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高2
文化祭(9)
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目を冷やしながら、亜姫は話した。未だ混乱していることもあり、時折言葉に詰まりながら。
「最っ低!」
「同感。救いようがない」
相変わらず和泉に辛辣な二人。亜姫の波打つ感情が少しだけ凪いだ。
けれど「何故こんなことに?」という疑問に、亜姫は首を振る。
「わからない。朝も私に怒っていたんだと思うし……。本当に何がなんだかわからないの」
「でも。何一つ和泉に喜んでもらえなかった。逆に怒らせちゃって……」
亜姫は言葉に詰まる。
「もしかして、最初から嫌だったのかな。私が沢山ワガママ言ってたから断れなかった……?」
「そんな殊勝な心をあいつが持ってるわけないでしょ。普段から嫌なもんは嫌って言うじゃない。
それにどう見たって嫌がってなかったし」
「じゃあ、やっぱり今日は私に怒ってたんだ……。
和泉、本当は先輩とのことずっと疑って……っ」
先程起きたことを思い出し、嗚咽が漏れて言葉が途切れる。同時に涙が滲み、目を覆う冷たいタオルにじわじわと染み込んでいく。
「和泉は全然信じてくれなかった……。
二人きりで過ごしたい、楽しみにしてるって、あんなに頼んだのに……その言葉すら、信じてくれてなかっ……」
和泉にぶつけられた言葉が再度亜姫を攻撃する。
そして、亜姫は再び泣き出した。
タオルがあっと言う間に濡れていく。亜姫は突っ伏すように俯いてそれを握りしめ、目元に強く押し当てた。
「亜姫……? 自分の気持ち、ちゃんと言った?」
沙世莉の言葉に亜姫は頷く。
「さよりちゃん、ごめんなさい。話もバレちゃ……っ、わ、私が悪いの。内緒、守れな、くて……ごめ、なさ……。
大事な話、教えてくれたのにいっぱい、時間、使わせた……二人の気持ちも、無駄にしちゃって、ひとつも、出来なかっ……別れるジン、クスだけ……ごめん、なさ、別れちゃ……」
咽び泣く亜姫は再びしゃくりあげ、二人への申し訳無さから何度も謝罪を口にする。
沙世莉は、亜姫の体をゆっくりと起こして抱きしめた。
「謝らなくていーの! 私達は楽しんでやってたんだから。
言ったでしょ? もともと亜姫達はイレギュラーなんだから、そんなに気にしなくても大丈夫。逆に、教えたことで辛い思いをさせちゃったね」
だが、亜姫は違うと首を振る。
「教えてくれたの、嬉しかった、叶えたかった……ずっと一緒……でも、叶わなかっ……」
沙世莉の服をギュッと掴み、亜姫は嗚咽を堪える。
「そんなに泣かないでよ。いつも笑ってる亜姫がこんなに泣いてたら私まで泣きたくなっちゃう。
とりあえずさぁ、和泉を一発ぶん殴ってやりたいんだけど」
沙世莉は怒りを滲ませつつ、困ったように麗華を見あげ……固まった。
冷静だと思っていた麗華が、思わず引くほどの怒りを露わにしていたからだ。
「れ、麗華……? 顔、怖いって、ちょっと……!」
慌てる沙世莉を冷たい視線で黙らせ、麗華は亜姫の前に立つとこう告げた。
「別れなさい」
「最っ低!」
「同感。救いようがない」
相変わらず和泉に辛辣な二人。亜姫の波打つ感情が少しだけ凪いだ。
けれど「何故こんなことに?」という疑問に、亜姫は首を振る。
「わからない。朝も私に怒っていたんだと思うし……。本当に何がなんだかわからないの」
「でも。何一つ和泉に喜んでもらえなかった。逆に怒らせちゃって……」
亜姫は言葉に詰まる。
「もしかして、最初から嫌だったのかな。私が沢山ワガママ言ってたから断れなかった……?」
「そんな殊勝な心をあいつが持ってるわけないでしょ。普段から嫌なもんは嫌って言うじゃない。
それにどう見たって嫌がってなかったし」
「じゃあ、やっぱり今日は私に怒ってたんだ……。
和泉、本当は先輩とのことずっと疑って……っ」
先程起きたことを思い出し、嗚咽が漏れて言葉が途切れる。同時に涙が滲み、目を覆う冷たいタオルにじわじわと染み込んでいく。
「和泉は全然信じてくれなかった……。
二人きりで過ごしたい、楽しみにしてるって、あんなに頼んだのに……その言葉すら、信じてくれてなかっ……」
和泉にぶつけられた言葉が再度亜姫を攻撃する。
そして、亜姫は再び泣き出した。
タオルがあっと言う間に濡れていく。亜姫は突っ伏すように俯いてそれを握りしめ、目元に強く押し当てた。
「亜姫……? 自分の気持ち、ちゃんと言った?」
沙世莉の言葉に亜姫は頷く。
「さよりちゃん、ごめんなさい。話もバレちゃ……っ、わ、私が悪いの。内緒、守れな、くて……ごめ、なさ……。
大事な話、教えてくれたのにいっぱい、時間、使わせた……二人の気持ちも、無駄にしちゃって、ひとつも、出来なかっ……別れるジン、クスだけ……ごめん、なさ、別れちゃ……」
咽び泣く亜姫は再びしゃくりあげ、二人への申し訳無さから何度も謝罪を口にする。
沙世莉は、亜姫の体をゆっくりと起こして抱きしめた。
「謝らなくていーの! 私達は楽しんでやってたんだから。
言ったでしょ? もともと亜姫達はイレギュラーなんだから、そんなに気にしなくても大丈夫。逆に、教えたことで辛い思いをさせちゃったね」
だが、亜姫は違うと首を振る。
「教えてくれたの、嬉しかった、叶えたかった……ずっと一緒……でも、叶わなかっ……」
沙世莉の服をギュッと掴み、亜姫は嗚咽を堪える。
「そんなに泣かないでよ。いつも笑ってる亜姫がこんなに泣いてたら私まで泣きたくなっちゃう。
とりあえずさぁ、和泉を一発ぶん殴ってやりたいんだけど」
沙世莉は怒りを滲ませつつ、困ったように麗華を見あげ……固まった。
冷静だと思っていた麗華が、思わず引くほどの怒りを露わにしていたからだ。
「れ、麗華……? 顔、怖いって、ちょっと……!」
慌てる沙世莉を冷たい視線で黙らせ、麗華は亜姫の前に立つとこう告げた。
「別れなさい」
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