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高2

文化祭準備(2)

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「亜姫、ちょっとおいで」 
 紗世莉に呼ばれた亜姫は、麗華と三人で屋上に行った。
 
「内緒の話」
 紗世莉は、絶対口外するなと二人に固く口止めをした。
 
 曰く。
 バスケ部女子には密かに伝わるジンクスがある。
 高二の文化祭初日に校内デートをすると永遠に結ばれる、というもの。
 しかし、ただのデートではない。とある飲食をする、お互い高2である等々、細かな決まりがいくつもある。男性にバレたり喧嘩したりしてしまうと、逆に絶対結ばれないらしいが、無事達成できた暁には永遠の愛が手に入るのだとか。
 
 そして、このジンクスの最大の難関こそ「とある飲食」にある。
 必要とされるうちの一つが滅多に出るものではなく、そもそもジンクスを試せる年の方が珍しい。
 
「それが、数年ぶりに今年出るの。それでね。亜姫、和泉とやってみない?」
 
 亜姫の心が弾んだ音を立てた。
 和泉と一生結ばれるなんて、そんな先のことを考えた事は無かったが……やってみたいと思った。 
「バスケ部じゃないのに私が聞いちゃって……試しちゃっても大丈夫?」
「確かに秘密の話だけど、女の子がバスケ部でなきゃ駄目とは言われてない。
 その話を聞いた時、亜姫にやってほしいと思ったの。やるなら、麗華と二人で全面的に協力してあげる」
「さよりちゃん、そんな大事な話をどうして教えてくれるの? 二人とも、和泉と付き合うのを反対してたんじゃないの?」
 
 すると、二人は顔を見合わせて笑った。 
「私達は和泉を否定してるわけじゃない。もちろん今までのあいつは最低だし、未だに亜姫以外には塩対応。今ではクソガキっぷりが増して、亜姫への執着は異常だしやたらワガママ。
 なのに和泉のすることって、なんだかんだ許されちゃうじゃない。それが気に食わないだけよ。ほっといたら亜姫の自由が無くなっちゃうでしょ?
 知ってる? 今ここに来る前も、亜姫のこと離したくなくて邪魔しようとしてきたのよ? 今だってここに来ないように、ヒロと戸塚に捕まえてもらってるんだから」 
 うんざりした顔で麗華が溜息をつき、紗世莉も呆れている。
 
「でもね。和泉が亜姫を大事にしてるのはわかる。それを見てると、なんだか永遠の愛ってもんを信じたくなっちゃうんだよね。だから亜姫の為っていうより、その行く末を見てみたい……っていう好奇心もあるかな」 
 紗世莉は、気まずそうに笑った。
  
「それにね、そう簡単にはいかないの。クリアできた人は殆どいない。
 この秘密が守られ続けてるのは……聞いた子達が皆、そこに神秘性を感じているからだと思う。実際、できた人達は結ばれたらしいよ。亜姫と和泉も、できるような気がしたの」 
 二人は亜姫を優しく見つめる。 
「そもそも亜姫はバスケ部じゃないし、そこからイレギュラーだから。固く考えずにやってみたら?
 亜姫が楽しみにしてた行事なのに和泉の子守を押しつけちゃったし、やりたかった接客もできなくなっちゃったからね。そのお詫び」
 
 亜姫は瞳を輝かせた。 
「やってみたい。……でも、和泉が嫌がるかも。邪魔が入るって言って外を歩きたがらなくて。
 最近はまた声かけられることが増えてるみたいだし、接客なんかしたらそれこそ……」
「あぁ……亜姫と付き合いだして、前より人間味が増してきたからね。
 皆、バカだよね。和泉が話すのはあくまでも亜姫が絡む時だけなのに、自分達も同じように相手してもらえると勘違いしちゃって。
 まぁ、そこは亜姫が事前にオネダリしときなさいよ。普段、全然ワガママ言わないでしょ?
 和泉、亜姫にもっとワガママ言ってもらいたいんだってよ? 戸塚がこの間言ってた」
「え? 和泉にはワガママばっかり言ってるし、いつでも好きなことをやらせてもらってるよ?」
「亜姫のはワガママのうちに入らないから。
 ちょうど良いじゃない。文化祭デートしたい! その日は、ワガママ全部聞いて! って亜姫が言えば、尻尾振って大喜びで付いてくるわよ」
 
 亜姫はその提案を受けることにした。 
 言われたまま和泉に伝えると、二つ返事で即答された。そうすると亜姫もウキウキしてくるし、やるからには叶えたくなってしまう。
 
 事あるごとに亜姫は確認した。
「絶対、休まないで来てね?」
「必ず二人でだよ? その時間、ちゃんと空けといてね?」
「沢山やりたいことがあるの。本当に全部一緒に付き合ってくれる?」
 
 何度も何度も同じようなことを聞く亜姫に、和泉は笑いながら頷く。 
「だから、わかってるって。何回聞くんだよ、ちゃんと空けとくし全部つきあうから心配すんな。
 亜姫がそんなワガママ言うなんて、初めてじゃない?珍しいよな。……そんなに、デートしたいの?」 
「……したい。だから、休んだりしないでね?」 
 勢いこんだ自分がちょっと恥ずかしい。そう思ったが、亜姫は正直にお願いした。
 
 ジンクスを叶えたい。
 単純にデートもしたい。
 和泉にも喜んでもらいたいし、何よりも一緒に楽しみたい。
 その為に、普段なら絶対やらないサプライズも準備した。
 
 亜姫がおっぱい以外で自己主張をすることはないが、和泉にはつい色々な望みを持ってしまう。
 
 亜姫は文化祭を心待ちにしていた。
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