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高2
勘違い(2)
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「亜姫!? どうしたの?」
慌てる麗華に、亜姫は泣きながら告げた。
「和泉、やっぱり私のことが嫌になったんだぁ……」
その時、ふと開かれた雑誌が目に入る。
そこには、特集と称して「性」に関わる色んな内容が掲載されていた。
『抱いた後に急変するこんな男に要注意!』そう書かれた見開きページには。
・抱いたあと急にそっけなくなるのは女の子の体やセックスに満足しなかった人、または一度抱いて興味を失った人
・体目当ての人は褒め言葉や甘い言葉を口にするが、好きだとは口にしない
・セックスした後、理由をつけて急に会えないと言う
・突然、連絡が取れなくなる
・しばらく連絡をよこさず、急に自分の都合だけで『今すぐ会いたい』とか言いだす人は確実に体目当て
・それまで行っていた家に入れなくなったり、外で会おうと言い出してプライベート空間に寄せ付けたがらない
等々、真偽不明の内容がこれでもかと書かれていて、行為後に遊ばれた・捨てられたという体験談がある──まさに、今の亜姫と同じような状況。
この手のものは情報を聞きかじる程度で、鵜呑みにする人などいないと思っていたのだが。どうやら亜姫は、かじるどころか丸呑みしたらしい。
さすが亜姫……と麗華が変な感心をしたところで、追い打ちをかけるようにおかしな言葉が飛び込んできた。
「わ、私、わたし……好きって言われなかった。一度も、言われなかった……。これ、全部、私のことだよ……」
「ちょっと。落ち着きなさいよ」
「そうだ、そうだよ。和泉って、一度シたら二度と関わらない人だ、って聞いてたのに。
オネダリもしつこいのも嫌いだって、知ってたのに……! 私、オネダリしちゃった。和泉、しつこく頼まれたら渋々相手するって聞いてたのに……。
だからだ。私のことも、我慢して相手してくれてたんだ……」
亜姫は、思い詰めた顔でこれでもかと呟き続けている。
なんじゃそりゃ。お前は心底アホなのか。
柄にもなく激しくツッコみたくなったが、麗華は亜姫を止める方を優先した。
早く止めねば、手がつけられなくなってしまう。
「落ち着けってば。それは亜姫以外の女に対してでしょ?」
「一度シた子は皆、縁切りされてきたんでしょう? 私だけ違うなんて言える?」
「そりゃ、もちろん言えるわよ」
「言われてないよ、そんなこと!」
「そんなの言われなくたってわかるじゃない。それだけ大事にされてて、なにバカなこと言ってんのよ。
それよりあんた、そんなにしつこく頼んだの?」
「そう、色々しつこく聞いてたの……あれはオネダリと同じだよ……」
亜姫は後悔を滲ませて呟いた。
「だとしても。亜姫のお願いなら和泉は喜んで聞いてくれたでしょ?」
亜姫を宥めるように、麗華は優しく声をかけてみた。が、亜姫には効果がなかったようだ。
「そうだ、今思えば……確認されてた……。できない理由を言われてたよ…。
だけど、それでもいいって、私がオネダリしたの。そういうのが一番嫌いだって、何度も聞いてたのに……」
あまりにもタイミングがよすぎる様々な出来事と、ピタリと当てはまる亜姫の解釈。
聞けば聞くほど麗華は冷静になった。
──あぁ、出た。もう確実にぶっ飛んじゃった。こうなると、もう収拾がつかない。
見てる分には面白いけど、今回はちょっと面倒くさそう。でも肝心の和泉が不在だしねぇ……。
和泉が何かやらかしていることは間違いないだろうが、おそらく誤解だろう。
あの男が亜姫を嫌になるなんて考えられないし、他の女を気にいるなんて有り得ない。箍が外れて抱き潰したと言う方がよっぽど信じられる。
しかし、こうなった亜姫が聞く耳を持たないことを麗華はよく知っている。和泉本人と話をしない限り、何を言ってもムダだろう。
麗華は呆れて放置を決めた。
亜姫がこうなると、見てる分には面白いし。
二人が別れるとは思えないし、万が一別れたとしても亜姫を泣かすそんな男はこっちから願いさげ。
麗華にとっては、亜姫さえ笑ってればどうでもいいのだ。
あんな男は放っておいて、今は亜姫を楽しませることにしよう。
亜姫の面白い生態が大好物で和泉に厳しい麗華は、現状を「問題なし」と割り切った。
「まぁ、とにかく和泉と話をしなさいよ。今は待つしかないじゃない。
まずは明日のことを考えよ? 琴音達も来るって言ってたし、楽しもうよ。ね?」
宥めているうちに、亜姫は泣き疲れて寝てしまった。
そして翌朝。寝坊した亜姫は、麗華にお尻を叩かれながら浴室へ。
その勢いのまま慌てて飛び出す頃には、すっかり和泉のことを忘れていた。
慌てる麗華に、亜姫は泣きながら告げた。
「和泉、やっぱり私のことが嫌になったんだぁ……」
その時、ふと開かれた雑誌が目に入る。
そこには、特集と称して「性」に関わる色んな内容が掲載されていた。
『抱いた後に急変するこんな男に要注意!』そう書かれた見開きページには。
・抱いたあと急にそっけなくなるのは女の子の体やセックスに満足しなかった人、または一度抱いて興味を失った人
・体目当ての人は褒め言葉や甘い言葉を口にするが、好きだとは口にしない
・セックスした後、理由をつけて急に会えないと言う
・突然、連絡が取れなくなる
・しばらく連絡をよこさず、急に自分の都合だけで『今すぐ会いたい』とか言いだす人は確実に体目当て
・それまで行っていた家に入れなくなったり、外で会おうと言い出してプライベート空間に寄せ付けたがらない
等々、真偽不明の内容がこれでもかと書かれていて、行為後に遊ばれた・捨てられたという体験談がある──まさに、今の亜姫と同じような状況。
この手のものは情報を聞きかじる程度で、鵜呑みにする人などいないと思っていたのだが。どうやら亜姫は、かじるどころか丸呑みしたらしい。
さすが亜姫……と麗華が変な感心をしたところで、追い打ちをかけるようにおかしな言葉が飛び込んできた。
「わ、私、わたし……好きって言われなかった。一度も、言われなかった……。これ、全部、私のことだよ……」
「ちょっと。落ち着きなさいよ」
「そうだ、そうだよ。和泉って、一度シたら二度と関わらない人だ、って聞いてたのに。
オネダリもしつこいのも嫌いだって、知ってたのに……! 私、オネダリしちゃった。和泉、しつこく頼まれたら渋々相手するって聞いてたのに……。
だからだ。私のことも、我慢して相手してくれてたんだ……」
亜姫は、思い詰めた顔でこれでもかと呟き続けている。
なんじゃそりゃ。お前は心底アホなのか。
柄にもなく激しくツッコみたくなったが、麗華は亜姫を止める方を優先した。
早く止めねば、手がつけられなくなってしまう。
「落ち着けってば。それは亜姫以外の女に対してでしょ?」
「一度シた子は皆、縁切りされてきたんでしょう? 私だけ違うなんて言える?」
「そりゃ、もちろん言えるわよ」
「言われてないよ、そんなこと!」
「そんなの言われなくたってわかるじゃない。それだけ大事にされてて、なにバカなこと言ってんのよ。
それよりあんた、そんなにしつこく頼んだの?」
「そう、色々しつこく聞いてたの……あれはオネダリと同じだよ……」
亜姫は後悔を滲ませて呟いた。
「だとしても。亜姫のお願いなら和泉は喜んで聞いてくれたでしょ?」
亜姫を宥めるように、麗華は優しく声をかけてみた。が、亜姫には効果がなかったようだ。
「そうだ、今思えば……確認されてた……。できない理由を言われてたよ…。
だけど、それでもいいって、私がオネダリしたの。そういうのが一番嫌いだって、何度も聞いてたのに……」
あまりにもタイミングがよすぎる様々な出来事と、ピタリと当てはまる亜姫の解釈。
聞けば聞くほど麗華は冷静になった。
──あぁ、出た。もう確実にぶっ飛んじゃった。こうなると、もう収拾がつかない。
見てる分には面白いけど、今回はちょっと面倒くさそう。でも肝心の和泉が不在だしねぇ……。
和泉が何かやらかしていることは間違いないだろうが、おそらく誤解だろう。
あの男が亜姫を嫌になるなんて考えられないし、他の女を気にいるなんて有り得ない。箍が外れて抱き潰したと言う方がよっぽど信じられる。
しかし、こうなった亜姫が聞く耳を持たないことを麗華はよく知っている。和泉本人と話をしない限り、何を言ってもムダだろう。
麗華は呆れて放置を決めた。
亜姫がこうなると、見てる分には面白いし。
二人が別れるとは思えないし、万が一別れたとしても亜姫を泣かすそんな男はこっちから願いさげ。
麗華にとっては、亜姫さえ笑ってればどうでもいいのだ。
あんな男は放っておいて、今は亜姫を楽しませることにしよう。
亜姫の面白い生態が大好物で和泉に厳しい麗華は、現状を「問題なし」と割り切った。
「まぁ、とにかく和泉と話をしなさいよ。今は待つしかないじゃない。
まずは明日のことを考えよ? 琴音達も来るって言ってたし、楽しもうよ。ね?」
宥めているうちに、亜姫は泣き疲れて寝てしまった。
そして翌朝。寝坊した亜姫は、麗華にお尻を叩かれながら浴室へ。
その勢いのまま慌てて飛び出す頃には、すっかり和泉のことを忘れていた。
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