【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

文字の大きさ
上 下
289 / 364
高3

新たな出会い(2)

しおりを挟む
 それからも話をする機会はあったが、楽しげな亜姫の隣に立つ和泉は相変わらずだった。
 香田は和泉にも物怖じすることなく話しかける。だが彼は基本的に無視していて、たまに返事を一言返す程度だ。
 春菜も、亜姫と話す中で和泉達へ声をかけることはあったが、あくまでも亜姫に懐いて会話を楽しんでいる様子。ヒロと亜姫の掛け合いを見て、楽しげに笑うことが多かった。
 
 そんな中でのある昼休み。戸塚が、そういえばと言い出した。
「香田の話、少し聞いてきた。まぁ……基本は俺らが見る姿と変わらない。
 ただ、相手を慮るより自己主張のほうが強いみたい。悪意を持ったり意図的に相手を傷つけようとしたりする子じゃないんだけど、結果的にそうなっちゃうことが多いらしい」
 
 どういうこと? と沙世莉が首を傾げる。
 
「香田ってかなり裕福な家の一人娘なんだって。祖父母や両親からすごく可愛がられてて、欲しいものは何でも買ってもらえるような家。性格も素直だし、人に嫌がらせしたり見下したりもしない。いい子ではあるんだけど。
 ただ、欲しい物を手にすることに迷いがないし、望めば当然手に入ると思ってる。でも、ただ甘やかされたわけじゃなくて、欲しい物があるなら手に入るように考えろって言われて育ってきたんだと。
 それが悪い方に働いてると言うか……欲したものが誰のものであろうが何であろうが、欲しいと思えば手に入れる努力をしちゃうらしい。裏工作とかせず馬鹿正直に突進して、要は横取りなんだけど、本人に悪気はないし相手を貶めた自覚もない。そこで揉め事になっても、自身の気持ちをストレートに伝えるだけで相手の気持ちを受け止めたり考えたりしないから、結果的に相手を馬鹿にしてるように見えちゃう。
 責められたとしても「じゃあ、あなたも取られないように努力すればよかったのに。私はちゃんと宣言したし堂々とやったよ?」って平然と言っちゃうらしい。
 欲しい物に限らず常にそういう感じだから、男女問わずトラブルが多いんだって」
 
 その話に、全員が意外そうな顔をする。
「そんな風には見えなかったわね。これから出てくるのかしら? そういう一面が」
 麗華が考えこむように呟いた。
 
 今、香田が執着しているのは亜姫。だが、和泉との関わりも気にしたほうがいいかもしれない。
 
 麗華がそんなことを考えていると、また戸塚が言った。
「前の学校もそれで揉めたらしくて、半年前に転校してきたんだってさ。で、こっちでも結局友達が離れちゃって、今は春菜しかいないんだと」
 
 ヒロが溜息をつきながら言う。
「そんなことばっかしてたら、確かに人は離れていくよな。しかし、学習しないもんかね? 悪い子じゃないだけにもったいねーよな」
「人を大事にする気持ちが芽生えないと変わらないんじゃない? 悪意がないだけにタチが悪くなっちゃうし、損しちゃうよね」
 沙世莉の言葉に戸塚が頷く。
「春菜がそこを気にしてるらしい。見捨てられないのか、ただ香田を好きなのかはわかんないけど。
 とにかく何かある度に叱ったりしながらずっと一緒にいるんだってさ。春菜は姉さん気質で、元々面倒見が良いらしい」
「見た目がいいだけじゃなくて、性格まで良くて面倒見もいいって……そりゃあモテるよな。
 でも、春菜のお人好し過ぎるところはやっぱり亜姫に似てる。お前ら、似た者同士かも」
 
 ヒロの言葉に、皆が頷いた。
 
 亜姫はよくわからないまま首を傾げるが、ふと隣を見ると。
 一度も会話に参加していなかった和泉が、皆と一緒に笑っていた。自分にしか見せない、柔らかな笑顔で。
 
 亜姫の胸が、また苦しくなった。
 
 何故だろう? またあの症状だ。まだ体調が悪いのだろうか。
 
 胸の辺りがモヤモヤする。
 なんで、今あの顔を見せたの……?
 誰に……? 春菜ちゃんに……?
 
 亜姫の中で、知らない何かが芽を出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

青春残酷物語~鬼コーチと秘密の「****」~

厄色亭・至宙
青春
バレーボールに打ち込む女子高生の森真由美。 しかし怪我で状況は一変して退学の危機に。 そこで手を差し伸べたのが鬼コーチの斎藤俊だった。 しかし彼にはある秘めた魂胆があった… 真由美の清純な身体に斎藤の魔の手が?…

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

Cutie Skip ★

月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。 自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。 高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。 学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。 どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。 一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。 こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。 表紙:むにさん

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...