【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

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高3

冬夜と亜姫(3)

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 俺達の両親、建築関係の仕事してんだけど。俺が小さい頃から多忙で、家には殆どいなかった。
 思い出どころか下手したら顔すらよく思い出せないぐらい、親と過ごした記憶がない。
 小さい頃は必要に応じて婆ちゃんがいたけど、小学生になって間もなく死んじゃって。それからは立派な鍵っ子。
 放課後ルームに入って、習い事詰め込まれて、真っ暗な家に帰って。
 親はそれより後に帰ってきて慌ただしく過ごしてて。俺はずっと放置されてた。
 
 まぁ、見事に荒れたよ。愛情不足。今思えば情けないけど、不満だらけでさ。
 親にも社会にも自分に近づく奴らにも。何もかもにイラついてた。
 
 高校に入ると、家に寄り付かなくなった。
 まぁ、殆どいない親とは家にいたって顔合わせないけど。会えば喧嘩にしかならねーし、そんなに仕事が好きなら勝手にしてればって感じで。
 産み落とした責任だけはあんのか、金だけは常に置いてあった。
 
 あの頃、家族の形なんてどこにもなかった。
 毎日フラフラしてたよ、女のところとかあちこち渡り歩いて。友達だけは沢山いたから、そいつらと馬鹿なことばっかりやって……山センにも毎日のように捕まって叱られてたっけ。
 でも警察の世話にだけはならなかった。捕まって親が迎えになんて冗談じゃなかったし、呼んだところで仕事を理由に来ねーだろうしな。
 
 そんな日々を続けて、久々に家に帰ったら。
 
 珍しく、両親揃って家にいた。
 顔合わせんのは何カ月ぶり? って思った。
 なのに、親はそんなこと気にも止めて無さそうで。
 
 二人共、ただ嬉しそうに俺を見て
「冬夜、兄弟ができるよ」
 って言った。
 
 意味が分からなかった。
 
 俺が固まってたら、また二人で嬉しそうに笑って
「冬夜に、弟ができるよ」
 って言ったんだ。
 
 暴れたんだよ、俺。
 お前ら何言ってんだ、馬鹿じゃねーのかって。
 手当たり次第にモノ投げつけて、
「俺一人育てることすら出来ねーのに、また産み落とすのかよ! いらねーよ弟なんて! そんなもん今すぐ堕ろしてこい!」
 って、家ごと破壊しそうな勢いで暴れまくって家を飛び出した。
 
 その日から、ますます家に寄り付かなくなった。
 
 それまでは親の存在を無視してるだけで良かったのに、親がしようとしてることが許せなくなって。その事が頭から離れなくて、ひたすら苛々して過ごしてた。
 
 何考えてんだ。今更産んで、どーするつもりだよ。
 時間ないっつってんのに、子作りの時間はあったのかよ。
 婆ちゃんもいねーのに゙ガキなんか育てられるわけねーだろ、頭おかしいんじゃねーの。
 って……とにかく親への反発がすごくて。
 
 出産間近になると、母親が在宅で仕事するようになった。
 その姿を見たくなくて、友達の家を転々としてた。
 
 母親がさ、出産を待ち望んで浮かれて嬉しそうにしてんだよ。その姿に腹が立ってしかたなかった。
 そんな顔して笑えんのかよ、俺にはそんな顔を見せたこと無いくせに、家にいたことなんか無いくせに……って。
 ……いい歳して、俺もガキだったんだよな。
 
 そのうち、産まれたって連絡来て。
 でもどれだけ言われても病院には行かなかったし、家にも帰らなかった。
 だけど、里佳子に「どうしても」って無理やり引きずられて。一度だけ、こっそり新生児室を覗きに行ったんだ。
 
 ……両手上げてすやすや寝てて。
 小せえな、って思ったよ。
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