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「僕、それなりと有名人だと思っていたのに君たち全然気が付いてくれないんだもん。なんだか、悲しいなぁ」

 一年の間では剣豪だと言われるほどの実力があるエドワードを抑えて一位になったというのに……これはエドワードの影に埋もれている感じなのかな。

「いや、でもお前は……」
「そうだよ。君たちが言う通り、ヴァーミリオン家では落ちこぼれ。でも、それは兄たちが強過ぎるだけ。家の外に出さえすれば、僕だって大抵の人を薙ぎ倒すくらいの実力はあると思うよ」

 現に剣術特待一位の座についているのだ。
 そこら辺にいる平凡な剣士ならば容易く地に足を付けさせるほどの実力はあるのでは、と自負をしているのだが……。
 まぁ、流石に生徒会長に勝つことは難しいだろうけど。
 あの努力家で鍛錬が趣味と捉えられる生徒会長に喧嘩を売ろうとは思わないし、喧嘩を売った次の瞬間には打ちのめされているだろう。
 そもそも僕は、生徒会長に何らかの気持ちは抱いていないからどうでもいいけれど。
 ……エルに手を出したら話は別だけどね。

「……それより」

 さっさとこの目障りな三人を始末すべきだと、剣を向ける。

「そろそろお別れの時間だね」

 にこりと笑うフレディの言葉に、三人は顔を真っ青にし身体を震わせると

「いやっ、そ、その……お、俺たちの負けだから」
「そうよっ。ちゃんと……自首するから……だからっ」

 今更ながら罪を認めだした。
 けれど、それはもう遅かった。


「今更認めてるの? もう駄目、手遅れだよ。最初から認めていたらここまでしなかったのになぁ」

 ため息を吐く。
 罪を最初から認める人間はそもそもこんなことをしない。
 何かしら事件を起こす者は、自分の身に脅威が迫らない限り謝罪なんてしないのだ。
 いじめだって、被疑者が初めて被害者の立場に立った時にその痛みを知る。
 ……けれど所詮、こういう人間は自分が可愛くてしょうがないのだろうけど。
 ゆっくり足を進め、距離を詰めていく。
 ジリジリと恐怖の足音、死が三人に近付いて行く。
 恐怖に支配され蹲っている三人の前に立ち塞がると、フレディは何の迷いもなく剣を上げる。

「それじゃあ、バイバイ」

 振り翳す……その瞬間だった。
 ズボンのポケットから鳴り響くメロディー。
 フレディはその音色を聴きハッと携帯電話を取り出すと開く。
 間違いない。この音は……。
 彼専用の着信メロディーが証明するように、差出人はエリオットからであった。
 メールを開くと、突然ごめんという一言から内容が綴られていた。
 その次に委員会の仕事を邪魔してしまったらごめんと。
 ……本当、エルは優しいなぁ。
 思わず微笑を浮かべてしまいそうになる。
 スクロールしていくと、思ってもいなかったことが目に飛び込んできた。
 それは明日、僕と一緒に買い物に行きたいと。
 強制ではない、予定があるのならそちらを優先してと書いてあるが、そんなのもし予定があったとしてもエルを最優先する。
 にしても……。
 どうしよう、嬉しい。エルからデート……じゃなくて、買い物に誘われるなんて。
 先程まで支配していた黒い感情が浄化され、白い光に包まれる。
 フレディは剣を下ろすと、そのままベルトに通した。
 その動作を、三人は唖然としていた。

「……君たち、エルに感謝しなよ」
「……え?」
「エルが止めてくれたから、だから君たちを殺すことはめる。あ、でも」

 フレディは一拍おくと、獰猛どうもうな笑みを見せた。

「もしこのことを他言すれば……今度こそ君たちの命はないからね」

 そう言い残すと、フレディは軽い足取りでこの場を後にした。
 あぁ、どうしよう嬉しい。本当に嬉しい。
 フレディは携帯電話に映し出されている画面を見ると、頬が緩んでしまう。
 返事はもちろんオーケーである。
 ぽちぽちと文字を打つと、メールを返信する。
 ふふ、明日はエルとお出掛けかぁ。どんな服装で行こうかなぁ。
 まるでデートを楽しみにしている彼女かのように、フレディは明日どうしようかと悩んでいたのであった。
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