だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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 …………正気、か?
 アランは絶句した。
 先程の行動で親衛隊の憤りが爆発しそうであるというのに、火にガソリンをぶちまけただけではなく爆弾を投げ込むとは……。
 アリスティアはアランの心情を知る余地もなく、ぱあぁぁっと花を咲かせていた……が。
 ふふっこれで親衛隊の怒りが爆発するわ。
 そしたら親衛隊はわたくしを制裁イベントに連れていき、そこで風紀委員との接点も生まれ自動的にイベントへ必要な好感度も上がるはずわ。
 そんな僥倖ぎょうこうにめぐりあえるかもしれない。
 アリスティアは悪女がするようなにんまりと不敵な笑みを浮かべる。
 一連の流れを見ていたフレディは、コソッとエリオットに向かって言葉を吐く。

「……彼女、本格的に危ないと思うよ」
「……だな」

 フレディの言葉に、エリオットは頷いた。
 きっと、先程と同じように分かっててやっているんだろうなぁ。
 何故そんな自らに危険が迫るようなことをするのだろうか。
 エリオットは考える。
 なぜ、アリスティアがこのようなことをするのかと。
 そして、ピコンッと突如考えが浮かんだ。
 …………ま、まさかっ自ら危険な目に合うのが快感ですというタイプなのか!?
 口元に手を当て、目を大きく見開く。
 いや……まさか、そんなドMなわけ……ない……よ、な。
 だが、もしそういう趣向や性癖を持っていたとなれば、今までの行動の数々が合点がつく。
 自らをヒロインと言うのも、蔑みの視線を向けてほしいということなのだろう。
 そうか……そういうことなのか。
 エリオットは自らの解釈が間違いだということを知らずに、勝手に答えを導き出したのであった。

「会長。どうしますか?」
「…………どうもこうも、親衛隊のことを考えるとこの願いは叶えることはやめておいた方が賢明だと思うな」

 クライヴとアランは小声で話す。
 先程まで静まり返っていたというのに、アリスティアの言動によってガヤガヤと言葉が飛び交う。
 ちらりと生徒達の方へ一瞥する。
 大勢の中から伺える親衛隊隊長は近くにいる親衛隊のメンバーを抑え、壇上に上がることを防いでいた。

「…………やはりこの願いは破棄した方がいい」
「ですね。ではーー」

 アリスティアに願いごとの変更を申し入れようとした時ーー

「別にいいんじゃないか?」
「お、オスカーっ!?」

 壇上近くに突っ立っていた生徒会顧問のオスカーは、言葉を続けた。

「理事長から転校生のデュオは生徒会から選ぶ様に言われていたからな。まあ、丁度いいんじゃないか?」
「ちょっとまって、ボク達そんなの聞いてないよ?」
「あーすまない。忙しくてな、言うのを忘れていたんだ」
「そうなんっすか」

 いや、ちょっと待て。
このまま行くと……この願いごとは……。

「だからアラン。頑張れよ」
「…………は?」

 強制執行だ。
 有無を言うことも出来ずに、この願いごとは可決された。
 そのことにより、アリスティアはより一層笑みを見せ声を上げた。

「ありがとうございますっ! アラン様!」

 嘘だと言って欲しかった。
 夢だと思いたかった。
 だが、頬を抓ったとしても、痛みが残るだけで目を覚ますことが出来ない。
 だからこの悪夢は現実なのだと、痛みがそう伝えてくる。

「…………嘘、だろ」

 るんるんとアリスティアは壇上を降り、取り残されたアランは頭を抱えた。
 その様子に、ディランは同情の視線を送ったのであった。
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