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高3
手伝いの受難と幸福(3)
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彼女は、言葉通り『カイをえらく気に入って』いたようだ。
とにかく暇さえあれば和泉に話しかけていた。和泉は事ある毎に呼ばれ、寄りかかられ、纏わりつかれ……。
彼女は彼の都合などお構い無しだった。そのせいで和泉は任された仕事をこなせなくなり、次第に彼女の我儘に付き合うことが新たな仕事となっていった。
スタッフ達は想定していたのか、二人の様子に苦笑するだけだ。去年も同じ顔ぶれで仕事していたようなので、見慣れた光景だったのかもしれない。
当の和泉は例の無表情で冷ややかな対応をしていたけれど、彼女は全く気にしていないようだ。
何より、和泉をそばに置いておけばスムーズに撮影が進む。なので、いつの間にか彼女の隣が和泉の居場所になっていた。
「あの……飲み物です。どうぞ」
亜姫は休憩中の彼女にカップを差し出した。机に置いて顔を上げると、目の前には豊満すぎる胸。
今回の撮影は、寝室のベッドを模したセットの上で行われる。リングをつけた男性の指とリップをつけた女性の口元を主張しながら、ときめきを誘う映像で商品を魅せる趣向らしい。
胸元までの素肌を見せるシーンがあるらしく、彼女は惜しげもなく胸の谷間を曝け出していた。
あっ……こんな近くに、プルプルおっぱい!
うわぁ、肌もモチモチだぁ。柔らかそう……!!
亜姫は理想的なおっぱいを目の前にして、高まる気持ちを抑えきれない。失礼だとわかってはいたけれど、つい動きを止めて食い入るように見てしまった。
その時フッと軽い音がして、亜姫は我に返る。
慌てて姿勢を戻すと、少し顔を背けた和泉が目に入った。その表情がほんの少し緩んでいる。
あの顔は、プルプルおっぱいに我を忘れた亜姫を笑ったに違いない。そして、それを隠そうとしている。
そう気付いた亜姫は、和泉を軽く睨む。
「あなた誰? ここは子供の来る場所じゃないんだけど」
唐突な声に顔を向けると、不躾にこちらを眺める彼女と目が合った。亜姫がどう返事をすべきか迷っていると。
「子供じゃない。俺と同い年」
彼女の横から、感情を排除したつまらなそうな声がした。それを聞き、亜姫は慌てて会釈する。
すると、彼女は亜姫から視線を逸らさず、
「カイと同じ年? 嘘でしょ、中学生じゃないの?」
とバカにしたように鼻で笑った。そして見下すような視線を向けながら、見せつけるように和泉へしなだれかかる。
豊満な胸の谷間が更にグッと寄り、柔らかそうな乳房が和泉の腕をすり抜けて体に押し付けられる。その様子は、まるで彼女が和泉に抱き寄せられたかのようだ。
その張りのあるおっぱいに見惚れながら、亜姫はまたもや急激な吐き気に襲われた。胸がギュッと締め付けられる感覚に思わず俯き、亜姫は胸元を抑える。
そこでガタン! と大きな音。
和泉が勢いよく椅子から立ち上がったのだ。
彼は焦りを見せながら亜姫の腕を摑むと、里佳子に何か言付けてそのまま部屋から連れ出した。
その間、後ろで喚く彼女の事は一度も振り返らなかった。
とにかく暇さえあれば和泉に話しかけていた。和泉は事ある毎に呼ばれ、寄りかかられ、纏わりつかれ……。
彼女は彼の都合などお構い無しだった。そのせいで和泉は任された仕事をこなせなくなり、次第に彼女の我儘に付き合うことが新たな仕事となっていった。
スタッフ達は想定していたのか、二人の様子に苦笑するだけだ。去年も同じ顔ぶれで仕事していたようなので、見慣れた光景だったのかもしれない。
当の和泉は例の無表情で冷ややかな対応をしていたけれど、彼女は全く気にしていないようだ。
何より、和泉をそばに置いておけばスムーズに撮影が進む。なので、いつの間にか彼女の隣が和泉の居場所になっていた。
「あの……飲み物です。どうぞ」
亜姫は休憩中の彼女にカップを差し出した。机に置いて顔を上げると、目の前には豊満すぎる胸。
今回の撮影は、寝室のベッドを模したセットの上で行われる。リングをつけた男性の指とリップをつけた女性の口元を主張しながら、ときめきを誘う映像で商品を魅せる趣向らしい。
胸元までの素肌を見せるシーンがあるらしく、彼女は惜しげもなく胸の谷間を曝け出していた。
あっ……こんな近くに、プルプルおっぱい!
うわぁ、肌もモチモチだぁ。柔らかそう……!!
亜姫は理想的なおっぱいを目の前にして、高まる気持ちを抑えきれない。失礼だとわかってはいたけれど、つい動きを止めて食い入るように見てしまった。
その時フッと軽い音がして、亜姫は我に返る。
慌てて姿勢を戻すと、少し顔を背けた和泉が目に入った。その表情がほんの少し緩んでいる。
あの顔は、プルプルおっぱいに我を忘れた亜姫を笑ったに違いない。そして、それを隠そうとしている。
そう気付いた亜姫は、和泉を軽く睨む。
「あなた誰? ここは子供の来る場所じゃないんだけど」
唐突な声に顔を向けると、不躾にこちらを眺める彼女と目が合った。亜姫がどう返事をすべきか迷っていると。
「子供じゃない。俺と同い年」
彼女の横から、感情を排除したつまらなそうな声がした。それを聞き、亜姫は慌てて会釈する。
すると、彼女は亜姫から視線を逸らさず、
「カイと同じ年? 嘘でしょ、中学生じゃないの?」
とバカにしたように鼻で笑った。そして見下すような視線を向けながら、見せつけるように和泉へしなだれかかる。
豊満な胸の谷間が更にグッと寄り、柔らかそうな乳房が和泉の腕をすり抜けて体に押し付けられる。その様子は、まるで彼女が和泉に抱き寄せられたかのようだ。
その張りのあるおっぱいに見惚れながら、亜姫はまたもや急激な吐き気に襲われた。胸がギュッと締め付けられる感覚に思わず俯き、亜姫は胸元を抑える。
そこでガタン! と大きな音。
和泉が勢いよく椅子から立ち上がったのだ。
彼は焦りを見せながら亜姫の腕を摑むと、里佳子に何か言付けてそのまま部屋から連れ出した。
その間、後ろで喚く彼女の事は一度も振り返らなかった。
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