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高2

新しい朝(1)

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 翌朝。 
 ヒロと戸塚が、改札口の端に立つ和泉を見つけて声をかけた。
「あれ、和泉? 早くない? 何してんだよこんなとこで」
「おはよ。……ちょっとな」
 いつもと変わらず、携帯を見ながら適当に返事をする和泉。 
 行かねーの?と聞く声に彼が曖昧な返事をしていると、
「あ、亜姫」
 戸塚が改札口の中に向かって手をあげた。
 
 気づいた亜姫が小走りで駆け寄ってくる。
 そして二人に挨拶を済ませたあと、ゆっくりと和泉を見た。
「和泉………おはよ」
 亜姫は少し顔を赤らめて恥ずかしそうだ。それを見て、挨拶を返す和泉の顔が綻ぶ。
 
 見たことのない光景に、ヒロと戸塚がポカンと口を開けた。
 
「え……? ちょっと待って、なんだよ、お前らのその感じ……?」
 呆然としながらヒロが呟くが、和泉はそれを無視して亜姫の前に手を差し出した。
「亜姫。ほら」
 
 意味がわからず、亜姫は首をかしげる。
 
「ちょ、待て、和泉、おい………」
 ヒロ達が混乱しているのを更に無視して、和泉は亜姫の手を取った。
「……え?」
 ボフンと真っ赤に染まる亜姫。
 和泉は自分の指を絡めながら、その手を引いて歩き出そうとする。

 その肩を、ヒロがガシッと掴んだ。
「待て待て待て待て待て! まず説明しろ! なんでっ!? いつ!?」
「起きたら夢、ってオチかも。って思ってた。……夢じゃなかったわ」
 和泉はそう言って嬉しそうに笑い、今度こそ亜姫の手を引いて歩き出した。
 
 普段見ることのない時間に和泉が現れた。それだけでざわめいていた駅が、手を繋ぐ姿と突然見せた笑顔でパニックに陥る。
 
 和泉はそんな周囲を気にすること無く、蕩けそうな笑顔を亜姫に向け嬉々としている。
 その後ろを歩くヒロ達は、収拾がつかなそうな状況に早くもうんざりしていた。 

 なにせ、あの和泉が突然全てをひっくり返したのだ。その衝撃たるや、凄まじかった。
 だが和泉はそんな周囲に目もくれず、亜姫に話しかけては嬉しそうに笑う。
 
 反対に、亜姫はひどく居心地が悪かった。
 そもそも注目される事がない。その上、和泉もなんだか甘い空気を醸し出してくる。慣れないことばかりでどうしたらいいかわからず、亜姫は羞恥心に埋もれてしまいそうだった。
 そこへ、剣呑さを隠そうともしない数多の視線が刺さる。普段周りを気にしない亜姫でも、さすがに異様な空気を感じ取った。
 進むにつれ様々な言葉が耳に入り、居たたまれない気持ちになってくる。

 状況に耐えられず、亜姫は手を離そうとする。すると和泉が強く握りしめてきて、その手はちっとも離れない。
 焦りながら小声で「離して」と頼むも、そんな様子すらも面白がる和泉。
 いっぱいいっぱいになった亜姫は和泉に怒るが、やはり離れることはなく。
 亜姫はとにかく逃げ出したくてたまらなかった。 
「もう! 離してってば!」
 和泉に怒鳴りながら、繋がった手をぶんぶんと振って解こうとする。けれど和泉は楽しそうに声を上げて笑うだけだ。
 
 それを見た周りの子達は、更に悲鳴や驚愕を口にした。 
「あーぁ……和泉、自分がどうなってるかわかってないな。無駄にフェロモン撒き散らしてる」
「逆に亜姫が……色気なさすぎだろ。なんだよあれ、子供じゃあるまいし」

 ヒロと戸塚は呆れて苦笑した。
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