【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

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高3

事故・混沌(4)

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「ごめんな、こんなことになっちゃって」
 和泉の凹んだ声が亜姫の感情を刺激する。数多の感情に飲み込まれて何も言えず、腕の奥へ潜り込むように抱きついた。
 
「亜姫。登下校のこと、ちゃんと決めよう。お前に無理がないように、ちゃんと決めような」
「うん……。退院するまで、毎日ここに来てもいい? 会いたい」
「うん、待ってる」
「和泉、ごめんなさい。助けてくれてありがとう。でも、ごめんなさい……」
「お前のせいじゃないよ、もう泣くな。お前が泣いてたら俺が休めねーよ」
 
 ほら、笑え。
 そう言って、和泉は亜姫を宥めた。
 
 その後、戻ってきた山本達と今後について話し合った。
 和泉がいない間、朝は亜姫の親が学校まで麗華と共に送り、帰りはヒロや戸塚が亜姫を家まで連れ帰る。それ以外は臨機応変に対応する。そう決めた。
 
「ごめんね、ヒロ。迷惑かけちゃうけど」
「そんなん全然いいけどさ、お前はそれで大丈夫なのかよ?」
 ヒロの気遣いに、亜姫は顔を綻ばせた。ヒロや戸塚への信頼は厚い。和泉でなくとも安心感はある。
「うん、大丈夫。最近動ける範囲も増えてきてるし、いいリハビリになるかもしれない。これは好機だと思って頑張るよ」
「いや、むしろあんまり頑張らねーでくれ。お前が張り切ると碌な事にならないって決まってんだ」
 亜姫がやらかしてきたことを思い出したのか、ヒロがげんなりする。亜姫は「なんで! 酷い」とむくれた。
 
 笑いながらも心配そうな和泉に、亜姫は最大限の笑顔を返す。
「大丈夫だよ。お互い、頑張ろうね」
 そう言うと、「まず第一歩!」と、一人で廊下の洗面所へ向かった。
 
 その後亜姫を送り届けたヒロは、用事を済ませていた戸塚を伴い再び和泉の元へ戻った。
 
 
 
 ◇
「いいのかよ、あれで」
「いいわけねーだろ。最悪だ」
 和泉とヒロの鬱々とした様子に、戸塚が片眉を上げる。
「なんだよ、麗華がいても止められなかったの?」
 
 今、話をしているのは香田のことだ。
 和泉の世話をさせろとさんざん喚き、言質げんちを取り付けたとわかった途端、機嫌良く帰っていった女。
 
「俺は許可してねーんだけどな……」 
 和泉が溜息をつく。

「戸塚、そっちはどうだった?」
 ヒロが問うと、戸塚はお手上げと言わんばかりに肩をすくめる。

「前の学校では、何かを欲しがるというより自己中で我儘三昧なトラブルメーカーって感じだったみたい。話をしてても自分に都合よく解釈しちゃうから、話が違うってことが頻繁に起こるって。
 ただ誰かを貶める気はなく……本人は一貫して、相手の為だとか親切心から起こした行動だと主張するらしい。
 悪意があるのか無いのか分かりにくいから、タチが悪いな。まぁ、かなり偏った性格をしてることは間違いないね」 
 
 しばし考え込んだヒロが、和泉に尋ねる。
「お前、階段のあれはどう思った?」

 和泉は返事を返さなかった。だが、ヒロは意味有りげな視線を投げる。

「亜姫への執着が異常すぎじゃない? すごく懐いてるといえば聞こえはいいけど、引き止めるだけであんなに必死になるか?
 あの勢いで引っ張ったら落ちるってわかるだろ、普通は」
 お前もわかってんだろ? と、ヒロは黙り込む和泉を見る。
 
「ヒロは、香田が巧妙に悪意を隠して亜姫に近づいてると疑ってんの? 亜姫を害そうと何か企んでると? だからあの時も、階段で待たせずに先を促した?」
 戸塚がそう聞くと、ヒロはそうだと頷いた。
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