356 / 364
高3
冬夜と亜姫(3)
しおりを挟む
俺達の両親、建築関係の仕事してんだけど。俺が小さい頃から多忙で、家には殆どいなかった。
思い出どころか下手したら顔すらよく思い出せないぐらい、親と過ごした記憶がない。
小さい頃は必要に応じて婆ちゃんがいたけど、小学生になって間もなく死んじゃって。それからは立派な鍵っ子。
放課後ルームに入って、習い事詰め込まれて、真っ暗な家に帰って。
親はそれより後に帰ってきて慌ただしく過ごしてて。俺はずっと放置されてた。
まぁ、見事に荒れたよ。愛情不足。今思えば情けないけど、不満だらけでさ。
親にも社会にも自分に近づく奴らにも。何もかもにイラついてた。
高校に入ると、家に寄り付かなくなった。
まぁ、殆どいない親とは家にいたって顔合わせないけど。会えば喧嘩にしかならねーし、そんなに仕事が好きなら勝手にしてればって感じで。
産み落とした責任だけはあんのか、金だけは常に置いてあった。
あの頃、家族の形なんてどこにもなかった。
毎日フラフラしてたよ、女のところとかあちこち渡り歩いて。友達だけは沢山いたから、そいつらと馬鹿なことばっかりやって……山センにも毎日のように捕まって叱られてたっけ。
でも警察の世話にだけはならなかった。捕まって親が迎えになんて冗談じゃなかったし、呼んだところで仕事を理由に来ねーだろうしな。
そんな日々を続けて、久々に家に帰ったら。
珍しく、両親揃って家にいた。
顔合わせんのは何カ月ぶり? って思った。
なのに、親はそんなこと気にも止めて無さそうで。
二人共、ただ嬉しそうに俺を見て
「冬夜、兄弟ができるよ」
って言った。
意味が分からなかった。
俺が固まってたら、また二人で嬉しそうに笑って
「冬夜に、弟ができるよ」
って言ったんだ。
暴れたんだよ、俺。
お前ら何言ってんだ、馬鹿じゃねーのかって。
手当たり次第にモノ投げつけて、
「俺一人育てることすら出来ねーのに、また産み落とすのかよ! いらねーよ弟なんて! そんなもん今すぐ堕ろしてこい!」
って、家ごと破壊しそうな勢いで暴れまくって家を飛び出した。
その日から、ますます家に寄り付かなくなった。
それまでは親の存在を無視してるだけで良かったのに、親がしようとしてることが許せなくなって。その事が頭から離れなくて、ひたすら苛々して過ごしてた。
何考えてんだ。今更産んで、どーするつもりだよ。
時間ないっつってんのに、子作りの時間はあったのかよ。
婆ちゃんもいねーのに゙ガキなんか育てられるわけねーだろ、頭おかしいんじゃねーの。
って……とにかく親への反発がすごくて。
出産間近になると、母親が在宅で仕事するようになった。
その姿を見たくなくて、友達の家を転々としてた。
母親がさ、出産を待ち望んで浮かれて嬉しそうにしてんだよ。その姿に腹が立ってしかたなかった。
そんな顔して笑えんのかよ、俺にはそんな顔を見せたこと無いくせに、家にいたことなんか無いくせに……って。
……いい歳して、俺もガキだったんだよな。
そのうち、産まれたって連絡来て。
でもどれだけ言われても病院には行かなかったし、家にも帰らなかった。
だけど、里佳子に「どうしても」って無理やり引きずられて。一度だけ、こっそり新生児室を覗きに行ったんだ。
……両手上げてすやすや寝てて。
小せえな、って思ったよ。
思い出どころか下手したら顔すらよく思い出せないぐらい、親と過ごした記憶がない。
小さい頃は必要に応じて婆ちゃんがいたけど、小学生になって間もなく死んじゃって。それからは立派な鍵っ子。
放課後ルームに入って、習い事詰め込まれて、真っ暗な家に帰って。
親はそれより後に帰ってきて慌ただしく過ごしてて。俺はずっと放置されてた。
まぁ、見事に荒れたよ。愛情不足。今思えば情けないけど、不満だらけでさ。
親にも社会にも自分に近づく奴らにも。何もかもにイラついてた。
高校に入ると、家に寄り付かなくなった。
まぁ、殆どいない親とは家にいたって顔合わせないけど。会えば喧嘩にしかならねーし、そんなに仕事が好きなら勝手にしてればって感じで。
産み落とした責任だけはあんのか、金だけは常に置いてあった。
あの頃、家族の形なんてどこにもなかった。
毎日フラフラしてたよ、女のところとかあちこち渡り歩いて。友達だけは沢山いたから、そいつらと馬鹿なことばっかりやって……山センにも毎日のように捕まって叱られてたっけ。
でも警察の世話にだけはならなかった。捕まって親が迎えになんて冗談じゃなかったし、呼んだところで仕事を理由に来ねーだろうしな。
そんな日々を続けて、久々に家に帰ったら。
珍しく、両親揃って家にいた。
顔合わせんのは何カ月ぶり? って思った。
なのに、親はそんなこと気にも止めて無さそうで。
二人共、ただ嬉しそうに俺を見て
「冬夜、兄弟ができるよ」
って言った。
意味が分からなかった。
俺が固まってたら、また二人で嬉しそうに笑って
「冬夜に、弟ができるよ」
って言ったんだ。
暴れたんだよ、俺。
お前ら何言ってんだ、馬鹿じゃねーのかって。
手当たり次第にモノ投げつけて、
「俺一人育てることすら出来ねーのに、また産み落とすのかよ! いらねーよ弟なんて! そんなもん今すぐ堕ろしてこい!」
って、家ごと破壊しそうな勢いで暴れまくって家を飛び出した。
その日から、ますます家に寄り付かなくなった。
それまでは親の存在を無視してるだけで良かったのに、親がしようとしてることが許せなくなって。その事が頭から離れなくて、ひたすら苛々して過ごしてた。
何考えてんだ。今更産んで、どーするつもりだよ。
時間ないっつってんのに、子作りの時間はあったのかよ。
婆ちゃんもいねーのに゙ガキなんか育てられるわけねーだろ、頭おかしいんじゃねーの。
って……とにかく親への反発がすごくて。
出産間近になると、母親が在宅で仕事するようになった。
その姿を見たくなくて、友達の家を転々としてた。
母親がさ、出産を待ち望んで浮かれて嬉しそうにしてんだよ。その姿に腹が立ってしかたなかった。
そんな顔して笑えんのかよ、俺にはそんな顔を見せたこと無いくせに、家にいたことなんか無いくせに……って。
……いい歳して、俺もガキだったんだよな。
そのうち、産まれたって連絡来て。
でもどれだけ言われても病院には行かなかったし、家にも帰らなかった。
だけど、里佳子に「どうしても」って無理やり引きずられて。一度だけ、こっそり新生児室を覗きに行ったんだ。
……両手上げてすやすや寝てて。
小せえな、って思ったよ。
10
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。



溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる