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高2
事件後(4)
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学校にはそれぞれの親が迎えに来ており、説明をする為に亜姫達は少し待たされることとなった。
部屋の中が人の入れ替えでざわつく。その中、和泉が大きな溜息を吐き出した。
「あー、もう!!」
言いながら体をズルズルと前へ倒し、今にも椅子から落ちそうだ。
「和泉? 大丈夫か?」
「大丈夫なわけねーだろ」
和泉はその姿勢のまま亜姫を睨みつけると、突如声を荒げた。
「っ、このバカ!!」
目を丸くする亜姫に向かい、和泉は更に怒鳴る。
「取り消すとかふざけたことぬかしてんじゃねーよ、お前の為にここにいるんだろーが!」
「……っ、私だって、考え」
「考えてねぇ! よりによってこのタイミングでわけ分かんねぇ頑固っぷり発動させんな!
言い出したら聞かねぇとこ、少しは直せよ本当に!」
「だって……」
「こんな時まで自分のこと後回しにすんな! 毎度毎度暴走しやがって……少しは振り回される方の身になれよ!」
「和泉、お前こそ落ちつけ……。キャラぶっ壊れてるって……」
宥めるヒロと苦笑する麗華達。
涙目で反論しようとする亜姫を見て、和泉はまた溜息を吐く。
「お前は自分より人を優先するってわかってる。でも自分をもっと大事にしろよ。あのまま取り消されたらって、マジで焦った。心臓持たねぇから、こーゆーのもうやめて……。
あー……、助けに行ったときより今の方がダメージでけぇ……」
和泉は崩れた姿勢のまま、ごめんなさい……と小さくなる亜姫の頭を軽く引き寄せ、撫でた。
そこで和泉が「うるさいし、邪魔」と怒られ、亜姫は「バカだなぁ」と山本から笑われ。そのまま揃って外へ追い出された。
◇
亜姫が顔を洗いたいというので、和泉が一緒に付いていく。
無言のまま、黙々と顔を濡らす亜姫。
和泉はその横で水道の淵に腰かけ、その様子を見ながら濡れそうになる髪をそうっと避けた。
タオルを顔にあてながら、亜姫が「いずみ」と呼ぶ。
「ん?」
「ごめんね。約束、守れなくて……」
「約束?」
「他の人に触らせないって、約束してた……」
亜姫はずっと下を向いたまま、和泉を見ない。
「触らせないように抵抗してたろ? 約束守ってたじゃん」
左右に首を振る亜姫からタオルを取り、和泉は優しく顔にあててやる。
しばらく無言のあと、亜姫がまた口を開く。
「さっき、警察にも言えなかったことがある」
亜姫は下を向いたまま続けた。
「先輩に言われた……。和泉は男を知らなそうな私が珍しかっただけだって。
穢れるから和泉は私をもう必要としないって……汚い傷物だから、だって……」
俯いて涙をこぼす亜姫に、和泉は持っていたタオルを握らせた。
「亜姫は汚れてない。穢れてもいない」
小さく首を振る亜姫の頬を、和泉は優しく撫でる。
「今のお前、昨日までと何も変わらないよ。俺の好きな亜姫のままだ」
ゆっくりとした静かな動きで顔を覆うタオルを外し、触れるだけの口づけをする。
「いつも通り、甘い。保健室でも甘かった。
亜姫は……何か、今までと違うって感じる……?」
再度、チュ……と優しく触れる。
亜姫が和泉の顔を見る。そして小さく首を振った。
「な? 変わらないだろ?」
コクンと頷く亜姫。
「動画も撮られてない。あぁ、そうだ。あいつらが触れたとこ全部、服を戻すときに俺が触り直してるからな。……いつも通り、いい触り心地だった」
肩から腕を優しくなぞりながら、からかうように和泉が言う。
「……バカ」
少し恥ずかしそうにする亜姫と軽く笑い合う。
それからお互いの額と鼻先を合わせ……
「亜姫、愛してる」
和泉がそう伝え、再度唇を重ね合わせて。
それから二人で控え室に戻った。
親と学校の間で、明日からの登校についても話し合われていたらしい。
山本達に呼ばれて部屋へ戻ると、亜姫はしばらく親の車で送迎をすると聞かされた。だが、思いがけず亜姫自身が反対する。
「絶対に嫌。いつも通り登校する」
そうは言っても、精神的なダメージがどう影響するかわからないだろう。それに配慮して、混雑した電車通学はやめた方がよいと。登下校の時間や学園生活も出来る範囲で、と聞かされるが。
「お母さん達は仕事があるでしょう。そんな時間ないじゃない。迷惑かけたくない」
宥める母の言葉にも耳を貸さない亜姫。
「今日の出来事で、私の生活は変わっちゃうの? 嫌だよ、いつも通りに過ごしたい。車は嫌! 乗らない!」
普段駄々をこねたりしない亜姫の頑なな態度に大人達が困惑している。しかし、大人としては確実に守れる方法を選びたい。
どちらも譲れない、そんな雰囲気に割って入ったのは和泉だった。
「俺が付き添います」
和泉は部活もバイトもしていない。時間は常に余っている。
家を出るときから帰宅するまで付き添う。
無理だと思ったら、そこから先には行かせない。
その場合は何らかの手段や助けを使い、学校か自宅に連れていく。
自分なら何かあっても亜姫を抱えられるし、役には立つはずだ。
「だから、まずは亜姫のやりたいようにさせてもらえませんか?」
毎朝迎えに来るという和泉の負担を亜姫の母が渋ったが、和泉は問題ないと言う。
亜姫の強い希望と、和泉が無理な時は代わりを務めるとヒロ達も願い出たことで、『絶対に無理はしない』という条件付きでいつも通りにすることが決まった。
それを最後に解散となり、それぞれが親と帰宅していく。その中、和泉は亜姫の母へ頼んだ。
「5分だけ、時間もらってもいいですか?」
許可を貰うと、和泉は亜姫を廊下へと連れ出した。
部屋の中が人の入れ替えでざわつく。その中、和泉が大きな溜息を吐き出した。
「あー、もう!!」
言いながら体をズルズルと前へ倒し、今にも椅子から落ちそうだ。
「和泉? 大丈夫か?」
「大丈夫なわけねーだろ」
和泉はその姿勢のまま亜姫を睨みつけると、突如声を荒げた。
「っ、このバカ!!」
目を丸くする亜姫に向かい、和泉は更に怒鳴る。
「取り消すとかふざけたことぬかしてんじゃねーよ、お前の為にここにいるんだろーが!」
「……っ、私だって、考え」
「考えてねぇ! よりによってこのタイミングでわけ分かんねぇ頑固っぷり発動させんな!
言い出したら聞かねぇとこ、少しは直せよ本当に!」
「だって……」
「こんな時まで自分のこと後回しにすんな! 毎度毎度暴走しやがって……少しは振り回される方の身になれよ!」
「和泉、お前こそ落ちつけ……。キャラぶっ壊れてるって……」
宥めるヒロと苦笑する麗華達。
涙目で反論しようとする亜姫を見て、和泉はまた溜息を吐く。
「お前は自分より人を優先するってわかってる。でも自分をもっと大事にしろよ。あのまま取り消されたらって、マジで焦った。心臓持たねぇから、こーゆーのもうやめて……。
あー……、助けに行ったときより今の方がダメージでけぇ……」
和泉は崩れた姿勢のまま、ごめんなさい……と小さくなる亜姫の頭を軽く引き寄せ、撫でた。
そこで和泉が「うるさいし、邪魔」と怒られ、亜姫は「バカだなぁ」と山本から笑われ。そのまま揃って外へ追い出された。
◇
亜姫が顔を洗いたいというので、和泉が一緒に付いていく。
無言のまま、黙々と顔を濡らす亜姫。
和泉はその横で水道の淵に腰かけ、その様子を見ながら濡れそうになる髪をそうっと避けた。
タオルを顔にあてながら、亜姫が「いずみ」と呼ぶ。
「ん?」
「ごめんね。約束、守れなくて……」
「約束?」
「他の人に触らせないって、約束してた……」
亜姫はずっと下を向いたまま、和泉を見ない。
「触らせないように抵抗してたろ? 約束守ってたじゃん」
左右に首を振る亜姫からタオルを取り、和泉は優しく顔にあててやる。
しばらく無言のあと、亜姫がまた口を開く。
「さっき、警察にも言えなかったことがある」
亜姫は下を向いたまま続けた。
「先輩に言われた……。和泉は男を知らなそうな私が珍しかっただけだって。
穢れるから和泉は私をもう必要としないって……汚い傷物だから、だって……」
俯いて涙をこぼす亜姫に、和泉は持っていたタオルを握らせた。
「亜姫は汚れてない。穢れてもいない」
小さく首を振る亜姫の頬を、和泉は優しく撫でる。
「今のお前、昨日までと何も変わらないよ。俺の好きな亜姫のままだ」
ゆっくりとした静かな動きで顔を覆うタオルを外し、触れるだけの口づけをする。
「いつも通り、甘い。保健室でも甘かった。
亜姫は……何か、今までと違うって感じる……?」
再度、チュ……と優しく触れる。
亜姫が和泉の顔を見る。そして小さく首を振った。
「な? 変わらないだろ?」
コクンと頷く亜姫。
「動画も撮られてない。あぁ、そうだ。あいつらが触れたとこ全部、服を戻すときに俺が触り直してるからな。……いつも通り、いい触り心地だった」
肩から腕を優しくなぞりながら、からかうように和泉が言う。
「……バカ」
少し恥ずかしそうにする亜姫と軽く笑い合う。
それからお互いの額と鼻先を合わせ……
「亜姫、愛してる」
和泉がそう伝え、再度唇を重ね合わせて。
それから二人で控え室に戻った。
親と学校の間で、明日からの登校についても話し合われていたらしい。
山本達に呼ばれて部屋へ戻ると、亜姫はしばらく親の車で送迎をすると聞かされた。だが、思いがけず亜姫自身が反対する。
「絶対に嫌。いつも通り登校する」
そうは言っても、精神的なダメージがどう影響するかわからないだろう。それに配慮して、混雑した電車通学はやめた方がよいと。登下校の時間や学園生活も出来る範囲で、と聞かされるが。
「お母さん達は仕事があるでしょう。そんな時間ないじゃない。迷惑かけたくない」
宥める母の言葉にも耳を貸さない亜姫。
「今日の出来事で、私の生活は変わっちゃうの? 嫌だよ、いつも通りに過ごしたい。車は嫌! 乗らない!」
普段駄々をこねたりしない亜姫の頑なな態度に大人達が困惑している。しかし、大人としては確実に守れる方法を選びたい。
どちらも譲れない、そんな雰囲気に割って入ったのは和泉だった。
「俺が付き添います」
和泉は部活もバイトもしていない。時間は常に余っている。
家を出るときから帰宅するまで付き添う。
無理だと思ったら、そこから先には行かせない。
その場合は何らかの手段や助けを使い、学校か自宅に連れていく。
自分なら何かあっても亜姫を抱えられるし、役には立つはずだ。
「だから、まずは亜姫のやりたいようにさせてもらえませんか?」
毎朝迎えに来るという和泉の負担を亜姫の母が渋ったが、和泉は問題ないと言う。
亜姫の強い希望と、和泉が無理な時は代わりを務めるとヒロ達も願い出たことで、『絶対に無理はしない』という条件付きでいつも通りにすることが決まった。
それを最後に解散となり、それぞれが親と帰宅していく。その中、和泉は亜姫の母へ頼んだ。
「5分だけ、時間もらってもいいですか?」
許可を貰うと、和泉は亜姫を廊下へと連れ出した。
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