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高3
嫉妬の先の触れ合い(3)
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いったい何を言っているんだ……と自分でも思ったが、一度開いた口は止まらなくなった。
「いっぱいシたって言ってたでしょう? 全部で何人ぐらい? 十人? 百人? 千人?」
亜姫は乗り出すようにして和泉に畳み掛けた。
突然様子が変わったことに、和泉の対処も追いつかない。
「ちょ、ちょっ、亜姫、止まれ。どうした? まず落ち着けって」
宥めようとする和泉の手を振り切るようにして、亜姫は更にぐいぐいと迫る。
その時、怪我した箇所へ痛みがあったのか「痛って……」と和泉が声を上げる。
それで亜姫は我に返った。
「ごめんなさい!……大丈夫? 痛い……?」
痛む部分を擦りながら謝るが、その顔は今にも泣き出しそうだ。
和泉はしばしその様子を眺めていたが、そっと手を伸ばして亜姫を優しく抱き寄せた。
「……どうしたの、急に。なにか不安になっちゃった?」
腕をさすりながら亜姫はぶんぶんと首を振る。
「き、興味が出ただけ……聞いたことなかったなって……。琴音ちゃんからそんな話も聞いてきたし……ど、どれだけ沢山の人と、触れ合ってきたのかなって、思って……」
言葉尻を小さくしながら亜姫は俯いていく。
和泉はしばらく何も言わず、ただ亜姫の背中を撫でていた。が、少しして、静かな声で亜姫に問いかける。
「知っても、いい気分にはならないと思うよ?
それでもいいのなら……隠し事はしないし教えるって前にも約束したから何でも答える。……亜姫は、何が知りたい?」
亜姫は悲壮感を漂わせながら和泉を見上げた。
「い、和泉の、この手に触れた人、何人いるの? この手で、どれだけ他の子を……嫌だ……」
◇
どうやら独占欲スイッチが入ってしまったようだ。亜姫自身が翻弄されている感情の荒波は、本人にはどうしようもできないのだろう。普段、我慢ばかりする子だから余計に。
今の亜姫は子供が泣きながら駄々をこねているようだ。
「駄目、やだ! どうして皆が知ってるの? 和泉の手が心地良いって……私しか知らなくていいのに! どうして和泉は他の人に触れちゃったの……? 和泉は私のなのに……」
ギュウギュウとしがみつく亜姫は、相変わらず可愛い。
和泉が笑いながら宥めていると。
「どんな風にシてきたの?」
不貞腐れた亜姫が、突如踏み込んできた。
「……え?」
「どんな風に他の人を抱いてきたの? どうやって気持ち良くしてきたの?」
これには流石に和泉が動揺した。
どうやって、って……。あんなおざなりな行為をしてたなんて言ったら、流石に引かれる……いや、場合によっては嫌われる自信がある。というか、むしろその自信しかない。
悶々と考えて言うのを躊躇していると、亜姫は胡乱な目を向けてきた。
「い、言えないようなこと、してきたんだ……? 私には言えないこと……じゃあ、私にもして」
「えっ、お前に?」
「そう! 私だけ知らないなんて嫌! 皆としてたこと、私にもして!」
「……あれは……流石にお前には出来ねぇよ……」
和泉は思わず本音を漏らす。そりゃそうだ。あんな酷い抱き方を亜姫に出来るわけがない。
しかし亜姫は、自分には真似出来ない高度な行為をしてきたのだと勘違いした。
「で、出来るもん! 私だけ出来ないなんて、やだ……和泉の全部、他の人にあげたくない」
亜姫は間違いなく冷静さを欠いている。もはや自分が何を言っているのかわからなくなっているのだろう。だが、一歩も引く気はないようだ。
傷つけたいわけじゃない。亜姫に嫌われたくもない。
ただ、あの頃の行為は自分の気持ちを未だに尖らせるものでもあり……それを思い出すと、自身の気持ちはどうしてもささくれ立つ。
消化しきれず燻り続ける、過去の行為。
それを亜姫が望みだしたことで……なんだか亜姫との触れ合いを汚された気になった。
お前を愛することと、どれほど違うのか──比べ物になどならないのだと──無性に教え込みたくなった。
この時、自分もおかしくなっていたのかもしれない。
しぶとく過去に縛り付けられている感覚も確かにあった。
泣いて訴え続ける亜姫は純粋な子供のようだ。それを今から汚すのかと、自分が酷い加虐者になった気になる。けれどその気持ちを抑えることなく、無言で亜姫をベッドに押し付けた。
そのまま、昔していたような乱雑な行為をした。
服など脱がせず、少し乱すだけ。下だけ面倒くさそうに脱がし、一言も発することなく後ろから一方的に。おざなりに愛撫して、自分に抱きつこうとしたり見つめ合うような動きは静止して引き剥がす。もちろん慈しむようなくちづけや優しい触れ合いなど皆無だ。亜姫の言葉は全て聞こえないフリをして、自分本位に終わらせた。そして、亜姫への気遣いなど微塵も見せず、
「二度と話しかけんな。早く消えろ」
冷たく吐き捨てて、和泉は部屋を出た。
「いっぱいシたって言ってたでしょう? 全部で何人ぐらい? 十人? 百人? 千人?」
亜姫は乗り出すようにして和泉に畳み掛けた。
突然様子が変わったことに、和泉の対処も追いつかない。
「ちょ、ちょっ、亜姫、止まれ。どうした? まず落ち着けって」
宥めようとする和泉の手を振り切るようにして、亜姫は更にぐいぐいと迫る。
その時、怪我した箇所へ痛みがあったのか「痛って……」と和泉が声を上げる。
それで亜姫は我に返った。
「ごめんなさい!……大丈夫? 痛い……?」
痛む部分を擦りながら謝るが、その顔は今にも泣き出しそうだ。
和泉はしばしその様子を眺めていたが、そっと手を伸ばして亜姫を優しく抱き寄せた。
「……どうしたの、急に。なにか不安になっちゃった?」
腕をさすりながら亜姫はぶんぶんと首を振る。
「き、興味が出ただけ……聞いたことなかったなって……。琴音ちゃんからそんな話も聞いてきたし……ど、どれだけ沢山の人と、触れ合ってきたのかなって、思って……」
言葉尻を小さくしながら亜姫は俯いていく。
和泉はしばらく何も言わず、ただ亜姫の背中を撫でていた。が、少しして、静かな声で亜姫に問いかける。
「知っても、いい気分にはならないと思うよ?
それでもいいのなら……隠し事はしないし教えるって前にも約束したから何でも答える。……亜姫は、何が知りたい?」
亜姫は悲壮感を漂わせながら和泉を見上げた。
「い、和泉の、この手に触れた人、何人いるの? この手で、どれだけ他の子を……嫌だ……」
◇
どうやら独占欲スイッチが入ってしまったようだ。亜姫自身が翻弄されている感情の荒波は、本人にはどうしようもできないのだろう。普段、我慢ばかりする子だから余計に。
今の亜姫は子供が泣きながら駄々をこねているようだ。
「駄目、やだ! どうして皆が知ってるの? 和泉の手が心地良いって……私しか知らなくていいのに! どうして和泉は他の人に触れちゃったの……? 和泉は私のなのに……」
ギュウギュウとしがみつく亜姫は、相変わらず可愛い。
和泉が笑いながら宥めていると。
「どんな風にシてきたの?」
不貞腐れた亜姫が、突如踏み込んできた。
「……え?」
「どんな風に他の人を抱いてきたの? どうやって気持ち良くしてきたの?」
これには流石に和泉が動揺した。
どうやって、って……。あんなおざなりな行為をしてたなんて言ったら、流石に引かれる……いや、場合によっては嫌われる自信がある。というか、むしろその自信しかない。
悶々と考えて言うのを躊躇していると、亜姫は胡乱な目を向けてきた。
「い、言えないようなこと、してきたんだ……? 私には言えないこと……じゃあ、私にもして」
「えっ、お前に?」
「そう! 私だけ知らないなんて嫌! 皆としてたこと、私にもして!」
「……あれは……流石にお前には出来ねぇよ……」
和泉は思わず本音を漏らす。そりゃそうだ。あんな酷い抱き方を亜姫に出来るわけがない。
しかし亜姫は、自分には真似出来ない高度な行為をしてきたのだと勘違いした。
「で、出来るもん! 私だけ出来ないなんて、やだ……和泉の全部、他の人にあげたくない」
亜姫は間違いなく冷静さを欠いている。もはや自分が何を言っているのかわからなくなっているのだろう。だが、一歩も引く気はないようだ。
傷つけたいわけじゃない。亜姫に嫌われたくもない。
ただ、あの頃の行為は自分の気持ちを未だに尖らせるものでもあり……それを思い出すと、自身の気持ちはどうしてもささくれ立つ。
消化しきれず燻り続ける、過去の行為。
それを亜姫が望みだしたことで……なんだか亜姫との触れ合いを汚された気になった。
お前を愛することと、どれほど違うのか──比べ物になどならないのだと──無性に教え込みたくなった。
この時、自分もおかしくなっていたのかもしれない。
しぶとく過去に縛り付けられている感覚も確かにあった。
泣いて訴え続ける亜姫は純粋な子供のようだ。それを今から汚すのかと、自分が酷い加虐者になった気になる。けれどその気持ちを抑えることなく、無言で亜姫をベッドに押し付けた。
そのまま、昔していたような乱雑な行為をした。
服など脱がせず、少し乱すだけ。下だけ面倒くさそうに脱がし、一言も発することなく後ろから一方的に。おざなりに愛撫して、自分に抱きつこうとしたり見つめ合うような動きは静止して引き剥がす。もちろん慈しむようなくちづけや優しい触れ合いなど皆無だ。亜姫の言葉は全て聞こえないフリをして、自分本位に終わらせた。そして、亜姫への気遣いなど微塵も見せず、
「二度と話しかけんな。早く消えろ」
冷たく吐き捨てて、和泉は部屋を出た。
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