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高3
嫉妬の先の触れ合い(5)
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情けなさを誤魔化す準備はしたものの、出来れば見せたくはないわけで。
和泉は溢れそうな涙を堪え、何でもなさそうに亜姫へと声をかける。
「ごめんな、あんな触れ方……でも、あれが昔の俺だか……」
突如強く頭を抱きしめられ、和泉は話を止めた。
と言うより、息ができないほど締め付けられて喋れなくなった。
状況が理解出来ず、和泉の頭は「?」で埋まる。
「……だ」
「え?」
「やだ……思い出しちゃ駄目……」
「……は?」
「だって、いっぱい抱いたんでしょう」
「え? いや、まぁ、抱いたっつーか、ついさっきの雑なセッ……」
「思い出しちゃ駄目!」
亜姫が、和泉の頭をムギューっと自分の肩に押し付ける。
「亜姫……?」
和泉が頭を上げようとするが、亜姫はそれを嫌がり、和泉の体ごと自らへ押し付ける。
和泉は亜姫を抱えているのか抱えられているのかわからなくなった。
「だ、だって……だって、嫌なんだもん! 和泉には嫌な思い出かもしれないけど……だって、あんな風に……でも、和泉の行為が最低だなんて誰も言わなかったって言ってたもん……女の子達、喜んで順番待ちまでしてたって……」
「は?」
「和泉だって、興奮してたんでしょう!? それで、あの、あれ、反応させて……体、貪りまくって……」
何やら雲行きが怪しくなってきた。
どれだけはしたないことを口走っているか自覚していない亜姫は、非常に危険だ。
確実に例の暴走が始まっている。
早急に何とかせねばと、和泉は焦り始めた。方向性がズレすぎると修正出来なくなって、亜姫が止まらなくなってしまう。
「むさぼ……っ、て、そりゃ終わらせる為には……いや、でも好んで触りまくったわけじゃねーよ? ほんと適当に……」
「それで女の子をイイ気持ちにさせまくって、和泉も気持ち良くなってたんでしょう? だからっ……」
「おい、一体なんの話……つーか、亜姫、手ぇ離せって、これじゃ俺が苦し」
「だって! 和泉が触ったらどんなことでも気持ちいいもん! 頭撫でられるだけでも……その手じゃ誰だって……気持ち良くしてもらった人が何人も………嫌なの!」
「亜姫、ちょ、おい、」
「和泉も、いつでも気持ち良かったの……? おっぱいだって、皆大きかったんでしょう?……私と比べちゃ駄目なんだから……」
「比べてねーよ。何度も言ってるだろ、俺は」
「だって! 和泉、上手いんでしょう? だって声だけでみんな妊娠しちゃうって……なのに和泉が……」
と、ここでようやく和泉が抜け出した。
「言うな止まれよ頼むからっ!」
不満と不安をいっぱいにして涙目で睨む亜姫。その口を手の平で塞ぎ、和泉は大きく息を吐いた。
亜姫の両手を優しく取り、落ち着かせるようにゆっくりと撫でる。そして亜姫が大人しくなるのを気長に待った。
「……やきもち、焼いてくれてんの?」
亜姫は返事をせず、頬だけ赤く染めてますます不満げに口を尖らせる。
「で? お前はいつも、俺に触れられたら……それこそ頭撫でられるだけでも心地良いと?
……いきなり、なんの告白だよ。そんなの聞かされたら、俺、今すぐ理性飛びそうなんだけど」
そこで、ようやく亜姫が我に返る。それを確認して和泉は優しく笑った。
「亜姫。何度でも言うよ。
俺はお前以外の女を人として扱ったことはない。
ある程度刺激を加えりゃ、男は勝手に反応するよ。それを続ければ誰でも最後まで出来る。女だってそうだろ? 状況にもよるだろうけど……体と心が必ずしも連動するわけじゃない。
お前だって、以前鍋島にそう言ってたじゃん」
あんな場所では堂々と言い切ったくせに、ここで亜姫は真っ赤に染まった。
その様子を見て、和泉に余裕が戻ってくる。
「まぁ……でも俺、どうやら上手いらしいし? 雑に触っても気持ち良くさせちゃってたとしたら、それはしょうがねーよな」
そう言うと、亜姫へ意地悪そうな笑みを向けた。
「短時間で済ませたくて、それなりに触ってはいたよ。性感帯なんて大体同じだろ。近づくのは手慣れた女ばっかだし、向こうから触って欲しがるから余計に簡単。俺、それなりに経験豊富だし」
わざと楽しげに聞かせてみると、案の定、亜姫が不快を露わにする。
嫉妬に塗れたその顔をするりと撫で、和泉は蕩けた甘い視線を向けた。
「相手が気持ち良くなってるか、なんて……考えたことが無かったよ。……この苦痛な行為をどれだけ早く終わらせるか。ただ、それだけだった」
和泉に捉えられた大きな瞳が揺れる。
「でも……お前だけは別。
俺が触れる事を喜んでくれなきゃ嫌だし、そうじゃなきゃ不安になる。
触れてもいいのか、触れたらどんな反応してくるのか……俺はお前の些細なことがいちいち気になるし、全てを見て聞いて感じたくて仕方ない」
亜姫が一言も逃さず聞いていることを確認しながら、和泉は更に甘く微笑む。
「誰かと比べるっつー話を敢えてするとしたら。毎日、今日のお前が最高だなと思ってる。
俺には、亜姫の全てが毎回新鮮でたまらないよ」
和泉は溢れそうな涙を堪え、何でもなさそうに亜姫へと声をかける。
「ごめんな、あんな触れ方……でも、あれが昔の俺だか……」
突如強く頭を抱きしめられ、和泉は話を止めた。
と言うより、息ができないほど締め付けられて喋れなくなった。
状況が理解出来ず、和泉の頭は「?」で埋まる。
「……だ」
「え?」
「やだ……思い出しちゃ駄目……」
「……は?」
「だって、いっぱい抱いたんでしょう」
「え? いや、まぁ、抱いたっつーか、ついさっきの雑なセッ……」
「思い出しちゃ駄目!」
亜姫が、和泉の頭をムギューっと自分の肩に押し付ける。
「亜姫……?」
和泉が頭を上げようとするが、亜姫はそれを嫌がり、和泉の体ごと自らへ押し付ける。
和泉は亜姫を抱えているのか抱えられているのかわからなくなった。
「だ、だって……だって、嫌なんだもん! 和泉には嫌な思い出かもしれないけど……だって、あんな風に……でも、和泉の行為が最低だなんて誰も言わなかったって言ってたもん……女の子達、喜んで順番待ちまでしてたって……」
「は?」
「和泉だって、興奮してたんでしょう!? それで、あの、あれ、反応させて……体、貪りまくって……」
何やら雲行きが怪しくなってきた。
どれだけはしたないことを口走っているか自覚していない亜姫は、非常に危険だ。
確実に例の暴走が始まっている。
早急に何とかせねばと、和泉は焦り始めた。方向性がズレすぎると修正出来なくなって、亜姫が止まらなくなってしまう。
「むさぼ……っ、て、そりゃ終わらせる為には……いや、でも好んで触りまくったわけじゃねーよ? ほんと適当に……」
「それで女の子をイイ気持ちにさせまくって、和泉も気持ち良くなってたんでしょう? だからっ……」
「おい、一体なんの話……つーか、亜姫、手ぇ離せって、これじゃ俺が苦し」
「だって! 和泉が触ったらどんなことでも気持ちいいもん! 頭撫でられるだけでも……その手じゃ誰だって……気持ち良くしてもらった人が何人も………嫌なの!」
「亜姫、ちょ、おい、」
「和泉も、いつでも気持ち良かったの……? おっぱいだって、皆大きかったんでしょう?……私と比べちゃ駄目なんだから……」
「比べてねーよ。何度も言ってるだろ、俺は」
「だって! 和泉、上手いんでしょう? だって声だけでみんな妊娠しちゃうって……なのに和泉が……」
と、ここでようやく和泉が抜け出した。
「言うな止まれよ頼むからっ!」
不満と不安をいっぱいにして涙目で睨む亜姫。その口を手の平で塞ぎ、和泉は大きく息を吐いた。
亜姫の両手を優しく取り、落ち着かせるようにゆっくりと撫でる。そして亜姫が大人しくなるのを気長に待った。
「……やきもち、焼いてくれてんの?」
亜姫は返事をせず、頬だけ赤く染めてますます不満げに口を尖らせる。
「で? お前はいつも、俺に触れられたら……それこそ頭撫でられるだけでも心地良いと?
……いきなり、なんの告白だよ。そんなの聞かされたら、俺、今すぐ理性飛びそうなんだけど」
そこで、ようやく亜姫が我に返る。それを確認して和泉は優しく笑った。
「亜姫。何度でも言うよ。
俺はお前以外の女を人として扱ったことはない。
ある程度刺激を加えりゃ、男は勝手に反応するよ。それを続ければ誰でも最後まで出来る。女だってそうだろ? 状況にもよるだろうけど……体と心が必ずしも連動するわけじゃない。
お前だって、以前鍋島にそう言ってたじゃん」
あんな場所では堂々と言い切ったくせに、ここで亜姫は真っ赤に染まった。
その様子を見て、和泉に余裕が戻ってくる。
「まぁ……でも俺、どうやら上手いらしいし? 雑に触っても気持ち良くさせちゃってたとしたら、それはしょうがねーよな」
そう言うと、亜姫へ意地悪そうな笑みを向けた。
「短時間で済ませたくて、それなりに触ってはいたよ。性感帯なんて大体同じだろ。近づくのは手慣れた女ばっかだし、向こうから触って欲しがるから余計に簡単。俺、それなりに経験豊富だし」
わざと楽しげに聞かせてみると、案の定、亜姫が不快を露わにする。
嫉妬に塗れたその顔をするりと撫で、和泉は蕩けた甘い視線を向けた。
「相手が気持ち良くなってるか、なんて……考えたことが無かったよ。……この苦痛な行為をどれだけ早く終わらせるか。ただ、それだけだった」
和泉に捉えられた大きな瞳が揺れる。
「でも……お前だけは別。
俺が触れる事を喜んでくれなきゃ嫌だし、そうじゃなきゃ不安になる。
触れてもいいのか、触れたらどんな反応してくるのか……俺はお前の些細なことがいちいち気になるし、全てを見て聞いて感じたくて仕方ない」
亜姫が一言も逃さず聞いていることを確認しながら、和泉は更に甘く微笑む。
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