だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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 エスカレーターを上がり、二階の洋服店へ二人は辿り着いた。
 売りに出されている衣服はどれも夏服で、二人はそれぞれ服を手に取る。
 売りに出されている衣服は、薄手の生地で通気性も良さそうだ。
 そういえば、夏の時期は黒色の衣服を着るとあまりに暑くてどうしようもなかったが、逆に暑さが少しでも緩和される色なんてあるのだろうか。
 無難に白色か、それとも涼しげな水色だろうか。
 色について考えていると、フレディが声を掛けてきた。

「ねえ、エル。この服どうかな?」
「え? どれど……」

 フレディが見せてきた衣服を見て、エリオットは言葉を失った。
 フレディが見せてきた衣服は普通のシャツ。
 だがそこに描かれている文字によって、普通のシャツではなかった。

「どうかな?」
「え、いやぁ……その」

 シャツにはこう文字が描かれていた。
 お豆腐メンタルと。
 ……これは、ツッコんだ方がいいのか?
 それともスルーすべきか?
 どっち……一体何方が答えなんだ!!

「……エル?」
「え、その。まぁ、フレが気に入ったのならいいんじゃない?」

 一先ずスルーしておこう。

「本当!? じゃあ、こっちはどうかな」

 続いて見せてきた服も、これもまた普通のシャツではなかった。
 激おこプンプン丸冷奴と、またもやよく分からない代物に、手で顔を覆ってしまう。
 目の前に机が存在していたら、思わずぶっ叩いていただろう。
 ……とりあえず分かったことは、フレは豆腐が好きだということだよな。
 うんうん、豆腐好きとはヘルシーでいいな。
 ……じゃなくてっ!!
 どうする。ここは本格的にツッコミを入れた方がいいのかっ?
 いや、そもそもフレがボケていない可能性もある。
 純粋にあの服が良いと感じた可能性があるのであれば、ここはスルーすべきだ。

「……フレは、そういう服が好きなのか?」

 とりあえず、純粋に好きなのか訊いておこう。

「うん。僕、昔っからこういう服をよく着てたからね。何だか懐かしくて」
「へー、そうなのか。自分で買ってたのか?」
「ううん。兄さんたちがよく着てて、それで僕も自然と着るようになった感じだよ?」
「ソ、ソウナンダ」

 フレのファッションセンスがイマイチなのは、その兄たちのせいってことだな。
 結果として、フレは純粋にあの服が好きだということだ。
 それなら突っ込むことは止めておこう。傷付けてしまうかもしれないからな。

「んー、どうせならこれを兄さんたちにプレゼントしようかな」
「いいんじゃないか? きっと喜ぶとおもうよ」

 弟からの贈り物を喜ばない兄はいないだろう。

「だよね! じゃあ買ってくるねっ」
「ああ」

 ……何だか、怖いくらいの笑顔だったな。
 いつもの笑みとは違い背筋が凍りそうだったが、それは気の所為だと頭を軽く振る。
 フレディが会計を終えると、二人は服屋を後にしたが特に何処に行くかは決めておらず、二人は何の目的もなくふらふらあちらこちらと店を覗いていく。
 そんな最中、フレディが口を開いた。

「そろそろ昼時だし、ご飯でも食べる?」
「あ……確かにそうだな」

 お腹を触る。
 朝ご飯を食べて来たのだが、何だか空いている気もする。

「じゃあ、フードコートに行こうか」

 そうして二人は何を食べようかと話しながら向かったのだが、まさか向かった先に……。

「あっ、フレディ様にエリオット様っ!?」
「おー、お二人さん。もしかしてデートなん?」

 あの、関わりたくない二人がいたなんて……思いもしていなかった。
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