80 / 364
高2
文化祭準備(2)
しおりを挟む
「亜姫、ちょっとおいで」
紗世莉に呼ばれた亜姫は、麗華と三人で屋上に行った。
「内緒の話」
紗世莉は、絶対口外するなと二人に固く口止めをした。
曰く。
バスケ部女子には密かに伝わるジンクスがある。
高二の文化祭初日に校内デートをすると永遠に結ばれる、というもの。
しかし、ただのデートではない。とある飲食をする、お互い高2である等々、細かな決まりがいくつもある。男性にバレたり喧嘩したりしてしまうと、逆に絶対結ばれないらしいが、無事達成できた暁には永遠の愛が手に入るのだとか。
そして、このジンクスの最大の難関こそ「とある飲食」にある。
必要とされるうちの一つが滅多に出るものではなく、そもそもジンクスを試せる年の方が珍しい。
「それが、数年ぶりに今年出るの。それでね。亜姫、和泉とやってみない?」
亜姫の心が弾んだ音を立てた。
和泉と一生結ばれるなんて、そんな先のことを考えた事は無かったが……やってみたいと思った。
「バスケ部じゃないのに私が聞いちゃって……試しちゃっても大丈夫?」
「確かに秘密の話だけど、女の子がバスケ部でなきゃ駄目とは言われてない。
その話を聞いた時、亜姫にやってほしいと思ったの。やるなら、麗華と二人で全面的に協力してあげる」
「さよりちゃん、そんな大事な話をどうして教えてくれるの? 二人とも、和泉と付き合うのを反対してたんじゃないの?」
すると、二人は顔を見合わせて笑った。
「私達は和泉を否定してるわけじゃない。もちろん今までのあいつは最低だし、未だに亜姫以外には塩対応。今ではクソガキっぷりが増して、亜姫への執着は異常だしやたらワガママ。
なのに和泉のすることって、なんだかんだ許されちゃうじゃない。それが気に食わないだけよ。ほっといたら亜姫の自由が無くなっちゃうでしょ?
知ってる? 今ここに来る前も、亜姫のこと離したくなくて邪魔しようとしてきたのよ? 今だってここに来ないように、ヒロと戸塚に捕まえてもらってるんだから」
うんざりした顔で麗華が溜息をつき、紗世莉も呆れている。
「でもね。和泉が亜姫を大事にしてるのはわかる。それを見てると、なんだか永遠の愛ってもんを信じたくなっちゃうんだよね。だから亜姫の為っていうより、その行く末を見てみたい……っていう好奇心もあるかな」
紗世莉は、気まずそうに笑った。
「それにね、そう簡単にはいかないの。クリアできた人は殆どいない。
この秘密が守られ続けてるのは……聞いた子達が皆、そこに神秘性を感じているからだと思う。実際、できた人達は結ばれたらしいよ。亜姫と和泉も、できるような気がしたの」
二人は亜姫を優しく見つめる。
「そもそも亜姫はバスケ部じゃないし、そこからイレギュラーだから。固く考えずにやってみたら?
亜姫が楽しみにしてた行事なのに和泉の子守を押しつけちゃったし、やりたかった接客もできなくなっちゃったからね。そのお詫び」
亜姫は瞳を輝かせた。
「やってみたい。……でも、和泉が嫌がるかも。邪魔が入るって言って外を歩きたがらなくて。
最近はまた声かけられることが増えてるみたいだし、接客なんかしたらそれこそ……」
「あぁ……亜姫と付き合いだして、前より人間味が増してきたからね。
皆、バカだよね。和泉が話すのはあくまでも亜姫が絡む時だけなのに、自分達も同じように相手してもらえると勘違いしちゃって。
まぁ、そこは亜姫が事前にオネダリしときなさいよ。普段、全然ワガママ言わないでしょ?
和泉、亜姫にもっとワガママ言ってもらいたいんだってよ? 戸塚がこの間言ってた」
「え? 和泉にはワガママばっかり言ってるし、いつでも好きなことをやらせてもらってるよ?」
「亜姫のはワガママのうちに入らないから。
ちょうど良いじゃない。文化祭デートしたい! その日は、ワガママ全部聞いて! って亜姫が言えば、尻尾振って大喜びで付いてくるわよ」
亜姫はその提案を受けることにした。
言われたまま和泉に伝えると、二つ返事で即答された。そうすると亜姫もウキウキしてくるし、やるからには叶えたくなってしまう。
事あるごとに亜姫は確認した。
「絶対、休まないで来てね?」
「必ず二人でだよ? その時間、ちゃんと空けといてね?」
「沢山やりたいことがあるの。本当に全部一緒に付き合ってくれる?」
何度も何度も同じようなことを聞く亜姫に、和泉は笑いながら頷く。
「だから、わかってるって。何回聞くんだよ、ちゃんと空けとくし全部つきあうから心配すんな。
亜姫がそんなワガママ言うなんて、初めてじゃない?珍しいよな。……そんなに、デートしたいの?」
「……したい。だから、休んだりしないでね?」
勢いこんだ自分がちょっと恥ずかしい。そう思ったが、亜姫は正直にお願いした。
ジンクスを叶えたい。
単純にデートもしたい。
和泉にも喜んでもらいたいし、何よりも一緒に楽しみたい。
その為に、普段なら絶対やらないサプライズも準備した。
亜姫がおっぱい以外で自己主張をすることはないが、和泉にはつい色々な望みを持ってしまう。
亜姫は文化祭を心待ちにしていた。
紗世莉に呼ばれた亜姫は、麗華と三人で屋上に行った。
「内緒の話」
紗世莉は、絶対口外するなと二人に固く口止めをした。
曰く。
バスケ部女子には密かに伝わるジンクスがある。
高二の文化祭初日に校内デートをすると永遠に結ばれる、というもの。
しかし、ただのデートではない。とある飲食をする、お互い高2である等々、細かな決まりがいくつもある。男性にバレたり喧嘩したりしてしまうと、逆に絶対結ばれないらしいが、無事達成できた暁には永遠の愛が手に入るのだとか。
そして、このジンクスの最大の難関こそ「とある飲食」にある。
必要とされるうちの一つが滅多に出るものではなく、そもそもジンクスを試せる年の方が珍しい。
「それが、数年ぶりに今年出るの。それでね。亜姫、和泉とやってみない?」
亜姫の心が弾んだ音を立てた。
和泉と一生結ばれるなんて、そんな先のことを考えた事は無かったが……やってみたいと思った。
「バスケ部じゃないのに私が聞いちゃって……試しちゃっても大丈夫?」
「確かに秘密の話だけど、女の子がバスケ部でなきゃ駄目とは言われてない。
その話を聞いた時、亜姫にやってほしいと思ったの。やるなら、麗華と二人で全面的に協力してあげる」
「さよりちゃん、そんな大事な話をどうして教えてくれるの? 二人とも、和泉と付き合うのを反対してたんじゃないの?」
すると、二人は顔を見合わせて笑った。
「私達は和泉を否定してるわけじゃない。もちろん今までのあいつは最低だし、未だに亜姫以外には塩対応。今ではクソガキっぷりが増して、亜姫への執着は異常だしやたらワガママ。
なのに和泉のすることって、なんだかんだ許されちゃうじゃない。それが気に食わないだけよ。ほっといたら亜姫の自由が無くなっちゃうでしょ?
知ってる? 今ここに来る前も、亜姫のこと離したくなくて邪魔しようとしてきたのよ? 今だってここに来ないように、ヒロと戸塚に捕まえてもらってるんだから」
うんざりした顔で麗華が溜息をつき、紗世莉も呆れている。
「でもね。和泉が亜姫を大事にしてるのはわかる。それを見てると、なんだか永遠の愛ってもんを信じたくなっちゃうんだよね。だから亜姫の為っていうより、その行く末を見てみたい……っていう好奇心もあるかな」
紗世莉は、気まずそうに笑った。
「それにね、そう簡単にはいかないの。クリアできた人は殆どいない。
この秘密が守られ続けてるのは……聞いた子達が皆、そこに神秘性を感じているからだと思う。実際、できた人達は結ばれたらしいよ。亜姫と和泉も、できるような気がしたの」
二人は亜姫を優しく見つめる。
「そもそも亜姫はバスケ部じゃないし、そこからイレギュラーだから。固く考えずにやってみたら?
亜姫が楽しみにしてた行事なのに和泉の子守を押しつけちゃったし、やりたかった接客もできなくなっちゃったからね。そのお詫び」
亜姫は瞳を輝かせた。
「やってみたい。……でも、和泉が嫌がるかも。邪魔が入るって言って外を歩きたがらなくて。
最近はまた声かけられることが増えてるみたいだし、接客なんかしたらそれこそ……」
「あぁ……亜姫と付き合いだして、前より人間味が増してきたからね。
皆、バカだよね。和泉が話すのはあくまでも亜姫が絡む時だけなのに、自分達も同じように相手してもらえると勘違いしちゃって。
まぁ、そこは亜姫が事前にオネダリしときなさいよ。普段、全然ワガママ言わないでしょ?
和泉、亜姫にもっとワガママ言ってもらいたいんだってよ? 戸塚がこの間言ってた」
「え? 和泉にはワガママばっかり言ってるし、いつでも好きなことをやらせてもらってるよ?」
「亜姫のはワガママのうちに入らないから。
ちょうど良いじゃない。文化祭デートしたい! その日は、ワガママ全部聞いて! って亜姫が言えば、尻尾振って大喜びで付いてくるわよ」
亜姫はその提案を受けることにした。
言われたまま和泉に伝えると、二つ返事で即答された。そうすると亜姫もウキウキしてくるし、やるからには叶えたくなってしまう。
事あるごとに亜姫は確認した。
「絶対、休まないで来てね?」
「必ず二人でだよ? その時間、ちゃんと空けといてね?」
「沢山やりたいことがあるの。本当に全部一緒に付き合ってくれる?」
何度も何度も同じようなことを聞く亜姫に、和泉は笑いながら頷く。
「だから、わかってるって。何回聞くんだよ、ちゃんと空けとくし全部つきあうから心配すんな。
亜姫がそんなワガママ言うなんて、初めてじゃない?珍しいよな。……そんなに、デートしたいの?」
「……したい。だから、休んだりしないでね?」
勢いこんだ自分がちょっと恥ずかしい。そう思ったが、亜姫は正直にお願いした。
ジンクスを叶えたい。
単純にデートもしたい。
和泉にも喜んでもらいたいし、何よりも一緒に楽しみたい。
その為に、普段なら絶対やらないサプライズも準備した。
亜姫がおっぱい以外で自己主張をすることはないが、和泉にはつい色々な望みを持ってしまう。
亜姫は文化祭を心待ちにしていた。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる