を発した。
 どうしてそんなことを……突然言うんだ。

「え、普通にいつも通り部屋にいた……けど」

 口からこぼれ落ちたのは、嘘という声と言葉だった。
 嘘はつきたくなかったが正直に言ってしまえばボロが出てしまい、あの二人にバレてしまう。
 フレディはエリオットの言葉を聞くと少し沈黙し————それからいつも通りの微笑を見せた。

「そっか、それならいいんだ。早く学園に向かおう」

 …………ごめんな、フレ。
 嘘をついてしまったことを心の中で懺悔すると、フレディの後を追いかけた。

◇◇◇

 ————それは、懐かしい光景だった。

「……大変そうだな」
「……ディオル」

 パキパキと木が燃える音が静かに鳴らしている深夜だというのに、焚き火でキラキラと輝く銀髪の男、ディオル。
 ディオルは隣へ腰を下ろすと飲み物が入った器を差し出し、それを受け取った。

「天使様とか崇められ、魔神王を強制的に倒す命令を受けて」
「……もう、慣れたよ」

 半ばヤケになりそうだが、これはもう仕方がないことなのだ。

「けどな、黙示録はのに……俺だけが崇められるのはいい気分がしないな」
「……それは————」
「別にディオルのことを責めている訳じゃないからな。エヴァンたちにだって……。もう、仕方がないことだから」

 もし役割が逆であったら、俺じゃなくあいつが天使として崇めれていたのかもしれない。
 日陰と陽、何方がいいのかは分からないが……生命を落とす危険性があるのなら俺はあいつを隠す陽となる。

「…………シグルト・イデア・ナディエージダ」
「ん? どうしたんだディオル。突然改まって」

 突然ディオルはひざまつくと、続けて言葉を発した。

「例え生命を失うとしても貴殿を守ると誓おう。 ストリボーグを司るディアンヴェーダ家を始め、他の守人たちも——」
「ディオル」

 圧を感じた声色に、ディオルは顔を上げる。

「……俺は、お前ら守人も他の仲間たちを犠牲にしてまで生き延びたくない」
「しかしっ」
「別に、いいんだ。人はいつか死を迎える。それが早まったくらいどうってことはない。ただ……一つ、悔いが残るとすれば————」


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

処理中です...