だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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 新入生歓迎会終了後。エリオットとフレディは帰路を歩いていた。

「……に、しても。今日は色々あったな」
「そうだね。エリオットが落ちちゃうし、アリスティアはとんでもないことをしでかしていたしね」

 本当その通りだ。
 特にアリスティアは、これから様々なことに巻き込まれていくだろう。
 特に親衛隊関連に。
 まあ、どうやらドMみたいだし、何されても「快感ですっ!」とか言いそうだな。
 俺とフレに被害が及ばなければ、いくらでもアリスティアにちょっかいを出してくれ。
 だが、もし自分とフレディがアリスティアと関わりがあるからということで巻き込まれる可能性も無きにしも非ず。
 もし本当にその可能性が浮上したら、全力で逃げることしか対策はないだろう。
 親衛隊関連の事件には生徒会、……会長だけではなく風紀委員とも関わりが生まれてしまう。
 これ以上関わりを増やすのは好ましくない。
 考えに耽っていると、フレディが寮とは違う道に進もうとしていたことに気が付く。

「あれ? フレ、寮はこっちだけど?」
「ん? うん、そうだね」
「……何か、用事あるのか?」

 エリオットの問いかけに、一瞬表情が消えたがフレディはニコッと笑った。

「ちょっと用事があってね。大丈夫だよ、害虫駆除してくるだけだから」
「害虫駆除? ……ああっ! もしかして委員会の仕事か?」

 ……となると、フレが所属している委員会は緑化委員会か。
 エリオットの言葉に、フレディはフフっと笑うだけである。
 エリオットはそんなフレディの笑顔を肯定ととり、手を振った。

「それなら頑張れよ。じゃあな!」
「うん、バイバイ」

 エリオットはフレディと別れると寮内へ入り、エレベーターへ乗り込む。
 自室がある階は普通の生徒は上がれないため、ズボンポケットから黒いカードキーを取り出し、翳しボタンを押す。
 そういえば以前の自分は、エレベーターのみで使えるカードキーをフレディは持っていると思っていたが委員会に入っているんだったよな。
 なら、同じように特定の階に上がることが出来るカードキーを持っているということか。
 カードキーを見る。
 エリオットは委員会には入ってはいないが、一年の中で学力一位という特待であるため所持をしている。
 委員会に入っていないのは……免除されているってことでいいんだよな。
 目的の階に着いた音が鳴ると降り、自身の部屋の前まで歩き、黒いカードキーを通し部屋へ入る。

「うーあっちいなぁ」

 玄関で靴を脱ぎながらカツラと眼鏡を取る。
 パタパタとカツラで仰ぎながら部屋に入ると、手に持っているカツラと丸眼鏡を机の上に置き、スルスルとネクタイを取る。
 ネクタイを取ると、上着を脱ぎ捨て中のワイシャツのボタンを外していく。

「……汗の臭いとか、するかな?」

 クンクンと、自らの体の臭いを嗅ぐが自分は犬ではないし、それほど酷くはないのか男臭さは感じられなかった。
 だから大丈夫だろうとは思っていたが、明日は土曜日だ。
 洗濯でもしようと制服を脱ぐと洗濯機に投げ入れ、洗剤と柔軟剤をそれぞれ入れると稼働させる。
 汗を流そうと風呂場へ行くが、今から湯を入れるとなれば二十分程度足止めを食らってしまう。
 が、浴槽には汚れがないので洗わなくては大丈夫そうだ。
 なら、ここは魔法で風呂を沸かそう。
 エリオットは浴槽に向かって手を伸ばす。
 流石にこの浴槽に水を溜めるとなれば、少なからず詠唱するしかないだろう。
 コホンっと咳払いすると、エリオットは言葉を紡ぎだす。

「水よ。我の手に集い、その力を解き放て……ヴェローチェヴァッサー!」

 浴槽に一瞬にして水を溜めると、次はっ! と、炎属性の魔法を展開させる。
 浴槽の水はブクブクと沸騰し、あっという間に湧き上がった。
 昔はドラム缶に同じことをしていたが、現代でも役に立つものなんだなと、懐かしさのあまりか、つい微笑を浮かべてしまう。
 下着を脱ぐと風呂場に足を踏み入れ、体と髪を洗う。
 それから浴槽に体を沈めると、思わず極楽極楽と言葉がこぼれる。
 暫しの間湯に浸かりながら無心でボーッとする。
 そういえば昔は温泉とかに入ったが、近所にあったりしないだろうか。
 旅先で温泉が湧き上がっていると、よく皆と入ったものだが……こう思い出してしまうと懐かしさと共にどことなく寂しさも感じてしまう。
 …………そういえば、俺を突き落とした奴らって捕まったりするのだろうか。
 不意に、今日の出来事が蘇る。
 エリオットのことを風属性の魔法で突き落とし、その後逃走した生徒たち。
 普通に考えて殺人未遂だし、捕まるとは思うのだが……俺にとっては別にどうでもいいしなぁ。
 あれくらいなら普通に対処することは可能であったし、逆にフレが突き落とされなくて良かった。
 万が一フレが突き落とされたら、怒りのあまりこの学園を破壊しかねない。
 ……フレは、俺のことを突き落とした生徒の顔を見たりしたのかな。
 エリオット自身は背を向けていたので顔を見ることは不可能だったが、気配的には三人いたはずだ。
 ……まぁ、もしフレが顔を見ていたとしても文句を言いに行くわけがないし、それより生徒会と風紀委員たちが対処する方が先だろう。
 湯に浸かりながら考えに耽っていたためか、少しのぼせてきた。
 風呂場を後にすると、タオルで濡れた髪を拭く。

「そうだっ。明日休みだし、どうせならフレと出掛けたりしたいな」

 思った時が吉日。
 腰にタオルを巻くと、エリオットは置いてあった携帯電話を手に取ると開き、メール作成画面を開く。
 文字を打ち込むと文章がおかしくないことを確認し、送信する。
 送信完了の画面をかくにんするとあ、携帯電話を閉じた。

「さて、メールも送ったし、着替えて髪でも乾かすか」

 エリオットは着替えを取りに行くため、脱衣場を後にした。
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