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高2
和泉と野口(2)
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二人の様子に笑いながら、亜姫達が歩を進める。それを追うように歩き出した野口を、和泉は呼び止めた。
「野口、ちょっと」
「なんだよ、まだ写真を消したいの?」
「違う。……礼、言っとく」
「は?」
野口は目を瞬かせて和泉を見た。彼を見据える和泉の顔は、先ほどまでと違って真剣そのものだった。
「礼って……なんのこと?」
「プール。亜姫達を助けてくれたんだろ? その後も一日一緒だったらしいな。……助かった」
「……そこは、怒るとこじゃない?
自分の女と楽しんでた相手に礼を言うのかよ? しかも水着で1日中だぞ?
俺、ずっと先輩のそばにいたよ? それこそ普段のあんたみたいに。俺が亜姫先輩のこと好きだってこと、忘れてない?」
「だからだよ。お前がいたから亜姫は楽しめたし、悪い虫がつかずに済んだ。お前が守ってくれたんだろ?
……あの時、俺は亜姫に何もしてやれない状況だったからさ。お前に偉そうに言う資格なんてないんだよ、本当は」
「あー……やっぱり何かあったんだ? 先輩、少し元気なかったから」
「そっか。じゃあ余計に、亜姫を笑わせてくれた礼を言わなきゃなんねーな」
珍しく凹んだ様子の和泉に、野口はつい優しくなってしまう。
「なにか悪いもんでも食ったんスか……? あんたがそんなんだと調子狂うんだけど……」
和泉は苦笑をこぼし、表情を和らげる。
「お前が亜姫に本気なのは知ってるし、亜姫が嫌がることや弱みにつけこんだりも絶対にしないだろ? 亜姫が楽しめてたのは、写真を見たらわかる。
俺は、亜姫が相手だと上手くできない時があって……今回は、マジで礼を言うしかねーよ。色んな意味で助かった」
和泉は珍しく自虐的だった。
すると野口が大きな溜息をつく。
「あーあ、そういうとこズルいよなぁ!」
野口は和泉を腹立たしげに睨みつけた。
「和泉さん、ズルいよそういうの。すごく嫌な奴だったら本当に嫌いになれるのに、ちょいちょいそうやって丸めこんでくんだもん。嫌いになりきれねぇじゃん」
「なんだよ、それ」
和泉が小さく笑う。
「何があったか知らないけど、感謝してくれよ? 珍しく落ち込んでる様子だった亜姫先輩に、あんたなら絶対話聞いてくれるはずだって背中押してやったんだから。
………代わりに、写真は堂々と貰うからな!」
あんなこと言わなきゃよかったって思ってたのにさぁ、そんな態度見てたらあれで良かったと思いたくなるじゃねーか。
なんだよ俺ただのいい奴じゃん、すげぇ損した気分だな……。
ボヤく野口に、和泉は笑ってしまった。
「俺、お前のことは割と気に入ってる」
「え?」
驚く野口を和泉は眩しそうに見つめた。
「お前は亜姫と似てる。俺とは全然違う。
時々、すごく羨ましいと思うことがあるよ。……クソガキだけど」
「最後の一言は余計だろ。
和泉さん。俺は、まだ諦めてないよ。……負けねぇからな」
なんとなく照れ隠しと覚しき様子で。野口は「これぐらいじゃ絆されねぇからな!」と叫んで走っていった。
「いずみー? 野口君、どうしたの?」
少し先から亜姫が問いかけてくる。
「知らね。ハラでも痛くなったんじゃない?」
和泉が適当な返事を返すと、その更に先から
「ちげーよ! 適当な嘘つくんじゃねぇ、このクソ人間!」
と野口の怒鳴る声が飛んできた。
やはり、どこか憎めない男だ。
そしてこの日、子供っぽさを覗かせた和泉に新たなファンが増えた。
また、野口も。もともと可愛らしい顔立ちをしていることもあり、にわかに知られた存在となっていった。
が、それはまた別のお話。
「野口、ちょっと」
「なんだよ、まだ写真を消したいの?」
「違う。……礼、言っとく」
「は?」
野口は目を瞬かせて和泉を見た。彼を見据える和泉の顔は、先ほどまでと違って真剣そのものだった。
「礼って……なんのこと?」
「プール。亜姫達を助けてくれたんだろ? その後も一日一緒だったらしいな。……助かった」
「……そこは、怒るとこじゃない?
自分の女と楽しんでた相手に礼を言うのかよ? しかも水着で1日中だぞ?
俺、ずっと先輩のそばにいたよ? それこそ普段のあんたみたいに。俺が亜姫先輩のこと好きだってこと、忘れてない?」
「だからだよ。お前がいたから亜姫は楽しめたし、悪い虫がつかずに済んだ。お前が守ってくれたんだろ?
……あの時、俺は亜姫に何もしてやれない状況だったからさ。お前に偉そうに言う資格なんてないんだよ、本当は」
「あー……やっぱり何かあったんだ? 先輩、少し元気なかったから」
「そっか。じゃあ余計に、亜姫を笑わせてくれた礼を言わなきゃなんねーな」
珍しく凹んだ様子の和泉に、野口はつい優しくなってしまう。
「なにか悪いもんでも食ったんスか……? あんたがそんなんだと調子狂うんだけど……」
和泉は苦笑をこぼし、表情を和らげる。
「お前が亜姫に本気なのは知ってるし、亜姫が嫌がることや弱みにつけこんだりも絶対にしないだろ? 亜姫が楽しめてたのは、写真を見たらわかる。
俺は、亜姫が相手だと上手くできない時があって……今回は、マジで礼を言うしかねーよ。色んな意味で助かった」
和泉は珍しく自虐的だった。
すると野口が大きな溜息をつく。
「あーあ、そういうとこズルいよなぁ!」
野口は和泉を腹立たしげに睨みつけた。
「和泉さん、ズルいよそういうの。すごく嫌な奴だったら本当に嫌いになれるのに、ちょいちょいそうやって丸めこんでくんだもん。嫌いになりきれねぇじゃん」
「なんだよ、それ」
和泉が小さく笑う。
「何があったか知らないけど、感謝してくれよ? 珍しく落ち込んでる様子だった亜姫先輩に、あんたなら絶対話聞いてくれるはずだって背中押してやったんだから。
………代わりに、写真は堂々と貰うからな!」
あんなこと言わなきゃよかったって思ってたのにさぁ、そんな態度見てたらあれで良かったと思いたくなるじゃねーか。
なんだよ俺ただのいい奴じゃん、すげぇ損した気分だな……。
ボヤく野口に、和泉は笑ってしまった。
「俺、お前のことは割と気に入ってる」
「え?」
驚く野口を和泉は眩しそうに見つめた。
「お前は亜姫と似てる。俺とは全然違う。
時々、すごく羨ましいと思うことがあるよ。……クソガキだけど」
「最後の一言は余計だろ。
和泉さん。俺は、まだ諦めてないよ。……負けねぇからな」
なんとなく照れ隠しと覚しき様子で。野口は「これぐらいじゃ絆されねぇからな!」と叫んで走っていった。
「いずみー? 野口君、どうしたの?」
少し先から亜姫が問いかけてくる。
「知らね。ハラでも痛くなったんじゃない?」
和泉が適当な返事を返すと、その更に先から
「ちげーよ! 適当な嘘つくんじゃねぇ、このクソ人間!」
と野口の怒鳴る声が飛んできた。
やはり、どこか憎めない男だ。
そしてこの日、子供っぽさを覗かせた和泉に新たなファンが増えた。
また、野口も。もともと可愛らしい顔立ちをしていることもあり、にわかに知られた存在となっていった。
が、それはまた別のお話。
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