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高3
プールに(5)
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「あー、気持ちいい………」
大きな浮き輪の中に囲われ、和泉にかかえられて浮いている亜姫は、プールの中で流れに身を任せていた。
「傷、綺麗に消えたな。良かった」
和泉が亜姫の背中に優しく触れる。
「そう? 痛みがなくなってからは、あんまり気にしてなかった」
ふふっと笑う亜姫に少し呆れた顔を向け、和泉は再度その背を撫でる。
「俺はすごく気にしてた。他の男に付けられた跡なんて残したくねーし」
あの事件の痕跡を消したかった、と言わないところに和泉の優しさを感じる。
あくまでも、やきもちを焼いているだけだということにしたいらしい。亜姫は前を向いたまま、またふふっと嬉しそうに笑う。
「今日、来てよかった。意外と遊べたよな」
和泉が感慨深そうに耳元で囁き、亜姫は閉じていた目を開ける。すると、横を向いた自分の顔に重なるように和泉の顔があった。
不意に見えた顔にドキッとする。水に濡れた和泉はいつもより色っぽく見えて、それに惑わされていることを隠したくて亜姫は前に向き直る。
「うん、そうだね。この浮き輪、わざわざ買ってくれたの?」
和泉は軽く笑っただけで答えなかった。無言のそれが答えだ。
プールに入る時、この人混みでは怖いだろうからと、和泉は二人で入れる浮き輪を用意していた。麗華と中に入りながら和泉達に引っ張ってもらったり、この中で和泉にくっつきながら泳いだりするのは予想以上の安心感をもたらしてくれた。そのおかげで一日こうして楽しめている。
無理をして麗華と二人で来ていたら、言われた通り麗華を苦しめるだけだっただろう。いろんな意味で和泉には感謝しかない。
そんな事を思いながら流れに身を任せていると、和泉が水の中に立ち、亜姫の体を抱き上げて体を反転させた。
浮き輪に上半身を乗せて上を向いた和泉が、その上に亜姫を乗せる。抱き合うような格好になり、亜姫は顔を赤らめて離れようと藻掻いた。しかし足は水を蹴るだけで、体は離れることなく浮き輪がスイスイと進んでいく。
和泉が「お、早い早い。もっと蹴って」と明るい声を出して笑っている。暴れた事で揺れた体が沈みそうになり、亜姫は思わず和泉の首に縋り付いた。
その体を和泉がしっかりと抱きしめ、水の流れに身を任せて一緒にゆらゆらと揺れる。それがまた、心地良かった。
「……和泉」
「んー?」
「楽しいね」
「うん、楽しい」
「………好き」
首筋に顔を埋め、亜姫は和泉の耳元で囁いた。
和泉は少し固まったあと、亜姫の横顔に軽いキスを落とす。
「人がいるのに……」
「皆似たようなことしてるよ。誰も見てねーって」
もうっ! と膨れた声で呟いたものの、亜姫はしばらくの間その体勢で楽しんでいた。
時折休憩したり、スライダーへ行ったり、足のつかない深いプールで泳いでみたり。あちこち場所を変えながら、結局夕方まで亜姫は楽しめた。
夕飯も皆で食べることになったが、亜姫は疲れてしまったので和泉が家まで送り届ける。
そして家を出たその足で、和泉は皆の元へ引き返した。
大きな浮き輪の中に囲われ、和泉にかかえられて浮いている亜姫は、プールの中で流れに身を任せていた。
「傷、綺麗に消えたな。良かった」
和泉が亜姫の背中に優しく触れる。
「そう? 痛みがなくなってからは、あんまり気にしてなかった」
ふふっと笑う亜姫に少し呆れた顔を向け、和泉は再度その背を撫でる。
「俺はすごく気にしてた。他の男に付けられた跡なんて残したくねーし」
あの事件の痕跡を消したかった、と言わないところに和泉の優しさを感じる。
あくまでも、やきもちを焼いているだけだということにしたいらしい。亜姫は前を向いたまま、またふふっと嬉しそうに笑う。
「今日、来てよかった。意外と遊べたよな」
和泉が感慨深そうに耳元で囁き、亜姫は閉じていた目を開ける。すると、横を向いた自分の顔に重なるように和泉の顔があった。
不意に見えた顔にドキッとする。水に濡れた和泉はいつもより色っぽく見えて、それに惑わされていることを隠したくて亜姫は前に向き直る。
「うん、そうだね。この浮き輪、わざわざ買ってくれたの?」
和泉は軽く笑っただけで答えなかった。無言のそれが答えだ。
プールに入る時、この人混みでは怖いだろうからと、和泉は二人で入れる浮き輪を用意していた。麗華と中に入りながら和泉達に引っ張ってもらったり、この中で和泉にくっつきながら泳いだりするのは予想以上の安心感をもたらしてくれた。そのおかげで一日こうして楽しめている。
無理をして麗華と二人で来ていたら、言われた通り麗華を苦しめるだけだっただろう。いろんな意味で和泉には感謝しかない。
そんな事を思いながら流れに身を任せていると、和泉が水の中に立ち、亜姫の体を抱き上げて体を反転させた。
浮き輪に上半身を乗せて上を向いた和泉が、その上に亜姫を乗せる。抱き合うような格好になり、亜姫は顔を赤らめて離れようと藻掻いた。しかし足は水を蹴るだけで、体は離れることなく浮き輪がスイスイと進んでいく。
和泉が「お、早い早い。もっと蹴って」と明るい声を出して笑っている。暴れた事で揺れた体が沈みそうになり、亜姫は思わず和泉の首に縋り付いた。
その体を和泉がしっかりと抱きしめ、水の流れに身を任せて一緒にゆらゆらと揺れる。それがまた、心地良かった。
「……和泉」
「んー?」
「楽しいね」
「うん、楽しい」
「………好き」
首筋に顔を埋め、亜姫は和泉の耳元で囁いた。
和泉は少し固まったあと、亜姫の横顔に軽いキスを落とす。
「人がいるのに……」
「皆似たようなことしてるよ。誰も見てねーって」
もうっ! と膨れた声で呟いたものの、亜姫はしばらくの間その体勢で楽しんでいた。
時折休憩したり、スライダーへ行ったり、足のつかない深いプールで泳いでみたり。あちこち場所を変えながら、結局夕方まで亜姫は楽しめた。
夕飯も皆で食べることになったが、亜姫は疲れてしまったので和泉が家まで送り届ける。
そして家を出たその足で、和泉は皆の元へ引き返した。
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