【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

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高3

受験勉強とモヤモヤ(3)

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 和泉は笑いながらその体を抱き寄せ、膝の上に乗せる。

「泣くなよ。第一、そんなことをする必要はないじゃん」
「やだ、するの!」
 和泉が言い聞かせるように言うが、亜姫は嫌だの一点張り。
「もう……お前、なんで泣いてるか自分でもわかってないんだろ」
 和泉は声を上げて笑う。
「わかったわかった。じゃあ今日は、亜姫しか出来ないことをやろう」
 
 すると、亜姫は涙に濡れた顔を上げた。
 
 こんな状態でも「亜姫だけ」と言う部分に期待を見せる様子がなんとも可愛い。和泉の頬は緩みっぱなしだ。
 
「お前がシた事ない……ってことは、確かにある。でも逆に、お前しか出来ない事だって沢山あるだろ?
 俺が触れたいと思うのは亜姫だけ、って言ってるの……忘れちゃった?」
 言い聞かせるように優しく告げると、亜姫は強張りを少し緩める。

 和泉はくすくす笑いながら抱きしめたり指を絡めたり。最後に軽い口づけもお見舞いする。
「亜姫? 俺にこんなことさせるのはお前だけなんだよ? それ、わかってる?」
 
 亜姫は顔を赤く染めながら素直に頷き、けれどますますくっつこうとする。
 和泉はその体を優しく包み込みながら、心をほぐしていった。
 

  
 ◇
 和泉は眠る亜姫に寄り添い、頬にかかった髪を優しく避けながら自分を律していた。

 最近の亜姫は、なぜかいやらしい方向へアンテナを伸ばしっぱなし。そのおかしな頑張りにはツッコミどころしかないが、必死な亜姫が可愛くてついからかってしまう。

 自身の感情に振り回されて苦しんでいるのだから、早々に誤解を解いたり軌道修正してやるべきだと分かってはいる。実際、いつもなら簡単に抑え込めるものばかり。

 だがその行動は全て、自分への想いがあふれたゆえ
 それが嬉しすぎて、亜姫の様子が可愛すぎて。うまく自制が効かない。念願が叶って、浮かれているせいもある。
 
 けれど、亜姫の勢いに流されて体を重ねることになってはいけない。それに不安を「体で解消する」なんて絶対にあってはならない。
 亜姫が「抱かれれば安心」と思うようになるのは嫌だった。

 近頃は触れ合いに絡めた不安が多い。バカな事をしてきた自分の過去は、今の亜姫にとったら不安材料でしか無いのだろう。だがその不安定さをふまえても、必要以上に考え過ぎているフシがある。

 それをこういう形で消化させるのは良くないなと和泉は思う。

 「こういう形」と言っても、体を重ねるわけではない。手を絡めたり抱きしめたり、せいぜい軽く口づける程度の初歩的な触れ合いに留めているし、それは時に安心させるのに有効な手段だったりする。
 
 だが、大事なのは「触れ合うこと」ではなく、「それに伴う心の状態」だ。触れ合いはあくまでもその延長上にあるべきもので、しなければいけないものでもないし、苦しみや悩みを感じるなどあるまじきこと。
 
 触れ合いには「心地良さと幸福感」だけを感じてもらいたい。そこはやはり譲れない。
 
 亜姫の不安定さをどうするかは課題となるが、ある程度気持ちの整理がついてくれば次第に落ち着いていくだろう。
 これまで色々あったが、ようやく色んな事が落ち着いてきたところだ。結果的に亜姫との絆が強くなったと感じていた和泉に焦りはなく、ゆとりを持ってこの先を考えていた。
 
 受験前だし、卒業式もあるし、今はやることが沢山ある。それが終われば、やりたい事に挑戦したり色んな場所に行ったりする時間もできる。
 しばらくは、体の繋がりより他の事で気を紛らわした方が良さそうだ。
 
 和泉はそう思い、何があろうと今以上の触れ合いはしばらくしないと決意。
 そしてその通りに「清く正しく」を和泉は実行した。
 
 それがまた、別の問題を産むとは知らずに……。
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