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高3

プールに(2)

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「うわぁ、人がいっぱい…………」

 電車の混み具合から予想はしていたが、プールは大混雑だった。今日は夏日で天気もよいので余計かもしれない。
 
「どーする? 亜姫、行けそう? なんなら別の遊びに変更してもいーけど?」
 ヒロがそう提案したが、亜姫はやっぱり行ってみたかった。
 
「じゃあ、行ってみて無理なら和泉とその辺でイチャこいとけ。
 俺はお前がどうだろうと、来たからには遊びまくって帰るからな! 麗華、お前今日はこっちにもつきあえ」
「今日は無駄にテンションが高いわね。私、体力もつかしら……」
 嫌そうな麗華に笑いながら、それぞれ更衣室へと入った。
  
「亜姫、やっぱり痩せた」
「えっ、おっぱい小さくなってる?」
「バカ、おっぱいだけの話じゃないわよ。もう少し、体重戻そ?」
「うん、ありがとう。今日は美味しいものも沢山食べようね!」
「昼過ぎに、沙世莉と先輩も来られるって。久々よね、先輩に会うのも」
「うん!」
 
 着替えを済ませて外に出ると、和泉達が知らない女子に囲まれていた。 
「あーぁ……来た早々めんどくさいわね」
 麗華がうんざりすると、亜姫に気づいた和泉が周りを無視してやってきた。

 ヒロと戸塚がその子達へ丁寧に断りを入れていたが、亜姫に甘い顔を向ける和泉の後ろから鋭い視線がこれでもかと刺さってくる。
 
 麗華は無言でそちらを睨み返し、和泉に言った。
「余計なトラブル持ち込まないでよ?」
「わかってるよ」
 和泉はその子達から隠すように、亜姫を引き寄せて歩き出した。
 
 運良く、端の方に休憩場所を確保できた。
 想像以上の人混みから、麗華と二人で行動するのは諦めた。昼には沙世莉達が合流するし、ここにはスライダーや波のプールなど楽しめるものも沢山ある。今日はとにかくこの場を楽しむことにした。
  
「亜姫、もう少し食う?」
「食べる」
 和泉が出したスプーンをパクっと口に含む。
 
 今、二人は休憩中だ。今日の和泉は、餌付けと称して休憩の度に何かを食べさせている。今はカロリーが高そうな濃厚アイスを口に入れたところだ。

「こんなに食べてたら、お昼が入らなくなっちゃいそう」
「そうだな、でも頑張って食えよ。もう少し太れ」
「そんなに痩せてる?あと2キロぐらいで元に戻るんだけどなぁ」
 
 ご飯を食べられなかった時期に、亜姫はかなり痩せた。柔らかそうな身体のラインは戻ってきたが、食欲が戻りきらないのを和泉は気にしていた。

「お前は元々細かったから。でも俺は、もう少し肉付きある方が好み。夏休みの間に、元の体重に戻そうな」
「全部おっぱいにつかないかな、その2キロ……」
「ずっと揉んでてやろうか? なんなら今すぐにでも」
「バカっ!」
 亜姫が真っ赤な顔で胸元を隠し、それに和泉は笑う。
 
 食べ終えたアイスをごみ袋に放り投げ、和泉は亜姫を抱き寄せた。
 麗華は今、ヒロと戸塚に連れられスライダーに並んでいる。
 
「体調、大丈夫?」 
「うん。ありがとね、連れてきてくれて。すごく楽しい」
「俺も。お前の水着姿を他の奴に見られんのは嫌なんだけど」
「まだ言ってる。周りも水着だらけなんだから、誰も私のことなんて見ないって言ってるのに。
声をかけられるとしたら麗華やさよりちゃんだって言ってるでしょう?」
 
 相変わらずな亜姫に、和泉は溜息しか出てこない。誰か、この子に危機感や自信を植え付けてはくれまいか。
 
 洗面所へ行くという亜姫に、自分が持ってきた予備のTシャツを着せた。亜姫の水着姿は妙に色気があるので、出来るだけ人目に晒したくない。
 とはいえ、シャツ姿もそれはそれで目立つ。和泉は亜姫を抱き寄せてその姿を少しでも隠すようにした。
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