【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

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高3

プールに(6)

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「何だそれ……」
「誰も聞いたことないの? その話」
 和泉が昼間あった話をすると、全員が顔を見合わせ首を振る。
 
 熊澤も初めて聞いたと言う。
「俺は卒業してるし部活で忙しかったから、知らなくてもおかしくないけど……」
「俺らが誰一人知らないなんて、流石におかしいだろ。第一、琴音が何も言ってこない」
 
 琴音の情報網は多岐にわたる。本人の趣味でもあるが将来この手の職業につきたいらしく、その収集力は舌を巻くレベルだ。
 それが亜姫に絡む内容ならば麗華や沙世莉の耳にはすぐ入れてくるので、つまり琴音も知らないということになる。
 
「嫌な感じ……。二人の噂なのに、亜姫にだけ敵意を向けてるように感じない? まるで、和泉に近づきたい子達がそれを利用できるように仕向けてるみたい」
「和泉を好きな奴が、亜姫を排除しようとしてんのかな?」
「それだと、多数の女を充てがうように仕向けんのはおかしくない? 和泉に他の女ができたら結局一緒だよ」
「確かに」
「亜姫さえいなきゃ自分が選ばれるって、よっぽど自信があるとか?」
「だけど、特定の女がうろついたりはしてないだろ。姿表さねーのに選ばれるとは、流石に思わないんじゃない?」
「好きがこじれて、二人が幸せそうなのが許せないとか」
「あー、恨みのセンか……」
「でも、それこそおかしくない? そもそも和泉は誰かに期待持たせるようなことは一切してない。
 二人が誰かを傷つけたり奪い取ったりして恨みを買うようなこともない。
 どちらかに絞った噂ならわかるけど、亜姫にだけ被害が大きくなりそうな噂を和泉のと一緒に広めるのは……やっぱり腑に落ちない」
「亜姫を好きな男の仕業とか?」
「だとしたら、ヤられそうな状況を作り出すのはやっぱりおかしいだろ。その場合、石橋みたいな行動を取る方に動くんじゃね?」
 
 何を考えても、違和感と得体のしれない気持ち悪さだけが残ってしまう。
 
 すると、ずっと黙って聞いていた麗華がポツリと呟いた。
「亜姫への悪意、じゃないかな」
 
 熊澤がその理由を尋ねると。 
「その噂でダメージ食らうのは、亜姫だけだと思わない?
 和泉の噂なんて昔から腐るほどあって、本人が気にしたことなんてない。何を言われても和泉がスルーすることは、言わずとも誰もがわかってるはず。
 だから今までだって、噂が広まることはあっても隠されることはなかった。何故なら、その必要がないから。
 実際、私達だって当たり前のように和泉のことは見聞きしてきたじゃない。
 なのに今回に関しては、それだけ広まってるにも関わらず私達の耳に一切届かない。そうなるように意図的に操作されてるとしか思えない。
 もしくは……琴音が入手するより早く、一気に拡散された」
 
 琴音の情報収集はかなり早い。それより拡散の方が早いとしたら。
 それは最早、普通ではないということだ。
 
 それを知る彼らは、嫌なものがゾワゾワと背中を這い上がるように感じた。
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