【完結】笑花に芽吹く 〜心を閉ざした無気力イケメンとおっぱい大好き少女が出会ったら〜

暁 緒々

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高3

修学旅行(1)

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 今日から数日、修学旅行だ。亜姫達は新幹線に乗っていた。
 
 亜姫は行くかどうかしばらく迷っていたが、行動班がいつものメンバーであったことと、部屋が麗華と沙世莉の三人部屋になっていること、また綾子や山本達が臨機応変にフォローすると言ってくれたことで参加を決めた。
 
 電車やバスの座席は麗華達と座る事が決まっていたが、実際は和泉が亜姫の隣を陣取っていた。  
「和泉のワガママっぷりが、今回ばかりはプラスに働いてるわね」
「ほーんと、都合が悪いとこは全部和泉のせいにできるし。今の亜姫の状況を考えたら助かるよねぇ」
 そう言いながら、沙世莉が亜姫達に向かってパシャリとシャッターを切った。その音を聞き、亜姫は隣をそっと伺う。
 
「爆睡じゃん。こいつがこういう寝方すんの、初めて見た」
「だよね。寝るときは絶対に顔見せないし。
 というより、意外と寝ないんだよな、和泉って。
 突っ伏してても起きてることが多いし、眠ったとしてもかなり浅いから、何かあればすぐ反応する」
 ヒロと戸塚が珍しそうに和泉の顔を覗き込み、軽くつついたりしている。
 亜姫が身振りでやめろと追い払っていると、麗華がその様子に笑いながら言う。

「うっかり寝たりしたら、その間に何されてるかわかんないからじゃない? このバカなりに色々苦労してたんだろうけど……それにしても、本当によく寝てるわね」
「本当に綺麗な顔してる。寝顔でもこれだけ整ってるって羨ましい。
 中身がアレだってわかってても、寝起きでこの顔が目の前にあったらドキドキしちゃうかも……亜姫、よく心臓持つね?」
「いや、私も見たことないから……」 

 全員、意外そうに亜姫を見た。
 
 肩にもたれかかって眠る和泉の顔は、亜姫からは殆ど見えない。けれど、肩に乗る重さと規則正しい呼吸音から和泉が完全に寝ていることがわかる。
 それを確認して、亜姫は和泉を起こさないよう声を落とした。 

「和泉って、もともと睡眠時間が少ないんだって。
 私が寝てる時に一緒に寝てることはあるみたいだけど、私が起きる前に必ず起きてるから……寝顔、まともに見たことない」
「お前はいつでもよだれを垂らして寝てんのにな? 和泉の分まで亜姫が寝てんだろ」
 からかうヒロに、亜姫は膨れる。
 
 そこへ、沙世莉が撮ったばかりの写真を差し出した。同時に携帯にも画像が送られてきて、亜姫は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ありがとう。和泉との写真、あんまり持ってないから嬉しい」
 そう言いながら、写真をまじまじと見る。
「……だ。和泉って、綺麗な顔してるんだねぇ」
 今気づいたと言いたげな口調に、麗華達は笑う。

「何を今更。いつも目の前で見てるでしょ?」
「爺ちゃんが外人だっけ?」
「それは違うって。ひいお爺ちゃんまでは確実に日本の人だって。かなり昔に外国の方がいたらしくて、髪の色はその名残みたいだよ。
 でも、こうやって見ると、確かに外国人みたいだね」
 写真を眺めながら、亜姫は感心したように言った。
「男から見ても見惚れる時があるよ? 和泉の外見はマジで規格外。
 兄ちゃんもそっくりで、これまた超イケメン。和泉に大人の魅力足した感じで、二人揃うと最早ただの芸術品」
「へぇ……お兄さんに似てるんだ? 私、あの日に会ったらしいんだけど、全然覚えてなくて。
 和泉の外見って、あんまり見てないというか……表情とか手とか大きさとか、動きの方に目がいっちゃうから……。
 和泉も自分の見た目があんまり好きじゃないみたいで、写真撮られるのを嫌がるの。皆で撮ったやつしか持ってないから、あんまりじっくり見たことはなかったかも。この旅行中に、写真沢山撮れるかな」
 
 すると、戸塚とヒロが意外そうな顔をした。
「お前、和泉の写真持ってないの? こいつの携帯ん中、お前の写真ばっかなのに?」
「えっ?」
 亜姫が驚いて二人を見る。その様子に二人も驚きを見せるが、次第にニヤニヤした表情へ変わっていった。
「あぁ、和泉のあれ、もしかして隠し撮りか。
 ははっ、あんなに撮ってるなんて可愛いとこあるじゃん。なのに、お前には撮らせてくれないの?」
 
 亜姫は初めて聞く話に顔を赤らめつつ、少し不満げに頷いた。
「私、皆で撮った数枚しか持ってない。どれも無表情だし……」
「琴音は沢山持ってたわよ? 一人で写ってるのもあるはずだから、少し分けてもらったら?」
 呆れた顔を和泉に向けながら、麗華は同情するように亜姫に言う。その隣で沙世莉も笑った。
「亜姫のことだから、本人が嫌がってるならって敢えて貰わなかったんでしょ? 和泉も、写真見るぐらいなら俺を見ろって言いそうだもんね。
 よし、まかせといて。この旅行中に沢山撮ってあげるからね!」
 亜姫は嬉しそうに頷いた。
  
「それにしても本当に珍しいわね、こんなに熟睡するなんて。亜姫にそれだけ心許してるって事なんだろうけど……具合悪いわけじゃないわよね?」
「えっ、和泉が動けなくなったら……亜姫はどうする? 和泉抜きじゃ観光は無理だよね?」
 心配する麗華達に、亜姫は笑って首を振る。
「多分、普通に寝不足だと思う。修学旅行、楽しみで眠れなかったんだって。行事を楽しみだと思ったのは初めてだって言ってたから……」
 
 黙っていても人を惹き寄せる彼。校外に出ればその分面倒事が増えていたであろうと、容易に想像できた。
 皆がなんとなく和泉に視線を向け、その穏やかな寝顔を見たヒロがくすりと笑う。
「和泉の為にも、じゃあ……とことん楽しむか!」 
 それには全員が頷いた。
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