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嫌がらせ(2)

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 ぶはっ! 
 じわじわとせり上がってきたものに堪えきれなくなって、和泉は思い切り噴き出した。
 いけないとは思ったが止まらない。声を上げて笑ってしまう。
 
 今の話で気にするところはそこじゃない。
 何言ってんだ。どう考えたっておっぱいの話じゃないだろ。マジかよ、有り得ねぇ。
 
「何で笑うの? ひどい、笑わないって言うから話したのに!」
 怒る亜姫に、和泉は笑いながら謝った。
 
 すると、悲しそうな顔で亜姫が言う。
「和泉も本当は嫌なんでしょう?」
「何が?」
「プルプルおっぱいで、色気たっぷりのお姉さんが好きなんでしょう?」
「え? なんで?」
「だって和泉の相手は皆さんそうだったって言うし……それに、私とはそーゆーこと考えてないって言ってたじゃない。
 私もそーゆーことは考えられないけど、和泉の場合は私のおっぱいが小さいから考えられないんでしょう?」
 
 突然の話に和泉は困惑したが、どうやら誤解があるようだ。 
「違うよ?」
「違わないよ。だって、前に和泉……プルプルおっぱいギュッて揉んでた……」
「は?」
「和泉の手。ほら、こんなに大きいのに……あの時のお姉さんのおっぱい、大きなマシュマロみたいで、この手からはみ出してこぼれちゃいそうだったもん」
 
 話がどんどん予想外の方向に進み、和泉は慌てる。 
 いつの話だ? 見られた時か? あの時の相手、誰だっけ? どんなことしてたかも覚えてねぇ………。
 
 頭をフル回転させてみるが、記憶に残る女や行為など勿論一つも出てこない。 
 どんなおっぱいどんな揉み方、っていや今ソレどーでもいーし興味ねーわ落ち着け俺……と変な脳内ツッコミを入れつつ、同時になんの話かわからず混乱も増していく。
 
「いや、え、ちょっと待って。そうしてたかもしんないけど別に好みじゃねぇよ? そもそも俺、巨乳が好きってわけじゃない」
「でも、いっぱいシてたでしょう? 皆、おっぱい大きくて色気溢れる人ばっかりだったんでしょう?
 琴音ちゃんが言ってたもん。男の人が女の子に興奮しないとあーゆーことは出来ないって。
 だから和泉も、やっぱりプルプルおっぱいに興奮してたんでしょう?」
 
 いや、それは……別にそれなりにできちゃうし、そもそも面倒臭くてどうでも良かった……とは、純粋な亜姫には言いにくい。
 ましてや、他の女とスるのに亜姫を想像してどうにか済ませてました、なんて口が裂けても言えない。  
 なので「あー、それは……」と言葉を濁す形になり、亜姫は「やっぱり!」と傷ついた顔をした。
 
「違う、誤解すんな。俺は本当に大きさは気にしない。
 亜姫のおっぱいに不満を持つことなんてないし、そんなことで気持ちが変わったりもしないよ」
「じゃあ何を気にするの?」
「えっ?」
「大きさはってことは、気にする何かがあるんでしょう? 和泉の好きなおっぱいって、どんなおっぱい?」
「……はぁ?」
「どんなおっぱいが好きなの?」
 
 もう、話の方向性が理解の範疇を遥かに超えている。和泉の思考は遠い彼方に置いてけぼりだ。
 
 惚れた子から卑猥な言葉が連発。だけど、当の本人は純粋な興味を口にしているだけで。
 ……だけで。他気はないわけで。
 
 でも、和泉にしたら。
 理性は揺さぶられるし頭は混乱するしで、とにかく全力を注いで平静を保つ。
 
「なんで、それを知りたいの?」
「プルプル以外の、おっぱいの魅力を知りたい」
 
 ……あー、やっぱりそうですよね。俺を意識しての発言じゃないですよね……。

 またもや脳内でおかしなツッコミをしてしまった自分は、間違いなく冷静さを欠いている。
 
 ただ。好きな子からこんな話をされたら冷静ではいられない、とも思うわけで。
 手を出そうとは思わないが、話題はできれば変えたい。 
 しかし亜姫は食らいつく。
「方法、いくらでもあるって言ってた。一緒に考えてくれるって言ったよね?」
 
 そこで、和泉はさっきの話を振り返ってみた。 
 亜姫の真意を知った上でそのやりとりを思い返してみると。全然意味が違う、とんでもない会話になっていた。
 その面白さに、和泉はまた声を上げてしばらく笑う。
 
 どんだけ好きなんだよ、おっぱい。
 頭ん中、おっぱいしかないのかよ。
 
 今までヒロ達から聞いてた話も思い出して、和泉はしばらく笑いが止まらなかった。
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