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高3
修学旅行(11)
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「やっぱり亜姫は最強だな。あいつら完全にビビってたじゃん」
「別の意味でも怖いよね、何しでかすかわからなくて」
ヒロ達の話を聞きながら、和泉は少し先にいる亜姫を見る。
「それもそうなんだけどさ。やっぱり、ちょっと変じゃない?」
通常、こういう場面では和泉も笑っているのだが、今は珍しく真顔だ。
「どうした? 何が気になってんの?」
「さっきのなんて、いかにも亜姫って感じだったじゃん」
「確かにそうなんだけど……他に気を取られた時、ちょっと無防備になりすぎるというか」
二人は先を促すが、和泉は上手く言葉が見つからないようだ。
「今もさ、俺から離れてるだろ? 昨日まで出来なかったのに、いきなりあんなに変わるかな……って」
和泉達は今、有名な神社にいる。
参拝を終えた所で沙世莉が甘い物を食べたいと言い出し、今、亜姫達は少し先の売店に立っている。
和泉が何か言う前に、亜姫は当然のように沙世莉達と店へ向かって行った。その為、和泉は近くの椅子に座り様子を見ていたところだ。
今は出来上がりを待っているようで、亜姫は楽しそうに話しこんでいる。
だだっ広い境内の真ん中にある店で、亜姫の周りで沢山の人が行き交う。そこには、当然ながら男も含まれる。
にも関わらず、亜姫は怯える様子もなく出来上がりに気を取られているようだった。
「まぁ確かに。普通だな」
「だろ? 怖さが薄れつつあるっつーならいいんだけど……」
「開放的になって、気持ちの切り替えができたとか? 亜姫の場合すぐ目の前のことに気を取られるし、本来の性格が戻って来たのかもよ。
それに、学校でも女子だけの時はあんな感じだろ? 最近は和泉と離れられる時も増えてきてるし、発作の回数もかなり減ってるじゃん」
「何が引っかかってんだよ?」
ヒロと戸塚は、単純にいい傾向だと思っているようだ。
けれど、やはり和泉にはなんとも言えない違和感が残る。それをうまく言葉にできないのだが、放置したらいけない気持ちになることは確かだ。
「具体的に言葉で言えないんだけど。ただ、こんなにあっさり切り替えられるとは思えないし、俺と歩いてる時は相変わらず。むしろ……」
そう、違和感の一つはそこだ。本人はなんともないと言うし、今のように普通に過ごしたりする。
だが和泉が隣にいる時は、逆に今までより縋ってくるように感じていた。特に、シャツを掴む力がいつもより強い気がしている。
三人で考えるが、やはり答えは出ない。
「もしかしたら、移行期みたいなもんなのかな?
今の時期を超えたら一人で行動出来るようになっていくのかも」
「どっちにしろ、今は様子見るしかないだろ。亜姫があれで平気だっつーならこのまま楽しめばいいし、あとはお前が匙加減を調節すればいいんじゃない?」
「……そうだな」
そうしているうちに亜姫達が戻ってきて、和泉達はそのまま次の観光場所へ向かった。
そして修学旅行が終わるまでの間、亜姫は一度も発作を起こすことはなかった。
あれから江藤達が絡んでくることもなく、亜姫は笑顔のまま旅を終えた。
◇
そして授業が再開すると、亜姫は速攻で江藤と高橋の元へ飛んでいった。
慄く二人に亜姫は言った。
「約束どおり、教えて?」
にこりと笑った亜姫から逃れられるはずもなく、結局亜姫のペースに嵌められた二人。
最初はどうにか遠ざけようとしたものの、何かと食いついてくる亜姫を振り払うことなど不可能で。
この時ようやく、ヒロや戸塚に言われた言葉の意味を知る。
しかし気づけば亜姫に望まれるまま知識を授けていて、それにより亜姫のレベルは以前より向上した。
そしてこれを実践したくてたまらない亜姫は、またもや斜め上のやる気を見せる。
「和泉が夢中になった江藤さん達には遠く及ばないけど、私もそれぐらい喜ばせられるように頑張るね!」
なんとも複雑な気分になる、頓珍漢な宣言。
未だ誤解されたままだったと気づいた和泉があの二人とは無関係だと伝えると。
「二人が嘘をついてくれたおかげだから」
と、なぜかお礼を言う場を設けられた。
亜姫の為に切り離したにも関わらず、その亜姫から再び引き合わされるという摩訶不思議な展開を迎える。和泉はどうすべきかと頭を抱えた。
当の二人も、あれだけ近づきたいと願った和泉から縁切りされたはずなのに、なぜか顔を合わせて感謝されるという不可思議な事態に固まっていた。
しかし今では他の子達と同じように、亜姫と和泉をからかって遊ぶのを楽しみにしている。
亜姫は最初からノーダメージだったことは、言うまでもない。
「別の意味でも怖いよね、何しでかすかわからなくて」
ヒロ達の話を聞きながら、和泉は少し先にいる亜姫を見る。
「それもそうなんだけどさ。やっぱり、ちょっと変じゃない?」
通常、こういう場面では和泉も笑っているのだが、今は珍しく真顔だ。
「どうした? 何が気になってんの?」
「さっきのなんて、いかにも亜姫って感じだったじゃん」
「確かにそうなんだけど……他に気を取られた時、ちょっと無防備になりすぎるというか」
二人は先を促すが、和泉は上手く言葉が見つからないようだ。
「今もさ、俺から離れてるだろ? 昨日まで出来なかったのに、いきなりあんなに変わるかな……って」
和泉達は今、有名な神社にいる。
参拝を終えた所で沙世莉が甘い物を食べたいと言い出し、今、亜姫達は少し先の売店に立っている。
和泉が何か言う前に、亜姫は当然のように沙世莉達と店へ向かって行った。その為、和泉は近くの椅子に座り様子を見ていたところだ。
今は出来上がりを待っているようで、亜姫は楽しそうに話しこんでいる。
だだっ広い境内の真ん中にある店で、亜姫の周りで沢山の人が行き交う。そこには、当然ながら男も含まれる。
にも関わらず、亜姫は怯える様子もなく出来上がりに気を取られているようだった。
「まぁ確かに。普通だな」
「だろ? 怖さが薄れつつあるっつーならいいんだけど……」
「開放的になって、気持ちの切り替えができたとか? 亜姫の場合すぐ目の前のことに気を取られるし、本来の性格が戻って来たのかもよ。
それに、学校でも女子だけの時はあんな感じだろ? 最近は和泉と離れられる時も増えてきてるし、発作の回数もかなり減ってるじゃん」
「何が引っかかってんだよ?」
ヒロと戸塚は、単純にいい傾向だと思っているようだ。
けれど、やはり和泉にはなんとも言えない違和感が残る。それをうまく言葉にできないのだが、放置したらいけない気持ちになることは確かだ。
「具体的に言葉で言えないんだけど。ただ、こんなにあっさり切り替えられるとは思えないし、俺と歩いてる時は相変わらず。むしろ……」
そう、違和感の一つはそこだ。本人はなんともないと言うし、今のように普通に過ごしたりする。
だが和泉が隣にいる時は、逆に今までより縋ってくるように感じていた。特に、シャツを掴む力がいつもより強い気がしている。
三人で考えるが、やはり答えは出ない。
「もしかしたら、移行期みたいなもんなのかな?
今の時期を超えたら一人で行動出来るようになっていくのかも」
「どっちにしろ、今は様子見るしかないだろ。亜姫があれで平気だっつーならこのまま楽しめばいいし、あとはお前が匙加減を調節すればいいんじゃない?」
「……そうだな」
そうしているうちに亜姫達が戻ってきて、和泉達はそのまま次の観光場所へ向かった。
そして修学旅行が終わるまでの間、亜姫は一度も発作を起こすことはなかった。
あれから江藤達が絡んでくることもなく、亜姫は笑顔のまま旅を終えた。
◇
そして授業が再開すると、亜姫は速攻で江藤と高橋の元へ飛んでいった。
慄く二人に亜姫は言った。
「約束どおり、教えて?」
にこりと笑った亜姫から逃れられるはずもなく、結局亜姫のペースに嵌められた二人。
最初はどうにか遠ざけようとしたものの、何かと食いついてくる亜姫を振り払うことなど不可能で。
この時ようやく、ヒロや戸塚に言われた言葉の意味を知る。
しかし気づけば亜姫に望まれるまま知識を授けていて、それにより亜姫のレベルは以前より向上した。
そしてこれを実践したくてたまらない亜姫は、またもや斜め上のやる気を見せる。
「和泉が夢中になった江藤さん達には遠く及ばないけど、私もそれぐらい喜ばせられるように頑張るね!」
なんとも複雑な気分になる、頓珍漢な宣言。
未だ誤解されたままだったと気づいた和泉があの二人とは無関係だと伝えると。
「二人が嘘をついてくれたおかげだから」
と、なぜかお礼を言う場を設けられた。
亜姫の為に切り離したにも関わらず、その亜姫から再び引き合わされるという摩訶不思議な展開を迎える。和泉はどうすべきかと頭を抱えた。
当の二人も、あれだけ近づきたいと願った和泉から縁切りされたはずなのに、なぜか顔を合わせて感謝されるという不可思議な事態に固まっていた。
しかし今では他の子達と同じように、亜姫と和泉をからかって遊ぶのを楽しみにしている。
亜姫は最初からノーダメージだったことは、言うまでもない。
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