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高3
祭り(3)
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会場は想像よりも大きかった。まだ昼間だからか大人よりも小さな子が沢山いて、子ども達があちこち走り回るその雰囲気は純粋に楽しめる。
そこから少し外れた、静かな場所に敷かれたシート。そこに彼らはいた。
麻美と早川颯太。
そして別の学校に通う、健吾、圭介、隆。
「……はじめまして」
緊張で声が上擦ったが、麻美と颯太のおかげもあって、亜姫はすんなり溶け込めた。
想像に反して、彼らとの時間は快適だった。
全員がすごく自然体だ。人に気負いや不快を与える要素が一切なく、それぞれがありのままで互いを受け入れ、それぞれの個性がうまく調和しあっている。
それは、新たに混じった亜姫に対しても同じで。
気がつけば、さっき初めて会ったことなど忘れてしまいそうなぐらいリラックスして過ごせていた。和泉が隣にいて、彼らとの距離をうまく保ってくれたことも大きかったかもしれない
不安で潰れそうになっていた亜姫から、ようやく体の強張りが抜けた。
「な? 大丈夫だって言っただろ?」
和泉はそう言って笑った。
一度、屋台を覗きに行くか。誰からともなくそんな声が出て、皆でブラブラと出かける。
和泉達の地元だけあって、歩けばあちこちで知り合いに会う。彼らが交わす挨拶を聞きながら歩いていると、
「和泉ー!」
一際大きな声で和泉を呼ぶ女性の声。
麻美が「なんで……」と呟いた声に疑問を感じる暇もなく、その声の主はやって来た。
「和泉! 元気?」
皆の纏う空気が微妙に変化したのを感じつつ、亜姫は黙っていた。チラリと見上げてみれば、和泉はいつもと変わらない。
爽やかな笑顔を向けた彼女は、前にいる健吾達を押しのけるようにして和泉の前へ来た。
そして和泉に話しかけながら腕に触れようとして、その反対側へ立つ亜姫に視線を固定する。
ドキン。
亜姫の心臓が、大きく跳ねた。
和泉と付き合う中で、人から妬まれたり酷いことを言われたり……いわゆる悪意を向けられる事は多々あった。
でも。
それとは全然違う……もっと強烈な何かを彼女の視線から感じた。
背中がスウッと冷えていく。
その理由は和泉のそばにいることだと察知して、亜姫は無意識に体を離そうとする。
と、力強い腕にグイッと引き戻された。亜姫が見上げると、優しい瞳の和泉と目が合う。
「ここにいろ」と言われているような気がして、余計な力が抜けた。
その時、彼女に掴まれそうな腕を和泉が遠ざけた。
そこに小さな疑問を持った。麻美達といる時には見られなかった仕草だ。
何だろう? 違和感が……。
「ねぇ。その子、誰?」
唐突な問いに、亜姫は思考を中断して彼女を見る。
先ほど見た視線とは全然違う、爽やかな笑顔を向けてくる彼女と目が合った。そこにも、また違和感を感じた。
「彼女」
和泉はそう言いながら、亜姫を更に抱き寄せる。
「へぇ! 可愛い子。名前は?」
親しげに近づいてきた彼女と互いに自己紹介をする。
「私も和泉と同じ地元なの。これからよろしくね!」
そう言うと、彼女はまた後でね! と爽やかに去って行った。最後まで、他の人とは一切関わることなく。
その後ろ姿を見た麻美が、不快を隠さず言った。
「亜姫。祥子とは仲良くしなくていいからね」
麻美は好き嫌いが激しいと言っていたから、彼女とは仲が悪いのだろうか?
そう思った亜姫は曖昧に頷き、移動を再開した。
自分の中にある、違和感全てに蓋をして。
そこから少し外れた、静かな場所に敷かれたシート。そこに彼らはいた。
麻美と早川颯太。
そして別の学校に通う、健吾、圭介、隆。
「……はじめまして」
緊張で声が上擦ったが、麻美と颯太のおかげもあって、亜姫はすんなり溶け込めた。
想像に反して、彼らとの時間は快適だった。
全員がすごく自然体だ。人に気負いや不快を与える要素が一切なく、それぞれがありのままで互いを受け入れ、それぞれの個性がうまく調和しあっている。
それは、新たに混じった亜姫に対しても同じで。
気がつけば、さっき初めて会ったことなど忘れてしまいそうなぐらいリラックスして過ごせていた。和泉が隣にいて、彼らとの距離をうまく保ってくれたことも大きかったかもしれない
不安で潰れそうになっていた亜姫から、ようやく体の強張りが抜けた。
「な? 大丈夫だって言っただろ?」
和泉はそう言って笑った。
一度、屋台を覗きに行くか。誰からともなくそんな声が出て、皆でブラブラと出かける。
和泉達の地元だけあって、歩けばあちこちで知り合いに会う。彼らが交わす挨拶を聞きながら歩いていると、
「和泉ー!」
一際大きな声で和泉を呼ぶ女性の声。
麻美が「なんで……」と呟いた声に疑問を感じる暇もなく、その声の主はやって来た。
「和泉! 元気?」
皆の纏う空気が微妙に変化したのを感じつつ、亜姫は黙っていた。チラリと見上げてみれば、和泉はいつもと変わらない。
爽やかな笑顔を向けた彼女は、前にいる健吾達を押しのけるようにして和泉の前へ来た。
そして和泉に話しかけながら腕に触れようとして、その反対側へ立つ亜姫に視線を固定する。
ドキン。
亜姫の心臓が、大きく跳ねた。
和泉と付き合う中で、人から妬まれたり酷いことを言われたり……いわゆる悪意を向けられる事は多々あった。
でも。
それとは全然違う……もっと強烈な何かを彼女の視線から感じた。
背中がスウッと冷えていく。
その理由は和泉のそばにいることだと察知して、亜姫は無意識に体を離そうとする。
と、力強い腕にグイッと引き戻された。亜姫が見上げると、優しい瞳の和泉と目が合う。
「ここにいろ」と言われているような気がして、余計な力が抜けた。
その時、彼女に掴まれそうな腕を和泉が遠ざけた。
そこに小さな疑問を持った。麻美達といる時には見られなかった仕草だ。
何だろう? 違和感が……。
「ねぇ。その子、誰?」
唐突な問いに、亜姫は思考を中断して彼女を見る。
先ほど見た視線とは全然違う、爽やかな笑顔を向けてくる彼女と目が合った。そこにも、また違和感を感じた。
「彼女」
和泉はそう言いながら、亜姫を更に抱き寄せる。
「へぇ! 可愛い子。名前は?」
親しげに近づいてきた彼女と互いに自己紹介をする。
「私も和泉と同じ地元なの。これからよろしくね!」
そう言うと、彼女はまた後でね! と爽やかに去って行った。最後まで、他の人とは一切関わることなく。
その後ろ姿を見た麻美が、不快を隠さず言った。
「亜姫。祥子とは仲良くしなくていいからね」
麻美は好き嫌いが激しいと言っていたから、彼女とは仲が悪いのだろうか?
そう思った亜姫は曖昧に頷き、移動を再開した。
自分の中にある、違和感全てに蓋をして。
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