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高2

焼き切れる理性(1)

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 あれから数日。和泉は変わらない日々を過ごしていた。
 
 最近は、よく夢を見る。自分の理性がすり減るにつれ、その頻度は増していく。
 実際に見聞きする亜姫の姿と自分に甘えてくる様子。これらが夢と混ざり合い、和泉を昂ぶらせていく。
 
 夢だと分かっている時もあれば、現実と勘違いする時もある。そうすると焦って飛び起きたりして、和泉の睡眠時間は日に日に減っていった。
 
 そして今日も家で過ごし、すやすやと寝ている亜姫。
 幸せそうに眠る顔を見ていたら、また気持ちが揺らぎ始めた。
 
 あー、これ、このままはヤバいな……。
 布団から出るか、別のとこにいた方がいいかもしれない……。
 
  
 と思っていた和泉は、突如ハッとする。 
 なぜだか、直前まで見ていたものと今見えてるものが微妙に違う。妙な違和感。
 
 すると、目の前に。 
 いつものように寝ぼけている亜姫がいた。だがその服が少し乱れている。
 
 和泉はガバッと飛び起きた。
 頭が混乱して、何が起きているのか把握できない。
 
 俺は、寝てた……? いつから……?
 夢を、見てた……? 
 必死で考える。
 
 状況、記憶、手の感覚……そこから導き出されたのは、寝ている亜姫に手を出していたという事実。服や亜姫の様子から、少し触れた程度だろうと判断したが。
 問題は、そこではない。
 
 自分のしたことが信じられない。信じたくない。
 それを亜姫に知られてしまったら……。恐怖が和泉の中を駆け巡り、これは夢だと逃避しかけた。けれど、寝ぼけ眼の亜姫を見て一気に現実へと引き戻される。  
 
「和泉……? どうしたの……?」 
 寝起きの亜姫は、やはり何も気づいてないようだった。
  
 あぁ、無理だ。そう思った。
 何もかも、限界だった。
 なんでもないように振る舞うなんて……もう、出来ない。
 
「亜姫……ごめんな、本当にごめん……」
 和泉は亜姫を引き剥がすようにして距離を取り、逃げ出すように部屋を飛び出した。
  
 そのままキッチンへ駆け込み、水を一気に飲み干す。
 空のコップを叩きつけるように置くと、背面の戸棚に背を預けズルズルと床に座り込んだ。
 
 最悪な形で手を出した。
 ……………なにしてんだよ、俺は!!
 
 頭の中はグチャグチャで、まともに何かを考えることは出来そうにない。 
 とにかく、今日は帰そう。
 そう決意して部屋へ向かい、ゆっくり扉を開けると。
 
 亜姫がベッドの上に座り込み、静かに泣いていた。
 
 なぜ? 状況が理解できなかった。
 和泉はその場に固まったまま、それを眺める。するとそれに気づいた亜姫が、今度は大粒の涙を零して泣き出した。
 
 我に返った和泉が慌てて近寄ると。
 亜姫が和泉の服をギュッと掴み、突然口づける。
 
「……っ、なに、して……」
 呆然とする和泉。
 
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 和泉の脳裏には、夢で見た亜姫の残像が微かに残っている。それが現実とごちゃ混ぜになり、今にも理性が吹き飛びそうだというのに。
 どうにかつなぎ止めたそれで、力任せに亜姫を引き剥がした。
 
 亜姫は一瞬驚愕の表情を見せ、それからクシャリと顔を歪ませた。
「……から?」
「え?」
「私が近づくの、嫌だった……?」
 
 なぜそんな話が出るのか。
 亜姫の言ってる意味がさっぱりわからなかった。
 ただでさえ回らない頭で必死に考える。
 
「違う……」 
 自分の返事がおかしいことにも気付けなかった。
 逆だ、もっと近づいてほしいんだ。そう言いそうになって口ごもる。
 この期に及んでまだ誤魔化そうとする自分が情けなく、消えたくなった。
 
 だがその前に、冷静に考える時間が欲しかった。
 
 そこへ、亜姫の叫ぶような泣き声が刺さる。
「私の体、そんなに嫌い? 胸が小さいから……?」 
「さっきから、何を言って……」  
 和泉が疑問を口にするも、亜姫はしゃくり上げて返事をしない。
 
 今すぐ襲いたい。その気持ちを必死に抑えているが、理性の壁は崩壊寸前。
 なのにそんな言葉を発する亜姫に……何もわかって無い亜姫に……猛烈な怒りが湧いた。
 
「そんなこと言ったらどう思われるか、分かんねーのかっ!」
 和泉が声を荒らげて怒鳴りつけると、亜姫はビクッと体を震わせた。 
「お、怒らないで……。だって、だって……私に、興奮しないんでしょう? だから、嫌なんでしょう……?
 置いていかないで……行っちゃやだ……」
 
 意味不明な亜姫の言葉。通常なら疑問を返し意図を尋ねただろう。だが今の和泉にはただの刺激にしかならず……とうとう、壁が崩壊した。
  
 亜姫の体を強引に引き寄せて、噛みつくような口づけをする。 
 このまま、亜姫の全てを食べ尽くしたい。
 その欲を、欠片と成り果てた理性が「駄目だ!」と叫んで止める。
 
 どうにか体を離した和泉は、亜姫を睨みながら再度怒鳴りつけた。
「自分がなにをされたか、分かってんのかよっ!」
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