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高3
進路と麗華(5)
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「やっと進路が決まったわね」
「うん。本当に受験出来るかとか、受かるかとか……考えることは沢山あるけど。
和泉は頭がいいのにレベルを下げて受けさせちゃうから、それは申し訳ないと思ってるんだけど……」
亜姫は気にしているが、麗華は鼻で笑った。
「和泉が自分で決めたんでしょ? なら亜姫が気にすることはないし、むしろ気にしちゃいけないんじゃないの?」
思い切りのいい麗華の言葉に、亜姫はそうだねと頷く。
麗華は、亜姫が迷うといつも道標になってくれる。だがこの先、麗華といられる時間はどれだけあるのだろうか。
「ねぇ、麗華? 志望校は決めた?」
「んー、まだ最終候補は決めかねてる。受けるところは絞ったけどね」
麗華は、調べ物をしながら淡々と答える。
その姿は、やはり元気なく見える。亜姫は麗華にギュッと抱きついた。
「亜姫? どうしたの急に」
麗華が驚きつつ、亜姫の頭を優しく撫でる。
亜姫にとって、麗華はもはや家族だ。姉のような存在で、でも自分の一部のようでもあり。
普段は頼ることが多いけれど、でも麗華の事を一番知っているのも自分だと思っていた。
なのに、最近麗華のことが分からない。
寂しさと切なさと哀しさと……色んな感情が亜姫の中にぐるぐると渦巻き、いっそう強く麗華の体に抱きついた。
いつものように小さく笑いながら甘やかしてくれる麗華。その声を聞いていたら、思わず本音が漏れた。
「同じ学校、受けようよ」
麗華が動きを止めた。
亜姫は体を離し、麗華を真っ直ぐ見つめて再度言う。
「同じ学校、行けないかな? 麗華と、まだ一緒に過ごしたい」
麗華は動きを止めたままだ。それが否定のように感じられて、亜姫は想いを止められなくなってしまった。
「経済学部も教育学部もあるところ、探せば沢山あるよ。麗華がまだ決めてないなら、同じところでもよくない? それなら今まで通り過ごせるよ?
そうしたらまた一緒に通って、お昼食べたり同じサークルに入ったり、出来るし……。
……っ、て言っても……私、本当に受けられるかどうかも、わからないんだった……。
麗華とも学力差が出ちゃってるのに、ごめん……こんなこと言ったら、麗華を困らせるだけなのに……ごめんなさい、今の忘れて……」
話しているうちに段々冷静になってきて、亜姫は尻すぼみになっていく。
言わないようにしようと思っていたのに……と、自分のしたことが情けなくなってどんどん萎んでしまう。
そこにフフッと艷やかな笑い声が聞こえて、亜姫は俯いた顔を上げた。
すると、微笑む麗華と視線がぶつかる。
「あの時みたいね」
そう言って、麗華はまた艷やかに笑った。
「うん。本当に受験出来るかとか、受かるかとか……考えることは沢山あるけど。
和泉は頭がいいのにレベルを下げて受けさせちゃうから、それは申し訳ないと思ってるんだけど……」
亜姫は気にしているが、麗華は鼻で笑った。
「和泉が自分で決めたんでしょ? なら亜姫が気にすることはないし、むしろ気にしちゃいけないんじゃないの?」
思い切りのいい麗華の言葉に、亜姫はそうだねと頷く。
麗華は、亜姫が迷うといつも道標になってくれる。だがこの先、麗華といられる時間はどれだけあるのだろうか。
「ねぇ、麗華? 志望校は決めた?」
「んー、まだ最終候補は決めかねてる。受けるところは絞ったけどね」
麗華は、調べ物をしながら淡々と答える。
その姿は、やはり元気なく見える。亜姫は麗華にギュッと抱きついた。
「亜姫? どうしたの急に」
麗華が驚きつつ、亜姫の頭を優しく撫でる。
亜姫にとって、麗華はもはや家族だ。姉のような存在で、でも自分の一部のようでもあり。
普段は頼ることが多いけれど、でも麗華の事を一番知っているのも自分だと思っていた。
なのに、最近麗華のことが分からない。
寂しさと切なさと哀しさと……色んな感情が亜姫の中にぐるぐると渦巻き、いっそう強く麗華の体に抱きついた。
いつものように小さく笑いながら甘やかしてくれる麗華。その声を聞いていたら、思わず本音が漏れた。
「同じ学校、受けようよ」
麗華が動きを止めた。
亜姫は体を離し、麗華を真っ直ぐ見つめて再度言う。
「同じ学校、行けないかな? 麗華と、まだ一緒に過ごしたい」
麗華は動きを止めたままだ。それが否定のように感じられて、亜姫は想いを止められなくなってしまった。
「経済学部も教育学部もあるところ、探せば沢山あるよ。麗華がまだ決めてないなら、同じところでもよくない? それなら今まで通り過ごせるよ?
そうしたらまた一緒に通って、お昼食べたり同じサークルに入ったり、出来るし……。
……っ、て言っても……私、本当に受けられるかどうかも、わからないんだった……。
麗華とも学力差が出ちゃってるのに、ごめん……こんなこと言ったら、麗華を困らせるだけなのに……ごめんなさい、今の忘れて……」
話しているうちに段々冷静になってきて、亜姫は尻すぼみになっていく。
言わないようにしようと思っていたのに……と、自分のしたことが情けなくなってどんどん萎んでしまう。
そこにフフッと艷やかな笑い声が聞こえて、亜姫は俯いた顔を上げた。
すると、微笑む麗華と視線がぶつかる。
「あの時みたいね」
そう言って、麗華はまた艷やかに笑った。
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