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高3
受験と自由登校(1)
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2月に入り、三年は受験や自由登校で顔を見せない生徒が増えた。亜姫達は登校することが多かったが、流石に勉強一色。
亜姫と和泉は一校しか受けなかったので、それさえ終われば後は結果を待つだけだ。
琴音は既に会社へ顔を出していて、生き生きと色んな事を学んでいるようだ。顔を合わせる機会はないが、時折来る連絡から楽しそうな様子が伝わってくる。
ヒロは推薦で早々に合格を決めている。
麗華達はそれぞれ複数の受験を控えており、今月は殆ど会っていない。
そんな中、亜姫と和泉とヒロは休まず登校を続けていた。ヒロはバイトが始まるまでの単なる暇潰しだが、亜姫は遅れた分を取り戻したいと未だに勉強を続けている。
「もうすぐ卒業なんだね」
ふと亜姫が呟く。
「そうだな」
「なんだか、あっという間だったよなぁ」
ヒロが伸びをしながら呑気に呟いて、それからしみじみと言った。
「お前らの成長過程をひたすら見てきた3年間だったな。俺、ちょっと保護者みたいな気分だわ」
それには亜姫達も同意する。まさにその通りで、二人の付き合いには彼らの支えが欠かせなかったのだから。
「皆の進路がばらばらだから寂しいなぁ………」
亜姫がしんみりすると、ヒロが笑い飛ばした。
「皆、近場の学校しか受けてないじゃん。引っ越すやつもいねーし、どうせしょっちゅう集まってるって。何も変わらねーよ」
確かに、と三人で笑い合った。
三年の下校時間は早かったが、亜姫と和泉は山本達の協力の元、下級生の下校時刻まで残らせてもらうことが多かった。
教師になる為のアドバイスをもらったり、ちょっとした手伝いをしたり。学校が大好きな亜姫にとって、その時間はどれも楽しい。
休み時間は、卒業したら来られなくなる校内のあちこちで休憩を楽しんだ。
そうすると、自然と下級生達に触れ合う機会が増える。時々会う野口は見かけるたびに大人びていくが、和泉とは相変わらずの仲。そんな野口とももうすぐ会えなくなると思うと、なんだか寂しくなってしまう。
香田と春菜は亜姫達の受験が終わったと聞き、また顔を見せるようになった。
暇を見つけてはやってくる香田だったが、麗華達に言われて多少学んだようだ。以前と違い、亜姫の居場所を狭めたり、不躾な発言をしたりはしない。
和泉と話す時は相変わらず距離が近かったりスキンシップが多かったりするが、それは香田の個性なのだろう。誰に対しても同じなので、亜姫はあまり気にしないようにしていた。
聞けば、春菜からの忠告やアドバイスにもよく耳を傾けるようになったのだという。
人との関わり方が変わると、香田が元々持っていた気立ての良さも見えてくる。近頃は春菜以外の友人もでき始めたようで、時折数人で過ごす姿を見かけるようになった。その楽しそうな姿を、亜姫は嬉しそうに眺めていた。
麗華達はいたりいなかったりだったが、こんな風に過ごす日々は残り少ない。そう思うと名残惜しくもあり、だからこそ楽しくもあった。
だが。
その中で亜姫は僅かな不安を抱えていた。
──和泉と春菜の話す時間が、増えている。
気のせいではない。明らかに増えている。
亜姫が和泉といる時にはない。だが、亜姫が他の人と話していたり少し離れた時などに、誰にも気が付かれないよう言葉を交わしている。
ある時、そう気付いた。
亜姫と和泉は一校しか受けなかったので、それさえ終われば後は結果を待つだけだ。
琴音は既に会社へ顔を出していて、生き生きと色んな事を学んでいるようだ。顔を合わせる機会はないが、時折来る連絡から楽しそうな様子が伝わってくる。
ヒロは推薦で早々に合格を決めている。
麗華達はそれぞれ複数の受験を控えており、今月は殆ど会っていない。
そんな中、亜姫と和泉とヒロは休まず登校を続けていた。ヒロはバイトが始まるまでの単なる暇潰しだが、亜姫は遅れた分を取り戻したいと未だに勉強を続けている。
「もうすぐ卒業なんだね」
ふと亜姫が呟く。
「そうだな」
「なんだか、あっという間だったよなぁ」
ヒロが伸びをしながら呑気に呟いて、それからしみじみと言った。
「お前らの成長過程をひたすら見てきた3年間だったな。俺、ちょっと保護者みたいな気分だわ」
それには亜姫達も同意する。まさにその通りで、二人の付き合いには彼らの支えが欠かせなかったのだから。
「皆の進路がばらばらだから寂しいなぁ………」
亜姫がしんみりすると、ヒロが笑い飛ばした。
「皆、近場の学校しか受けてないじゃん。引っ越すやつもいねーし、どうせしょっちゅう集まってるって。何も変わらねーよ」
確かに、と三人で笑い合った。
三年の下校時間は早かったが、亜姫と和泉は山本達の協力の元、下級生の下校時刻まで残らせてもらうことが多かった。
教師になる為のアドバイスをもらったり、ちょっとした手伝いをしたり。学校が大好きな亜姫にとって、その時間はどれも楽しい。
休み時間は、卒業したら来られなくなる校内のあちこちで休憩を楽しんだ。
そうすると、自然と下級生達に触れ合う機会が増える。時々会う野口は見かけるたびに大人びていくが、和泉とは相変わらずの仲。そんな野口とももうすぐ会えなくなると思うと、なんだか寂しくなってしまう。
香田と春菜は亜姫達の受験が終わったと聞き、また顔を見せるようになった。
暇を見つけてはやってくる香田だったが、麗華達に言われて多少学んだようだ。以前と違い、亜姫の居場所を狭めたり、不躾な発言をしたりはしない。
和泉と話す時は相変わらず距離が近かったりスキンシップが多かったりするが、それは香田の個性なのだろう。誰に対しても同じなので、亜姫はあまり気にしないようにしていた。
聞けば、春菜からの忠告やアドバイスにもよく耳を傾けるようになったのだという。
人との関わり方が変わると、香田が元々持っていた気立ての良さも見えてくる。近頃は春菜以外の友人もでき始めたようで、時折数人で過ごす姿を見かけるようになった。その楽しそうな姿を、亜姫は嬉しそうに眺めていた。
麗華達はいたりいなかったりだったが、こんな風に過ごす日々は残り少ない。そう思うと名残惜しくもあり、だからこそ楽しくもあった。
だが。
その中で亜姫は僅かな不安を抱えていた。
──和泉と春菜の話す時間が、増えている。
気のせいではない。明らかに増えている。
亜姫が和泉といる時にはない。だが、亜姫が他の人と話していたり少し離れた時などに、誰にも気が付かれないよう言葉を交わしている。
ある時、そう気付いた。
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