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午後に両親も来て、また心配をかけてしまったようで、母さんに泣かれてしまった。診察で、もう記憶が戻ったことと今回は、高熱を出していないことを先生が伝えて、安心したところで帰っていった。
退院の準備をしながら考えた。
(心配かけたから、大和に記憶を失うことになった出来事と今回のことを伝えないと。でも…、大和の前で違う人とキスしているの見られた、しかも…。怖い。大和はどう思ったんだろう。大和がいたから、僕は記憶を失っても頑張れた。記憶喪失の時に大事にされていたけれど、それって幼馴染だから…だよね)
「悠馬ー、帰る準備終わったかー?」
「あっ、うん、終わったから大丈夫だよ」
帰り道はお互いに無言だった。僕は、どう切り出せばよいかずっと考えていた。考えている間に、マンションについてしまった。
今日もバイトだったけれど、オーナーにまた入院して、体調が万全じゃないので、と一週間休む連絡をした。
夕方、お互いに一息ついてソファに移動したところで、僕は覚悟を決めて切り出した。
「あの…さ、大和、今から時間ある?」
「ああ」
「僕…、記憶が戻ったって言ったじゃない。そのことで大和に話があって…」
話すのが怖い…。未遂だったけれど、でも…。
大和は、僕の肩を引き寄せて耳元で、「ゆっくりでいいから。どんな話でも俺は悠馬のそばにいるから」と優しく言ってくれた。大和の体温を感じて僕の震えは少しずつ落ち着いていった。
ぽつりぽつりとあの日の出来事を大和に話した。二度目の意識を失う時にいた人、バイト先の元仲間が原因だと。
記憶を失った日、僕は、あの人とあの人の友人とカラオケに行った。僕はあの人に懐いていて、バイトを辞めちゃったのが悲しかった。後日、遊びに誘われたけれど、嬉しくて少し風邪気味だったけどカラオケについていった。ある程度経った時、あの人の友人がトイレ、と席を立った。あの人は僕に近づいてきて、いきなりキスをしてきたんだ。僕は突然のことで、頭が真っ白になって固まった。あの人は、耳を舐めながら「俺、お前のこと前からいいな、と思ってたんだ」と言いながら、僕のズボンを下ろして性器を触ろうとしてきたんだ。それで怖くなって鞄を持ってその場から逃げ出した。その日は土砂降りで、その中傘もささずに走った。その途中で大和に「助けて」と電話した。後は大和も知っている通りに高熱で意識を失った。
二度目は、大和も見た通りにあの人にあって同じようなことが起こりそうになって記憶が戻った。
大和は、静かに僕の話を聞いてくれていた。どんな顔をしながら聞いているのか怖くて、大和の顔が見れなくて、俯きながら話した。全部、話し終わった時、僕は涙をこぼしていた。
僕がもっとしっかりしていたら、あの人のことを警戒していたら、という後悔の思いがこみ上げてくる。
「ごめんな、言いづらいこと言わせちゃって」
頭をふって否定した。大和のせいじゃないから、僕が悪いんだから、と言いたいのに、涙が出てきて嗚咽しかでない。
大和は僕を抱き締めてきて背中をあやすようにポンポンとしてきた。
涙を止めたいのに、そんなに優しくされたら、涙が止まらなくなる。僕って、こんなに弱かったのかな。
しばらくそのままでいたけれど、僕の涙も落ち着いてきた。そうしたら、抱き締められている今の状態が恥ずかしくなった。だから、大和から離れようとしたけれど、大和の抱き締める力が強まった気がした。
「大和?もう僕大丈夫だから。離して?」
「ごめん、ごめんな」
なんで謝られるかわからなくて、抱き締められた状態で大和の顔を見上げた。大和の顔は、僕の方を見ておらずに、痛みに耐えているような顔をしていた。僕は、その顔を見て、大和は僕のことを軽蔑したんじゃないか?という思いが沸き上がって、顔からさぁっと血の気がなくなっていくのがわかった。
いうつもりはなかったのに、「大和、僕のこと軽蔑したよね。だから、僕の顔見たくないんだよね」と思っていたことをポツリとつぶやいてしまった。
大和ははじかれたように、抱き締めていた腕をといた。それが余計に僕を拒絶しているように感じて、また涙がでてきてしまった。
「ち、違うから。俺は悠馬のことを軽蔑したとかじゃないから。こっちを見てくれ」
「嫌だっ!だって、僕、大和に男とキスしているところを見られた。男とキスしている僕、気持ち悪いでしょ?だから…、もう僕のことほっといてっ!!」
「悠馬っ!!俺の話を聞けっ!」
「やだっ、やだやだ。」
大和から決定的な言葉を聞きたくなくて、耳に手をあててずっと「やだ、聞きたくない」と首をふった。
「悠馬っ、俺はお前を軽蔑することはない。……それに、軽蔑されるのは、俺の方かも知れない…」
耳にあてていた手を外された状態で、大和は、辛そうに言ってきた。大和の言葉を聞いて、僕はキョトンとしてしまった。
「なんで?僕が軽蔑されるならまだしも大和は何もしてないでしょ?」
「…はぁ」
大和はそっと僕を拘束していた手をはずして、ソファに深く座りなおした。僕はどういうことか知りたくて大和の方を見ているとチラッと大和がこちらを見てきた。
覚悟を決めたように、「こんな状態で言いたくなかったけれど…」と居住まいを正して僕の方を見た、僕は(どうしたんだろう?)とは思ったが、次の言葉で衝撃を受けた。
「俺、お前のことがずっと好きだった」
退院の準備をしながら考えた。
(心配かけたから、大和に記憶を失うことになった出来事と今回のことを伝えないと。でも…、大和の前で違う人とキスしているの見られた、しかも…。怖い。大和はどう思ったんだろう。大和がいたから、僕は記憶を失っても頑張れた。記憶喪失の時に大事にされていたけれど、それって幼馴染だから…だよね)
「悠馬ー、帰る準備終わったかー?」
「あっ、うん、終わったから大丈夫だよ」
帰り道はお互いに無言だった。僕は、どう切り出せばよいかずっと考えていた。考えている間に、マンションについてしまった。
今日もバイトだったけれど、オーナーにまた入院して、体調が万全じゃないので、と一週間休む連絡をした。
夕方、お互いに一息ついてソファに移動したところで、僕は覚悟を決めて切り出した。
「あの…さ、大和、今から時間ある?」
「ああ」
「僕…、記憶が戻ったって言ったじゃない。そのことで大和に話があって…」
話すのが怖い…。未遂だったけれど、でも…。
大和は、僕の肩を引き寄せて耳元で、「ゆっくりでいいから。どんな話でも俺は悠馬のそばにいるから」と優しく言ってくれた。大和の体温を感じて僕の震えは少しずつ落ち着いていった。
ぽつりぽつりとあの日の出来事を大和に話した。二度目の意識を失う時にいた人、バイト先の元仲間が原因だと。
記憶を失った日、僕は、あの人とあの人の友人とカラオケに行った。僕はあの人に懐いていて、バイトを辞めちゃったのが悲しかった。後日、遊びに誘われたけれど、嬉しくて少し風邪気味だったけどカラオケについていった。ある程度経った時、あの人の友人がトイレ、と席を立った。あの人は僕に近づいてきて、いきなりキスをしてきたんだ。僕は突然のことで、頭が真っ白になって固まった。あの人は、耳を舐めながら「俺、お前のこと前からいいな、と思ってたんだ」と言いながら、僕のズボンを下ろして性器を触ろうとしてきたんだ。それで怖くなって鞄を持ってその場から逃げ出した。その日は土砂降りで、その中傘もささずに走った。その途中で大和に「助けて」と電話した。後は大和も知っている通りに高熱で意識を失った。
二度目は、大和も見た通りにあの人にあって同じようなことが起こりそうになって記憶が戻った。
大和は、静かに僕の話を聞いてくれていた。どんな顔をしながら聞いているのか怖くて、大和の顔が見れなくて、俯きながら話した。全部、話し終わった時、僕は涙をこぼしていた。
僕がもっとしっかりしていたら、あの人のことを警戒していたら、という後悔の思いがこみ上げてくる。
「ごめんな、言いづらいこと言わせちゃって」
頭をふって否定した。大和のせいじゃないから、僕が悪いんだから、と言いたいのに、涙が出てきて嗚咽しかでない。
大和は僕を抱き締めてきて背中をあやすようにポンポンとしてきた。
涙を止めたいのに、そんなに優しくされたら、涙が止まらなくなる。僕って、こんなに弱かったのかな。
しばらくそのままでいたけれど、僕の涙も落ち着いてきた。そうしたら、抱き締められている今の状態が恥ずかしくなった。だから、大和から離れようとしたけれど、大和の抱き締める力が強まった気がした。
「大和?もう僕大丈夫だから。離して?」
「ごめん、ごめんな」
なんで謝られるかわからなくて、抱き締められた状態で大和の顔を見上げた。大和の顔は、僕の方を見ておらずに、痛みに耐えているような顔をしていた。僕は、その顔を見て、大和は僕のことを軽蔑したんじゃないか?という思いが沸き上がって、顔からさぁっと血の気がなくなっていくのがわかった。
いうつもりはなかったのに、「大和、僕のこと軽蔑したよね。だから、僕の顔見たくないんだよね」と思っていたことをポツリとつぶやいてしまった。
大和ははじかれたように、抱き締めていた腕をといた。それが余計に僕を拒絶しているように感じて、また涙がでてきてしまった。
「ち、違うから。俺は悠馬のことを軽蔑したとかじゃないから。こっちを見てくれ」
「嫌だっ!だって、僕、大和に男とキスしているところを見られた。男とキスしている僕、気持ち悪いでしょ?だから…、もう僕のことほっといてっ!!」
「悠馬っ!!俺の話を聞けっ!」
「やだっ、やだやだ。」
大和から決定的な言葉を聞きたくなくて、耳に手をあててずっと「やだ、聞きたくない」と首をふった。
「悠馬っ、俺はお前を軽蔑することはない。……それに、軽蔑されるのは、俺の方かも知れない…」
耳にあてていた手を外された状態で、大和は、辛そうに言ってきた。大和の言葉を聞いて、僕はキョトンとしてしまった。
「なんで?僕が軽蔑されるならまだしも大和は何もしてないでしょ?」
「…はぁ」
大和はそっと僕を拘束していた手をはずして、ソファに深く座りなおした。僕はどういうことか知りたくて大和の方を見ているとチラッと大和がこちらを見てきた。
覚悟を決めたように、「こんな状態で言いたくなかったけれど…」と居住まいを正して僕の方を見た、僕は(どうしたんだろう?)とは思ったが、次の言葉で衝撃を受けた。
「俺、お前のことがずっと好きだった」
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