だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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 刹那、フレディは間合いを詰めた。
 金髪の男子生徒の首元に目掛けて剣を振り下ろす。が、それは緑色の髪の女子生徒が押し倒したことによって、剣は空を斬る。

「わぁー、良い反応」

 くるりと一回転すると、また再度剣を振る。
 それを避けようとした女子生徒の足が縺れ、足に擦過傷を作り出す。
 その女子生徒を庇おうと青色の髪の男子生徒は懐から短剣を取り出し、漆黒の剣身を受け止めた。
 ……こんなもんか。
 思わずため息が出てしまいそうになる。
 フレディは目を細めると、柄に力を込め短剣を弾き飛ばす。
 金属音と共に、短剣はもう手の届かない場所に落ちてしまう。
 流石に分が悪いと感じたのか、三人とも口から悲鳴をこぼしながら走り出した。
 その様子を見てつい鼻で笑ってしまうが、フレディは後を追う。
 まるで遊び玉をばら撒くかのように剣さばきを三人に浴びせ、どんどん誘導するように人気がない場所へ追い詰めていく。
 髪を、腕を、頬を……と、次々に創傷そうしょうを与えながらじわじわと恐怖を身体に染み込ませ、痛みと共にゆっくりと死へ向かわせる。
 また腕に創傷が生まれる。
 傷口から溢れ出た血液はきらきらと夕日に照らされ、まるで花弁かのように地に落ちる。

「どういうことだよっ! こいつ、あのヴァーミリオン家の落ちこぼれなんだろっ!? 本当にそうなのか!?」
「確かにそうよ。だって、長男はアルディ・ヴァーミリオンで、次男はジャック・ヴァーミリオン。だから、彼が必然的に三男なのっ!」

 その名前を口にするなっ!!
 フレディは青色の髪の男子生徒の脚に目掛けて、剣を突き出す。
 ズブンッと剣身が脚へ突き刺さると、それを勢いよく引き抜く。
 口から苦痛が吐き出されるのと同時に倒れ、剣身に付いた血液を振り払った。

「さて、そろそろ準備体操は終わりにしようか」

 フレディは、はしゃいでいる子供の様な笑みを浮かべた。
 その言葉と表情を見た三人の顔はたちまち青くなる。
 現在地は森。それもかなり深い場所まで足を運んでいた。
 このまま先に進んだとしても崖と何十メートルもある堀だけしかない。
 逃げ道が存在しない現実を、三人は叩きつけられた

「お、落ちこぼれのくせにっ! 一体何なんだよ!! お前はっ!!」

 その時、地に倒れていた青色の髪の男子生徒がハッと顔を上げた。
 そして、震える口から言葉を吐く。

「……待て、よ。確か……今年の剣術特待第一位の奴っ、て……」

 その言葉を聞き、他の二人も驚倒する。
 気が付いたのだ、彼が…………

「ふふっ、気が付いた? そうだよ。僕は、エドワードを抑えて一位になったんだよ?」

 一年次、剣術特待第一位の人物だということに……。
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