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高3
和泉の初体験(1)
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受験の発表日を迎え、亜紀と和泉は合格通知を受け取った。そして麗華の合格もわかり、三人揃って同じ大学への進学が決まる。
ようやく受験から開放されたある日の昼、亜姫は和泉の家にいた。遅くなったが、バレンタインの贈り物としてお菓子とお弁当を作ったのだ。
「亜姫の弁当食うの、初めてだ。
そういえばお前、普段も買ってるよな。料理好きなのに自分の弁当は作らないの?」
すると亜姫は気まずそうに笑う。
「朝がね、どうしても起きられなくて」
その言葉には和泉も笑ってしまった。
亜姫はいつも寝坊しがちで、また寝起きはぼんやりしていることが多い。遅刻を気にしながら慌ただしく出発するので、確かに弁当を作る暇はないだろう。
「自分のだけじゃなくて、和泉のも作りたいとは何度も思ってたの。だから、今日はちょっと頑張っちゃった」
そう言って亜姫は蓋を開けた。
そこには、彩り豊かな和泉の好物ばかり揃えた弁当があった。
想像以上の出来栄えに和泉が言葉を失くし、それを見た亜姫は満面の笑みで喜ぶ。
甘さ控えめのスイーツも一緒に出すと、和泉はどれも美味いと言いながらあっという間に平らげた。
二人とも大満足で、カフェオレとおやつを手に和泉の部屋へ入る。
夕方、ちょっとした買い物と外食に挑戦するつもりなので、それまではゆっくり過ごす予定だ。
部屋に入ると、机の上に見慣れない本が置いてあった。
「あれ、珍しい。雑誌がある」
「あぁ、それは麻美の。昨日みんなで夕飯食ってたんだけど、何故か俺のバッグに入ってた」
「間違えちゃったのかな?」
そそっかしい麻美らしい、と亜姫は笑う。
何気なく表紙を見ると、恋愛特集の文字。パラパラとめくってみれば、そこには初体験や経験人数、体験談などがよくありがちな内容で構成されていた。
よくあるなぁ、こういう特集……。そう思いながら見ていたら、亜姫の頭に疑問が浮かんだ。
「ねぇ、和泉は私以外の人とは全部一回きり? 何回もした人って他にもいるの?」
何気なく口にして和泉を見ると、なんだか微妙な顔つきで固まっている。
「あー、ええと……いるっちゃ、いるかな……」
言いにくそうに、和泉は言葉に詰まる。それを目にした途端、例のモヤモヤが一気に膨らんだ。
自分以外にも求められた人がいることへの嫉妬。
そして……それを言いたくなさそうな和泉の様子。
やめとけばいいのに、知りたくて我慢できない気持ちがそのまま口から出てしまう。
「何回もシた人って……私、だけじゃ、なかったんだ……?」
「あー、いや、お前だけだよ。なんつーか、ちょっと特殊と言うか、さ……」
「言いにくいこと……なの?」
亜姫が聞くと、和泉はやはり言いたくなさそうで困った顔になった。
亜姫のモヤモヤが一気に増殖する。
「どんな人? 何回シたの?」
「……亜姫? そんなの、知りたい……?」
「うん。……どんな人? 年上、年下? 私より、おっぱい大きい?」
「あ、き……? なんか怒ってない?」
「怒ってないよ! 隠し事されてるみたいで嫌だなって、ちょっと思ってるだけ!」
「怒ってるじゃん……」
ようやく受験から開放されたある日の昼、亜姫は和泉の家にいた。遅くなったが、バレンタインの贈り物としてお菓子とお弁当を作ったのだ。
「亜姫の弁当食うの、初めてだ。
そういえばお前、普段も買ってるよな。料理好きなのに自分の弁当は作らないの?」
すると亜姫は気まずそうに笑う。
「朝がね、どうしても起きられなくて」
その言葉には和泉も笑ってしまった。
亜姫はいつも寝坊しがちで、また寝起きはぼんやりしていることが多い。遅刻を気にしながら慌ただしく出発するので、確かに弁当を作る暇はないだろう。
「自分のだけじゃなくて、和泉のも作りたいとは何度も思ってたの。だから、今日はちょっと頑張っちゃった」
そう言って亜姫は蓋を開けた。
そこには、彩り豊かな和泉の好物ばかり揃えた弁当があった。
想像以上の出来栄えに和泉が言葉を失くし、それを見た亜姫は満面の笑みで喜ぶ。
甘さ控えめのスイーツも一緒に出すと、和泉はどれも美味いと言いながらあっという間に平らげた。
二人とも大満足で、カフェオレとおやつを手に和泉の部屋へ入る。
夕方、ちょっとした買い物と外食に挑戦するつもりなので、それまではゆっくり過ごす予定だ。
部屋に入ると、机の上に見慣れない本が置いてあった。
「あれ、珍しい。雑誌がある」
「あぁ、それは麻美の。昨日みんなで夕飯食ってたんだけど、何故か俺のバッグに入ってた」
「間違えちゃったのかな?」
そそっかしい麻美らしい、と亜姫は笑う。
何気なく表紙を見ると、恋愛特集の文字。パラパラとめくってみれば、そこには初体験や経験人数、体験談などがよくありがちな内容で構成されていた。
よくあるなぁ、こういう特集……。そう思いながら見ていたら、亜姫の頭に疑問が浮かんだ。
「ねぇ、和泉は私以外の人とは全部一回きり? 何回もした人って他にもいるの?」
何気なく口にして和泉を見ると、なんだか微妙な顔つきで固まっている。
「あー、ええと……いるっちゃ、いるかな……」
言いにくそうに、和泉は言葉に詰まる。それを目にした途端、例のモヤモヤが一気に膨らんだ。
自分以外にも求められた人がいることへの嫉妬。
そして……それを言いたくなさそうな和泉の様子。
やめとけばいいのに、知りたくて我慢できない気持ちがそのまま口から出てしまう。
「何回もシた人って……私、だけじゃ、なかったんだ……?」
「あー、いや、お前だけだよ。なんつーか、ちょっと特殊と言うか、さ……」
「言いにくいこと……なの?」
亜姫が聞くと、和泉はやはり言いたくなさそうで困った顔になった。
亜姫のモヤモヤが一気に増殖する。
「どんな人? 何回シたの?」
「……亜姫? そんなの、知りたい……?」
「うん。……どんな人? 年上、年下? 私より、おっぱい大きい?」
「あ、き……? なんか怒ってない?」
「怒ってないよ! 隠し事されてるみたいで嫌だなって、ちょっと思ってるだけ!」
「怒ってるじゃん……」
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