【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

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高3

八木橋くんとカナデさん(22)

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「いや、本当に。だって普通に可愛いじゃん。いつも黙って大人しそうにしてたけどさ、今見てたらすごくよく笑うし、笑った顔もめちゃくちゃ可愛いし。
 むしろ亜姫なんかよりよっぽど女らしく見えるしさ。意外性が逆にそそられ……」
「戸塚、言い方!」 

 亜姫が抗議の声を上げると、戸塚は悪いと笑う。だが、再び八木橋を見つめて言った。 

「うん、やっぱり普通に可愛い。なんなら……試してみる? お前なら体が男でも……」
「戸塚。最低」
 
 麗華のドスがきいた声に、戸塚はようやく口を閉じた。が、次の瞬間、目を見開いて固まる。
 
 そこに、真っ赤な顔で動揺した八木橋の姿があったから。
 
「何言っ、馬鹿じゃないの……!」
「ちょっと、ヤバ……本当に可愛いんだけど。ちょっと、一回抱かせ」
「無理だから! か、体! じ、自分のじゃないみたいで見られたくない、んだってば……っ! そ、んなの考えたこともなかっ……」
 
 涙目で動揺するその姿は、誰が見ても初な可愛い女の子で。
 ヒロまでもが「うわ……俺も、イケるかもしれない」と呟く。
 
 すると、沙世莉が八木橋を引き寄せて戸塚の視線から庇った。
「やめなさいって、デリケートな話にいきなり踏み込むんじゃないの!」
 
 「そりゃ残念」と呟く戸塚から引き離し、亜姫達はそのまま女子トークに突入した。
 
「カナちゃんて、本当は女性用のお風呂とかに入りたいの?」
「うん。男子用は、けっこうキツイ。今はしょうがないから我慢してそっちを使ってるけど……」
「修学旅行の時はどうしてたの?」
「理由つけて、部屋のシャワーで済ませた」
「一緒に入れたら楽しいのにね、貸切風呂とか」
 
 と、そこに「だめに決まってんだろ」と低い声。
 
 亜姫が振り向くと、何やら不機嫌そうな和泉の顔があった。

「駄目だよ、カナデは男だろ」
「カナちゃんは女の子だよ?」
 亜姫が不思議そうに答える。服を着ている八木橋は確かに女に見えるが。
 
 和泉は溜息をついて亜姫を見る。
「体は男だろ」
「じゃー、もし体が女の子になったら一緒に」
「駄目」
「なんで?」
「そりゃ駄目だろ」
「麗華達とお風呂入るのと一緒だよ?」
「違うだろ」
 
 押し問答を続けた挙げ句、和泉は声を荒らげた。
「とにかく! 今のカナデじゃ駄目! 股間が平らになってから言え」
「そういう事をデカイ声で言わないでくれる? 最低」

 冷静さを取り戻した八木橋が、和泉に冷たい視線を投げた。
 
「じゃあ、カナちゃんが完全に女の子になったらいいんだよね?」
「っ、それは……いや、駄目だろ、カナデは女を好きになるかもしれねーんだし……女同士でってのも、あるわけで」
「あっ! 私、そういう人の話をこの間教えてもらったよ!こう……2人で触れ合える道具とか……」
 亜姫が身振りを付けながらテンション高く言う口を、和泉は慌てて塞いだ。
「バカ、誰から聞いた! そんなこと気安く口にすんな!」

 すると麗華が呆れた様子で吐き捨てる。
「デリケートのかけらもない発言したくせに何言ってんだか」
「ほんと、和泉はまず自分の口を塞ぐべき」

 麗華達が容赦なくツッコむ横で、亜姫は八木橋へ嬉しそうに話しかける。

「カナちゃん、いつか一緒に温泉入ろうね!」
「駄目だって言ってんだろ!」
「だからなんで?」
「いや、だから……あれ? 女ならいいのか? いや、でも」

 和泉はだんだん混乱してきた。頭の中がハテナマークで埋まっていく。
「カナデが混じったら話がややこしくなってきたじゃねーか……なにがなんだか、もー……」 
 項垂れる和泉を見て皆が笑った。
 
  
「僕、もし手術するとしたら胸は大きめに作ってもらいたいな」
「えー、それいいな! 私も一緒にやりたい」
「駄目だって! お前のは今のままでいい! デカくすんなら俺がやる。
 とにかく! お前に手を出す奴は男でも女でも駄目! カナデ、亜姫のおっぱい揉んだりすんなよ! それは俺の! いい、な……」 

 和泉は感情のまま口走ってしまったが、真っ赤な顔で睨みつける亜姫を見て「しまった」という顔をする。 

「和泉のじゃないからっ!……バカ、変態っ!」
 フンッと鼻息荒く背を向けた亜姫に和泉が固まっていると、横でヒロ達が笑った。

「お前、ほんっとバカだな。言ってることが滅茶苦茶だわ」 
「そのうち、本当に亜姫に嫌われるよ? 聞いてる方が恥ずかしい」
 追い打ちをかけられて、和泉は机に突っ伏した。
 
「なんなんだよ、もう……わけ分かんねぇ。
 カナデ、早く性別決めてくれ……俺が混乱する」
 
 皆が笑う中、和泉は暫く突っ伏したままだった。
 
 
 この日以降、戸塚は八木橋のアトリエに度々顔を出すようになる。
 八木橋の状況から何かが進展することはなかったが、単純に趣味が合うという理由でしばしば出かける仲になった。
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