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高3
内緒でお勉強(3)
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いつの間にか動画が終わっていた。
今からどんなことを言われるのか。亜姫が体を強張らせると、予想とは裏腹に優しく抱きしめられる。
「動画かよ……お前が直接話して教わったのかと思ってた」
ホッとしたような言い方に、亜姫の強張りが少しだけ緩んだ。
「違うよ、ただ観るだけで」
「どうやって練習した?」
「夜、布団の中で繰り返し観て……」
「今日の為に、ずっと練習してたの?」
「……うん」
「とりあえず、怒ったことは謝る。完全に勘違いしてた。俺の早とちり。……悪かった」
思わぬ謝罪。亜姫は目を見開く。
「まさかお前があんな事するなんて思わなかったから、焦った。
一生懸命してくれてたのに、何度も怒鳴ってごめん」
亜姫の目にみるみる水が溜まる。眉と口の端を強く下げ小さな嗚咽を漏らした亜姫を、和泉は腕の中に包み込んだ。
「怖かった……?」
和泉が囁くように問いかけると、亜姫は服をギュッと掴み大きく頷く。胸元に濡れた感触がじわじわ広がり、亜姫が声を殺して泣いているのがわかる。
「亜姫、ごめんな? ごめん。してくれたのは嬉しかったよ。本当に、すごく嬉しかった」
すると、鼻水をすすりながら亜姫が呟いた。
「不満があるなら、正直に言っ……」
最後まで言わせず、和泉は亜姫の顔を上に向かせた。
「不満なんかない。本当に、すごく嬉しかった」
亜姫の目から大粒の涙がポトリと落ちる。同時に顔を歪ませて、亜姫は首を左右に振った。
「頑張っても、上手く出来ないの。皆は普通に出来るのに。私は……」
チュ………。
和泉が亜姫の口を塞ぎ、優しく微笑んだ。
「誰を基準にしてるの? そんなの、人それぞれだろ? そもそも、そんな事をしてもらいたいなんて思ってない」
「えっ?」
目を瞬かせて亜姫は驚きを見せた。
唖然とした表情に、和泉はくすくす笑う。
「彼女に何かしてもらいたい奴はいるだろうけど。俺は、自分が亜姫に色々したいんだ。
あと、正直に言うと「女」を匂わされる行為が好きじゃなかった。お前にこんな話すんのもどうかと思うんだけど……女ががっつく姿ばかり見てきたせいか、なんつーか……逆に気が萎えるというか。女の汚さを象徴してるみたいで嫌悪してたし、好き勝手に触られんのも不快で」
まさか、自分のしたことが和泉の嫌いな行為だったとは。そんな事、考えもしなかった。
亜姫は愕然とする。
だが、和泉はまたくすりと笑う。
「さっきみたいな些細な触れ合いも含めて、キスとかセックスとかそーゆー類は全て、すごく汚いものだった。……お前に触れるまでは。
お前がそれを変えてくれたんだよ。今では亜姫がすること全部、俺にはたまらなく嬉しい。その拙い仕草を俺が楽しんで喜んでるって……わかってないだろ?」
「え? でも、頑張ろうとするといつも笑う……」
「バカにしてるんじゃないよ。慣れないことを一生懸命頑張る姿が可愛くて、笑ってんの」
「う、そ……だって、何もやらせようとしないから……」
悲しそうに呟く亜姫に、和泉はたまらない愛おしさを感じていた。
「ちょっとしたことでも恥ずかしがる亜姫を見るだけで満足してたもん、これ以上何かしてほしいなんて思わなかったよ」
「私には期待してないから、じゃないの?」
和泉が違うと首を振ると、亜姫はまた泣き出した。
ホッとしたようなその泣き方に、和泉は尋ねる。
「不安だったのか?」
今からどんなことを言われるのか。亜姫が体を強張らせると、予想とは裏腹に優しく抱きしめられる。
「動画かよ……お前が直接話して教わったのかと思ってた」
ホッとしたような言い方に、亜姫の強張りが少しだけ緩んだ。
「違うよ、ただ観るだけで」
「どうやって練習した?」
「夜、布団の中で繰り返し観て……」
「今日の為に、ずっと練習してたの?」
「……うん」
「とりあえず、怒ったことは謝る。完全に勘違いしてた。俺の早とちり。……悪かった」
思わぬ謝罪。亜姫は目を見開く。
「まさかお前があんな事するなんて思わなかったから、焦った。
一生懸命してくれてたのに、何度も怒鳴ってごめん」
亜姫の目にみるみる水が溜まる。眉と口の端を強く下げ小さな嗚咽を漏らした亜姫を、和泉は腕の中に包み込んだ。
「怖かった……?」
和泉が囁くように問いかけると、亜姫は服をギュッと掴み大きく頷く。胸元に濡れた感触がじわじわ広がり、亜姫が声を殺して泣いているのがわかる。
「亜姫、ごめんな? ごめん。してくれたのは嬉しかったよ。本当に、すごく嬉しかった」
すると、鼻水をすすりながら亜姫が呟いた。
「不満があるなら、正直に言っ……」
最後まで言わせず、和泉は亜姫の顔を上に向かせた。
「不満なんかない。本当に、すごく嬉しかった」
亜姫の目から大粒の涙がポトリと落ちる。同時に顔を歪ませて、亜姫は首を左右に振った。
「頑張っても、上手く出来ないの。皆は普通に出来るのに。私は……」
チュ………。
和泉が亜姫の口を塞ぎ、優しく微笑んだ。
「誰を基準にしてるの? そんなの、人それぞれだろ? そもそも、そんな事をしてもらいたいなんて思ってない」
「えっ?」
目を瞬かせて亜姫は驚きを見せた。
唖然とした表情に、和泉はくすくす笑う。
「彼女に何かしてもらいたい奴はいるだろうけど。俺は、自分が亜姫に色々したいんだ。
あと、正直に言うと「女」を匂わされる行為が好きじゃなかった。お前にこんな話すんのもどうかと思うんだけど……女ががっつく姿ばかり見てきたせいか、なんつーか……逆に気が萎えるというか。女の汚さを象徴してるみたいで嫌悪してたし、好き勝手に触られんのも不快で」
まさか、自分のしたことが和泉の嫌いな行為だったとは。そんな事、考えもしなかった。
亜姫は愕然とする。
だが、和泉はまたくすりと笑う。
「さっきみたいな些細な触れ合いも含めて、キスとかセックスとかそーゆー類は全て、すごく汚いものだった。……お前に触れるまでは。
お前がそれを変えてくれたんだよ。今では亜姫がすること全部、俺にはたまらなく嬉しい。その拙い仕草を俺が楽しんで喜んでるって……わかってないだろ?」
「え? でも、頑張ろうとするといつも笑う……」
「バカにしてるんじゃないよ。慣れないことを一生懸命頑張る姿が可愛くて、笑ってんの」
「う、そ……だって、何もやらせようとしないから……」
悲しそうに呟く亜姫に、和泉はたまらない愛おしさを感じていた。
「ちょっとしたことでも恥ずかしがる亜姫を見るだけで満足してたもん、これ以上何かしてほしいなんて思わなかったよ」
「私には期待してないから、じゃないの?」
和泉が違うと首を振ると、亜姫はまた泣き出した。
ホッとしたようなその泣き方に、和泉は尋ねる。
「不安だったのか?」
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