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高2
初めてのこと(2)
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亜姫を宥めながら、和泉は思い返していた。
──パワーワード出すぎなんだけど。俺の理性吹っ飛ばす気か。そもそも、なんでいきなりセックス?
あれは、俺の過去の話……? 誰かの入れ知恵? なにか勘違いしてる? とにかく話を聞かないと
と、腕にガクンと重み。そう言えば、亜姫が大人しい。
名前を呼びながら顔を覗き込むと、目を閉じてすうすうと規則正しい呼吸。力の抜けた体。
「寝てる………」
えっ? 寝てる?
今? この状況で?
マジかよ……なんなんだ一体?
和泉は混乱したが、冷静になるにつれ可笑しくなってきた。噴き出しそうになるのを我慢すると体が震え、亜姫の体が沈みこむ。それをそっと横抱きにして、膝の上に抱え直した。
あどけない寝顔の亜姫は和泉にもたれかかり、気持ち良さそうにすり寄るとそのまま深い眠りについた。
◇
「おっまたせー!」と軽いノリで入ってきたヒロが、和泉を見て気まずそうに固まる。
おかしな格好で止まるヒロを見て、和泉は笑ってしまった。
「お前が思ってるようなことはしてねーよ?」
すると、ヒロ達は亜姫を覗き込み……。
「え、寝てんの?」
「そう」
「なんでこんな体勢?」
「キスして、喚いて、泣いて、逃げて、寝た」
「は? どーゆーこと?」
「セックス、絶倫、ヤりまくり、おっぱい。他にも色々」
「はぁ? なんだそれ?」
「突然パワーワード連発。暴れた挙げ句気づいたら寝てたから、俺にもさっぱりわからない」
「えーと……? お前の言ってる事、全く理解出来ないんだけど」
「奇遇だな、俺もだよ」
口を開けたまま固まるヒロ達に、和泉は笑う。
「あんた、いったい何をしたの? まさか無理やり襲ったんじゃないでしょうね?」
麗華の言葉に、和泉はこれまた笑った。
「そんなことするわけねーだろ。ちゃんと亜姫の様子見ながら、ほんのちょっと触れただけ」
「え? それだけ!?」
「そう。額にほんの一瞬したことは、一度だけあったんだけど。口にしたのは初めてだけど、でも本当に軽く触れた程度だよ」
すると、麗華が納得したように頷く。
「琴音が和泉の追っかけだったでしょ。だから、話をやたら聞かされてたのよ」
そして、聞いてた話を三人にする。
「初めてのことに混乱して変な想像をしちゃったのよ。和泉がシてたとこを突然思い出したりしたんじゃない? この子、いきなり思考がぶっ飛ぶから。
しかも想像の斜め上をいくから、予測不能なの」
麗華は呆れた顔で亜姫を見る。
「寝ちゃうとしばらく起きないのよね……。でも、ちょうどいいわ。和泉と話したかったから」
麗華は和泉に向き直った。
「亜姫は恋愛経験がない。それ以前に男女絡みの知識も免疫も無いから。
だから、亜姫に変なことはしないで。まさか、今までの女と同じ扱いなんて……しないわよね?」
「しないよ」
「信用できない」
「大丈夫。できないから」
「……どういう意味?」
麗華が眉をひそめる。
すると、和泉は苦笑した。
「好きすぎて手が出せない。
俺、亜姫の前じゃ余裕ぶったんだけど……さっきのキスだけでいっぱいいっぱい。なのに亜姫の口からあんな言葉が出まくるから……頭ん中、真っ白」
「和泉、それ本気で言ってる?」
戸塚が呆れたように聞く。
「マジで。それに、俺が触れたら汚しちゃいそうだし……怖くて気軽に触れねぇよ。
亜姫、いつもいい匂いするし……よく分かんねぇけど、そばにいるだけで心地良くて。あんなガキみたいなキスだけで舞い上がってる」
「それだけ聞いてると、逆に心配だわ。死ぬほど女食い散らかしてきた男が、処女の見本みたいな子相手に何言ってんだか……」
麗華も呆れた声で言い、ヒロ達が同意して笑う。
「絶対手に入らないと思ってた子が目の前にいて、まだ夢見心地なんだよ、俺。
相手してきた奴らと同じだなんて思われたくない。亜姫にだけは誤解されたくない。だから、悲しませたり怖がらせたりするようなことは絶対しない。
つっても、今すぐ信用してもらうのは無理だよな。まぁ、なんかあれば今みたいに何でも言って」
和泉は柔らかく微笑むと、亜姫を愛おしそうに見つめた。
その様子を眺めていた麗華が、ポツリと呟いた。
「本当は。信用、してる」
和泉は不思議そうに麗華を見上げる。
「亜姫が、あんたの腕の中で眠ってるから。
亜姫はね、いつでも馬鹿みたいに笑ってるし深く悩んだりなんてしない子だけど。でも、何も考えてないわけじゃない。
人のことばっかり考えてるのはわかるでしょ? 人懐っこい子だけど……人に甘えられないの。たとえ何かあっても、全部隠して我慢しちゃう。自分が人の負担になるようなことをしたがらない。
意外でしょ? 私以外に知ってる人はいない。ずっとそばにいる私にだって、滅多に甘えてこない。
でも、そんな亜姫がこんなに熟睡しちゃうほど和泉に身を預けてる。
この子が感情的に泣いたり怒ったりなんて、これまで無かったわよ。和泉の時だけ。人前でこんな無防備に甘えるのも初めて見た。和泉をそこまで信頼しきってるってことに、正直私も驚いてる」
だから、亜姫が我慢しないように二人でよく話して。和泉が聞けば、亜姫は素直に話すと思う。
麗華はそう言った。
──パワーワード出すぎなんだけど。俺の理性吹っ飛ばす気か。そもそも、なんでいきなりセックス?
あれは、俺の過去の話……? 誰かの入れ知恵? なにか勘違いしてる? とにかく話を聞かないと
と、腕にガクンと重み。そう言えば、亜姫が大人しい。
名前を呼びながら顔を覗き込むと、目を閉じてすうすうと規則正しい呼吸。力の抜けた体。
「寝てる………」
えっ? 寝てる?
今? この状況で?
マジかよ……なんなんだ一体?
和泉は混乱したが、冷静になるにつれ可笑しくなってきた。噴き出しそうになるのを我慢すると体が震え、亜姫の体が沈みこむ。それをそっと横抱きにして、膝の上に抱え直した。
あどけない寝顔の亜姫は和泉にもたれかかり、気持ち良さそうにすり寄るとそのまま深い眠りについた。
◇
「おっまたせー!」と軽いノリで入ってきたヒロが、和泉を見て気まずそうに固まる。
おかしな格好で止まるヒロを見て、和泉は笑ってしまった。
「お前が思ってるようなことはしてねーよ?」
すると、ヒロ達は亜姫を覗き込み……。
「え、寝てんの?」
「そう」
「なんでこんな体勢?」
「キスして、喚いて、泣いて、逃げて、寝た」
「は? どーゆーこと?」
「セックス、絶倫、ヤりまくり、おっぱい。他にも色々」
「はぁ? なんだそれ?」
「突然パワーワード連発。暴れた挙げ句気づいたら寝てたから、俺にもさっぱりわからない」
「えーと……? お前の言ってる事、全く理解出来ないんだけど」
「奇遇だな、俺もだよ」
口を開けたまま固まるヒロ達に、和泉は笑う。
「あんた、いったい何をしたの? まさか無理やり襲ったんじゃないでしょうね?」
麗華の言葉に、和泉はこれまた笑った。
「そんなことするわけねーだろ。ちゃんと亜姫の様子見ながら、ほんのちょっと触れただけ」
「え? それだけ!?」
「そう。額にほんの一瞬したことは、一度だけあったんだけど。口にしたのは初めてだけど、でも本当に軽く触れた程度だよ」
すると、麗華が納得したように頷く。
「琴音が和泉の追っかけだったでしょ。だから、話をやたら聞かされてたのよ」
そして、聞いてた話を三人にする。
「初めてのことに混乱して変な想像をしちゃったのよ。和泉がシてたとこを突然思い出したりしたんじゃない? この子、いきなり思考がぶっ飛ぶから。
しかも想像の斜め上をいくから、予測不能なの」
麗華は呆れた顔で亜姫を見る。
「寝ちゃうとしばらく起きないのよね……。でも、ちょうどいいわ。和泉と話したかったから」
麗華は和泉に向き直った。
「亜姫は恋愛経験がない。それ以前に男女絡みの知識も免疫も無いから。
だから、亜姫に変なことはしないで。まさか、今までの女と同じ扱いなんて……しないわよね?」
「しないよ」
「信用できない」
「大丈夫。できないから」
「……どういう意味?」
麗華が眉をひそめる。
すると、和泉は苦笑した。
「好きすぎて手が出せない。
俺、亜姫の前じゃ余裕ぶったんだけど……さっきのキスだけでいっぱいいっぱい。なのに亜姫の口からあんな言葉が出まくるから……頭ん中、真っ白」
「和泉、それ本気で言ってる?」
戸塚が呆れたように聞く。
「マジで。それに、俺が触れたら汚しちゃいそうだし……怖くて気軽に触れねぇよ。
亜姫、いつもいい匂いするし……よく分かんねぇけど、そばにいるだけで心地良くて。あんなガキみたいなキスだけで舞い上がってる」
「それだけ聞いてると、逆に心配だわ。死ぬほど女食い散らかしてきた男が、処女の見本みたいな子相手に何言ってんだか……」
麗華も呆れた声で言い、ヒロ達が同意して笑う。
「絶対手に入らないと思ってた子が目の前にいて、まだ夢見心地なんだよ、俺。
相手してきた奴らと同じだなんて思われたくない。亜姫にだけは誤解されたくない。だから、悲しませたり怖がらせたりするようなことは絶対しない。
つっても、今すぐ信用してもらうのは無理だよな。まぁ、なんかあれば今みたいに何でも言って」
和泉は柔らかく微笑むと、亜姫を愛おしそうに見つめた。
その様子を眺めていた麗華が、ポツリと呟いた。
「本当は。信用、してる」
和泉は不思議そうに麗華を見上げる。
「亜姫が、あんたの腕の中で眠ってるから。
亜姫はね、いつでも馬鹿みたいに笑ってるし深く悩んだりなんてしない子だけど。でも、何も考えてないわけじゃない。
人のことばっかり考えてるのはわかるでしょ? 人懐っこい子だけど……人に甘えられないの。たとえ何かあっても、全部隠して我慢しちゃう。自分が人の負担になるようなことをしたがらない。
意外でしょ? 私以外に知ってる人はいない。ずっとそばにいる私にだって、滅多に甘えてこない。
でも、そんな亜姫がこんなに熟睡しちゃうほど和泉に身を預けてる。
この子が感情的に泣いたり怒ったりなんて、これまで無かったわよ。和泉の時だけ。人前でこんな無防備に甘えるのも初めて見た。和泉をそこまで信頼しきってるってことに、正直私も驚いてる」
だから、亜姫が我慢しないように二人でよく話して。和泉が聞けば、亜姫は素直に話すと思う。
麗華はそう言った。
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