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1 1匹オオカミ……?
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「キミ、いじめられてるよ」
目の前の男の子が私に告げる。
薄々感づいてはいたけれど――
「私からやるって言い出したことだし、頼ってくれてるだけで……」
いじめられてるわけじゃない。
そう自分に言い聞かせてきた。
「いいよね、鈍感で羨ましい。でもさすがに自覚した方がいいと思うよ」
そこまで鈍感ってわけでもないと思うんだけど。
「助けてあげようか」
「え……」
「ああ、でも、もちろんタダじゃないからね。もらうよ。キミの大事なもの」
眩しい光が私の視界を奪った。
すべて真っ白。
ゆっくり戻ってきた私の目に映り込んだのは――
真っ黒い翼。
男の子の背中から、大きな黒い翼が生えていた。
「立候補者は、誰もいないみたいね。しかたないけど、クラス代表はくじ引きで決めます」
中学2年の新学期。
3日くらい経ったある日のこと。
新しく担任になった佐々木先生が、紙に数字を書いていく。
若くてかわいい女の先生だ。
決めなくちゃならないクラス代表は男子1人、女子1人で、うちのクラスは、積極的にやりたがる子がいないみたい。
教卓でくじを作る佐々木先生の手元を、一番前の席から見守る。
そういえば、初日にやった席替えも、くじだった。
おかげで運よく、去年から仲良くしてる美緒ちゃんと隣の席になれたんだけど。
そうして選ばれたのは――
「男子は出席番号5番……大神良くんね。女子は1番。相田美緒さん」
「ええ……あたし……」
名前を呼ばれた美緒ちゃんが、困ったように佐々木先生の方を見る。
美緒ちゃんは、おとなしくて、優しくて、ロングヘア―が似合うとってもかわいい女の子だ。
いつも私に柔らかい笑顔を見せてくれるんだけど、そんな美緒ちゃんの顔が、こわばっていた。
「あ、あたし、クラス代表なんて……」
立候補がいないなら、しかたない。
しかたないんだけど……。
「相田さん、1年間、女子のクラス代表頼めるかしら?」
たぶん、佐々木先生も気づいてる。
本当は美緒ちゃんが嫌がっていること。
見ていられなくて、私は思わず尋ねた。
「美緒ちゃん、クラス代表……その、嫌……だよね?」
「う、うん……でも、どうしよう……」
私だって、クラス代表になりたいわけじゃない。
でも、絶対に嫌ってわけでもない。
少なくとも、美緒ちゃんよりは嫌がってないと思う。
だったら――
「私、かわろうか?」
「え、さくらちゃんが、クラス代表やってくれるってこと?」
「うん。私、そんな嫌ってわけでもないし。先生、かわってもいいですか?」
「先生はいいけど……いいの? 結城さん」
「はい。女子のクラス代表、やります」
先生が正面のホワイトボードに、私の名前……結城さくらの文字を書き込む。
「大神くんは? できそう?」
「……はい」
廊下側、後ろの方の席から返事が聞こえてきた。
大神くん。
はじめて同じクラスになった子で、話したことは一度もない。
でも、名前だけは知っていた。
すごくかっこいいし、去年の運動会も活躍してたし、人気者なんだよね。
佐々木先生がくじ引きを提案していなかったら、いずれ誰かがクラス代表に推薦していたかもしれない。
これからは同じクラス代表として、話すこともあるのかな。
大神くんは、なにを考えているのか、よくわからない表情をしていた。
嫌そうでもないし、かといって嬉しそうでもない。
嫌でも断れない、しかたないって思ってるのかも。
わからないけど、クールな印象だった。
放課後――
他の子もまだ何人か教室に残っている中、私と大神くんは、佐々木先生から説明を受けることになった。
「朝会や、体育館で並ぶときは、あなたたちが一番前に並んでね」
クラス代表以外の子は名簿順。
そういえば美緒ちゃんの出席番号は1番だから、すぐ近くにいられるのは嬉しいかも。
「移動教室の際には、この名簿を忘れずに持って行くこと。日誌は、とくに先生に伝えたいことがなければ細かく書かなくても大丈夫。学級会では進行を頼みたいけど……まあ、2人とも立候補したわけじゃないし、先生もフォローするから安心して」
どうやらそんなに難しいことはないみたい。
一番、不安なのは学級会の進行だけど、それも先生がフォローしてくれるみたいだし、大神くんもいる。
「それじゃあ、明日からよろしくね」
「はい」
大神くんと私の返事を確認して、佐々木先生が教室を出て行く。
「あの……大神くん。私、結城さくら。1年よろしくね」
「僕の名前……知ってたんだ?」
「大神良くんだよね?」
「うん。よろしく」
笑顔を向けられたわけじゃないけど、冷たいわけでもない。
口調がやわらかいからかな。
「日誌なんだけど。1週間ずつ交代で書く?」
そう提案する私に、大神くんが同意してくれる。
「そうしよう。じゃあ今週、あと3日しかないけど、先に僕がやろうか」
「ありがとう。その次の週が私ね。名簿は、気づいた方が持ってく……とか」
「うん、いいと思う」
「なにか問題があったら、そのときまた決め直せばいいよね」
「うん。それでいい」
「じゃあ……またね」
「うん」
とりあえず、いま決めておかなきゃならない最低限のことを決めておく。
話が弾むわけではないけど、ちゃんとした子でよかった……!
大神くんは自分の席に戻った後、すぐに教室を出て行った。
「ほ、本当にごめんね、さくらちゃん」
教室に残ってくれていた美緒ちゃんが両手を合わせて謝る。
「ううん、かわりにやるって言い出したのは私だし。並ぶとき、美緒ちゃんと近いのも嬉しいしね」
くじで決まったものだから、プレッシャーもいまのところそんなに感じていない。
「大丈夫だよ」
「ありがとう……でも……」
まだなにか不安なのかな。
さすがに心配しすぎだよって、笑おうとしたときだった。
「誰も立候補しなかったのに、いきなりかわるとか……ねぇ?」
女の子たちの話し声が聞こえてきた。
もしかして私に話しかけてるのかな。
振り返って確認してみる。
そこにいたのは、ウェーブした髪を指で遊ぶ立花由梨ちゃん。
由梨ちゃんも、中2ではじめて同じクラスになった。
教卓の近くにいる私たちからは、少し離れた一番後ろの席。
たしかに聞こえてきたけれど、由梨ちゃんは、こっちを見ていなかった。
由梨ちゃんの隣で綾ちゃんが答える。
「男子のクラス代表が大神くんだからでしょ。わかりやすすぎなんだけど」
私に聞こえるくらい大きな声で話していた由梨ちゃんと綾ちゃんが、ちらっとこっちをうかがった。
やっぱりこれ、私に言われてる?
「そういうんじゃないけど……美緒ちゃん、やりたくなさそうだったから」
「えー、さくらちゃん、やさしー」
「別に大したことじゃ……1人じゃないし。なにかあれば、大神くんにも協力してもらって……」
そう口にしたところで、ふと違和感に気づく。
由梨ちゃんも、綾ちゃんも笑ってない。
「大神くんにも協力してもらって……ねぇ」
わざとらしく由梨ちゃんが私の言葉を繰り返す。
由梨ちゃんと綾ちゃんは顔を見合わせた後、小さくため息を漏らした。
「もういい、行こう」
「うん」
私……やっちゃったかもしれない。
「さくらちゃん……。大丈夫?」
2人が教室を出て行った後、美緒ちゃんがそう心配してくれる。
「うん、大丈夫だよ。ちょっと言わなくていいこと言っちゃったみたいだけど……」
「大神くん、人気者だから……」
なんとなく、そうなんだろうなぁって思ってたけど……。
「たしかに、かっこいいもんね」
「私、同じ小学校だったんだけど、その頃からめちゃくちゃモテてたの。あんまりしゃべらないんだけど、そこがまたクールで、ちょっとミステリアスで……!」
「へぇ、そうなんだ……」
「でも、特別仲がいい子はいないみたい。いつも1人でいるんだよね」
そういうの、なんていうんだっけ。
「1匹オオカミ……?」
「そう、そんな感じ。仲良くなろうと思っても、必要以上に話してくれないから、みんなあまり近づけないの。誰も笑ったところを見たことないってウワサだよ」
「それなのに、人気なんだ……?」
「群れずに距離をおいてるところも魅力っていうか。運動神経も抜群でね。勉強も出来るらしいし、憧れてる子、多いんじゃないかな」
そんなすごい子がもう1人のクラス代表なら、安心……できるはずなんだけど。
「どうしよう。さくらちゃんが、クラスの女子にねたまれちゃったら……」
「だ、大丈夫だよ。別に由梨ちゃんたちが大神くんと仲良くするのをジャマするわけじゃないし。さっきだって、本当に最低限のことしか話してないしね」
「その最低限の会話すら、みんなできないんだよ……」
「そ、そっか……」
いくら人気者だからって、それはさすがに意識しすぎだと思うけど。
まあ、きっかけもないのに突然話しかけるのって難しいし、わからなくもない……かなぁ。
でも、タイミング的に大神くん目当てでクラス代表になったみたいなことになっちゃったのは、失敗だったかもしれない。
でも、あそこで言い出さなきゃ、美緒ちゃんにもう決定しちゃってたし。
「あ、美緒ちゃんは、よかった? 大神くんと一緒にクラス代表やりたかったとか……」
私が聞くと、美緒ちゃんはブンブンと首を横に振った。
「もともと代表とかそういうの苦手なのに、大神くんとだなんて余計、緊張しちゃうよ。それより、私のせいで、さくらちゃんが大変なことにならないか、そっちの方が気になるっていうか……」
「それは大丈夫。先生もフォローしてくれるみたいだし」
代表は私1人じゃない。
大神くんのことも、きっと大丈夫だよね。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか」
目の前の男の子が私に告げる。
薄々感づいてはいたけれど――
「私からやるって言い出したことだし、頼ってくれてるだけで……」
いじめられてるわけじゃない。
そう自分に言い聞かせてきた。
「いいよね、鈍感で羨ましい。でもさすがに自覚した方がいいと思うよ」
そこまで鈍感ってわけでもないと思うんだけど。
「助けてあげようか」
「え……」
「ああ、でも、もちろんタダじゃないからね。もらうよ。キミの大事なもの」
眩しい光が私の視界を奪った。
すべて真っ白。
ゆっくり戻ってきた私の目に映り込んだのは――
真っ黒い翼。
男の子の背中から、大きな黒い翼が生えていた。
「立候補者は、誰もいないみたいね。しかたないけど、クラス代表はくじ引きで決めます」
中学2年の新学期。
3日くらい経ったある日のこと。
新しく担任になった佐々木先生が、紙に数字を書いていく。
若くてかわいい女の先生だ。
決めなくちゃならないクラス代表は男子1人、女子1人で、うちのクラスは、積極的にやりたがる子がいないみたい。
教卓でくじを作る佐々木先生の手元を、一番前の席から見守る。
そういえば、初日にやった席替えも、くじだった。
おかげで運よく、去年から仲良くしてる美緒ちゃんと隣の席になれたんだけど。
そうして選ばれたのは――
「男子は出席番号5番……大神良くんね。女子は1番。相田美緒さん」
「ええ……あたし……」
名前を呼ばれた美緒ちゃんが、困ったように佐々木先生の方を見る。
美緒ちゃんは、おとなしくて、優しくて、ロングヘア―が似合うとってもかわいい女の子だ。
いつも私に柔らかい笑顔を見せてくれるんだけど、そんな美緒ちゃんの顔が、こわばっていた。
「あ、あたし、クラス代表なんて……」
立候補がいないなら、しかたない。
しかたないんだけど……。
「相田さん、1年間、女子のクラス代表頼めるかしら?」
たぶん、佐々木先生も気づいてる。
本当は美緒ちゃんが嫌がっていること。
見ていられなくて、私は思わず尋ねた。
「美緒ちゃん、クラス代表……その、嫌……だよね?」
「う、うん……でも、どうしよう……」
私だって、クラス代表になりたいわけじゃない。
でも、絶対に嫌ってわけでもない。
少なくとも、美緒ちゃんよりは嫌がってないと思う。
だったら――
「私、かわろうか?」
「え、さくらちゃんが、クラス代表やってくれるってこと?」
「うん。私、そんな嫌ってわけでもないし。先生、かわってもいいですか?」
「先生はいいけど……いいの? 結城さん」
「はい。女子のクラス代表、やります」
先生が正面のホワイトボードに、私の名前……結城さくらの文字を書き込む。
「大神くんは? できそう?」
「……はい」
廊下側、後ろの方の席から返事が聞こえてきた。
大神くん。
はじめて同じクラスになった子で、話したことは一度もない。
でも、名前だけは知っていた。
すごくかっこいいし、去年の運動会も活躍してたし、人気者なんだよね。
佐々木先生がくじ引きを提案していなかったら、いずれ誰かがクラス代表に推薦していたかもしれない。
これからは同じクラス代表として、話すこともあるのかな。
大神くんは、なにを考えているのか、よくわからない表情をしていた。
嫌そうでもないし、かといって嬉しそうでもない。
嫌でも断れない、しかたないって思ってるのかも。
わからないけど、クールな印象だった。
放課後――
他の子もまだ何人か教室に残っている中、私と大神くんは、佐々木先生から説明を受けることになった。
「朝会や、体育館で並ぶときは、あなたたちが一番前に並んでね」
クラス代表以外の子は名簿順。
そういえば美緒ちゃんの出席番号は1番だから、すぐ近くにいられるのは嬉しいかも。
「移動教室の際には、この名簿を忘れずに持って行くこと。日誌は、とくに先生に伝えたいことがなければ細かく書かなくても大丈夫。学級会では進行を頼みたいけど……まあ、2人とも立候補したわけじゃないし、先生もフォローするから安心して」
どうやらそんなに難しいことはないみたい。
一番、不安なのは学級会の進行だけど、それも先生がフォローしてくれるみたいだし、大神くんもいる。
「それじゃあ、明日からよろしくね」
「はい」
大神くんと私の返事を確認して、佐々木先生が教室を出て行く。
「あの……大神くん。私、結城さくら。1年よろしくね」
「僕の名前……知ってたんだ?」
「大神良くんだよね?」
「うん。よろしく」
笑顔を向けられたわけじゃないけど、冷たいわけでもない。
口調がやわらかいからかな。
「日誌なんだけど。1週間ずつ交代で書く?」
そう提案する私に、大神くんが同意してくれる。
「そうしよう。じゃあ今週、あと3日しかないけど、先に僕がやろうか」
「ありがとう。その次の週が私ね。名簿は、気づいた方が持ってく……とか」
「うん、いいと思う」
「なにか問題があったら、そのときまた決め直せばいいよね」
「うん。それでいい」
「じゃあ……またね」
「うん」
とりあえず、いま決めておかなきゃならない最低限のことを決めておく。
話が弾むわけではないけど、ちゃんとした子でよかった……!
大神くんは自分の席に戻った後、すぐに教室を出て行った。
「ほ、本当にごめんね、さくらちゃん」
教室に残ってくれていた美緒ちゃんが両手を合わせて謝る。
「ううん、かわりにやるって言い出したのは私だし。並ぶとき、美緒ちゃんと近いのも嬉しいしね」
くじで決まったものだから、プレッシャーもいまのところそんなに感じていない。
「大丈夫だよ」
「ありがとう……でも……」
まだなにか不安なのかな。
さすがに心配しすぎだよって、笑おうとしたときだった。
「誰も立候補しなかったのに、いきなりかわるとか……ねぇ?」
女の子たちの話し声が聞こえてきた。
もしかして私に話しかけてるのかな。
振り返って確認してみる。
そこにいたのは、ウェーブした髪を指で遊ぶ立花由梨ちゃん。
由梨ちゃんも、中2ではじめて同じクラスになった。
教卓の近くにいる私たちからは、少し離れた一番後ろの席。
たしかに聞こえてきたけれど、由梨ちゃんは、こっちを見ていなかった。
由梨ちゃんの隣で綾ちゃんが答える。
「男子のクラス代表が大神くんだからでしょ。わかりやすすぎなんだけど」
私に聞こえるくらい大きな声で話していた由梨ちゃんと綾ちゃんが、ちらっとこっちをうかがった。
やっぱりこれ、私に言われてる?
「そういうんじゃないけど……美緒ちゃん、やりたくなさそうだったから」
「えー、さくらちゃん、やさしー」
「別に大したことじゃ……1人じゃないし。なにかあれば、大神くんにも協力してもらって……」
そう口にしたところで、ふと違和感に気づく。
由梨ちゃんも、綾ちゃんも笑ってない。
「大神くんにも協力してもらって……ねぇ」
わざとらしく由梨ちゃんが私の言葉を繰り返す。
由梨ちゃんと綾ちゃんは顔を見合わせた後、小さくため息を漏らした。
「もういい、行こう」
「うん」
私……やっちゃったかもしれない。
「さくらちゃん……。大丈夫?」
2人が教室を出て行った後、美緒ちゃんがそう心配してくれる。
「うん、大丈夫だよ。ちょっと言わなくていいこと言っちゃったみたいだけど……」
「大神くん、人気者だから……」
なんとなく、そうなんだろうなぁって思ってたけど……。
「たしかに、かっこいいもんね」
「私、同じ小学校だったんだけど、その頃からめちゃくちゃモテてたの。あんまりしゃべらないんだけど、そこがまたクールで、ちょっとミステリアスで……!」
「へぇ、そうなんだ……」
「でも、特別仲がいい子はいないみたい。いつも1人でいるんだよね」
そういうの、なんていうんだっけ。
「1匹オオカミ……?」
「そう、そんな感じ。仲良くなろうと思っても、必要以上に話してくれないから、みんなあまり近づけないの。誰も笑ったところを見たことないってウワサだよ」
「それなのに、人気なんだ……?」
「群れずに距離をおいてるところも魅力っていうか。運動神経も抜群でね。勉強も出来るらしいし、憧れてる子、多いんじゃないかな」
そんなすごい子がもう1人のクラス代表なら、安心……できるはずなんだけど。
「どうしよう。さくらちゃんが、クラスの女子にねたまれちゃったら……」
「だ、大丈夫だよ。別に由梨ちゃんたちが大神くんと仲良くするのをジャマするわけじゃないし。さっきだって、本当に最低限のことしか話してないしね」
「その最低限の会話すら、みんなできないんだよ……」
「そ、そっか……」
いくら人気者だからって、それはさすがに意識しすぎだと思うけど。
まあ、きっかけもないのに突然話しかけるのって難しいし、わからなくもない……かなぁ。
でも、タイミング的に大神くん目当てでクラス代表になったみたいなことになっちゃったのは、失敗だったかもしれない。
でも、あそこで言い出さなきゃ、美緒ちゃんにもう決定しちゃってたし。
「あ、美緒ちゃんは、よかった? 大神くんと一緒にクラス代表やりたかったとか……」
私が聞くと、美緒ちゃんはブンブンと首を横に振った。
「もともと代表とかそういうの苦手なのに、大神くんとだなんて余計、緊張しちゃうよ。それより、私のせいで、さくらちゃんが大変なことにならないか、そっちの方が気になるっていうか……」
「それは大丈夫。先生もフォローしてくれるみたいだし」
代表は私1人じゃない。
大神くんのことも、きっと大丈夫だよね。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか」
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