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高3
新たな出会い(3)
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なんだろう、これ……
「亜姫? どうした?」
和泉の心配そうな声に、亜姫は我に返る。
何故だかわからないが、考えていることを知られたくなかった。なので慌てて取り繕う。
「ごめん、ボーッとしちゃった! わ、私と春菜ちゃんが似てる……? そうかなぁ、春菜ちゃんの方がしっかりしてると思うけどなぁ?」
笑いながらそう言うと、ヒロがすかさずツッコんでくる。
「確かに春菜のほうが姉さんっぽいな。中身も、見た目も」
にやりと笑うヒロに言い返すと、単純な亜姫はまたその感情を忘れていた。
◇
香田達との関わりは続いていたが、話に聞くようなトラブルなどはなく、日々和やかな時間が過ぎていった。
亜姫と話す中で、二人はヒロ達とも自然に打ち解けていく。時に野口を交えたりして、賑やかに過ごす時間は少しずつ増えていく。
プライベートで誘われることもあった。流石に受験期でもあったし、亜姫の事情も鑑みて断るようにしていたが。
その中で、亜姫は時々おかしな気分になった。
香田も春菜もいい子だ。近づく子は大抵和泉と関わりたがり不快を蒔き散らしがちだが、彼女達にはそれがない。その証拠に、和泉は彼女達が近づいても嫌がらず、いつでもただ穏やかに亜姫の隣にいる。
それは嬉しいことでもある。の、だが。
いつもならあからさまに避ける和泉が、いつの間にか話しかけられると返事を返すようになった。時折笑みを見せることすらある。
香田に至っては人との距離が近すぎるのでは? と思うことがあり、それは和泉に対しても同じだ。だが、和泉がそこまで嫌がっていないように見える。
亜姫は、何故かそれが気になって仕方がなかった。
更に。
春菜と関わる時に、笑みを浮かべる回数が多い気がする。
それに気づくと、亜姫の胸が例のごとくおかしくなった。
なんだろう、このモヤモヤ………。ずっと前からある……。
嫌なものだとはわかっている。だけど、その正体がわからないし、何故だか知りたくないと思ってしまう。
そんな気持ちから、麗華や沙世莉にも相談できずにいた。
いや、本当は知り始めているのだ。認めたくないだけで。
それが自分の想像通りのモノだとしたら……この先和泉と過ごすことは出来なくなってしまう。
だから、知りたくない。
亜姫は、考えないように考えないように……じわじわと成長するソレを握り潰した。
「亜姫? どうした?」
和泉の心配そうな声に、亜姫は我に返る。
何故だかわからないが、考えていることを知られたくなかった。なので慌てて取り繕う。
「ごめん、ボーッとしちゃった! わ、私と春菜ちゃんが似てる……? そうかなぁ、春菜ちゃんの方がしっかりしてると思うけどなぁ?」
笑いながらそう言うと、ヒロがすかさずツッコんでくる。
「確かに春菜のほうが姉さんっぽいな。中身も、見た目も」
にやりと笑うヒロに言い返すと、単純な亜姫はまたその感情を忘れていた。
◇
香田達との関わりは続いていたが、話に聞くようなトラブルなどはなく、日々和やかな時間が過ぎていった。
亜姫と話す中で、二人はヒロ達とも自然に打ち解けていく。時に野口を交えたりして、賑やかに過ごす時間は少しずつ増えていく。
プライベートで誘われることもあった。流石に受験期でもあったし、亜姫の事情も鑑みて断るようにしていたが。
その中で、亜姫は時々おかしな気分になった。
香田も春菜もいい子だ。近づく子は大抵和泉と関わりたがり不快を蒔き散らしがちだが、彼女達にはそれがない。その証拠に、和泉は彼女達が近づいても嫌がらず、いつでもただ穏やかに亜姫の隣にいる。
それは嬉しいことでもある。の、だが。
いつもならあからさまに避ける和泉が、いつの間にか話しかけられると返事を返すようになった。時折笑みを見せることすらある。
香田に至っては人との距離が近すぎるのでは? と思うことがあり、それは和泉に対しても同じだ。だが、和泉がそこまで嫌がっていないように見える。
亜姫は、何故かそれが気になって仕方がなかった。
更に。
春菜と関わる時に、笑みを浮かべる回数が多い気がする。
それに気づくと、亜姫の胸が例のごとくおかしくなった。
なんだろう、このモヤモヤ………。ずっと前からある……。
嫌なものだとはわかっている。だけど、その正体がわからないし、何故だか知りたくないと思ってしまう。
そんな気持ちから、麗華や沙世莉にも相談できずにいた。
いや、本当は知り始めているのだ。認めたくないだけで。
それが自分の想像通りのモノだとしたら……この先和泉と過ごすことは出来なくなってしまう。
だから、知りたくない。
亜姫は、考えないように考えないように……じわじわと成長するソレを握り潰した。
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