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本編
口角が痛いです
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「レオベルト様っ!これも美味しいよ!」
「あ、あぁどうも。」
俺はこれからハルとスイパラだと思ってたのに、こんな事になるとは…。
隣には輝かんばかりの美少年、そして俺の前の時間軸における俺を愛に狂わせた張本人であるアランがニコニコしながらケーキを差し出してくる。
「僕の家のシェフはとっても料理が上手なんだ~!」
「それは素晴らしい事ですね。」
アランとは絶対に関わりたくない。
だけど公衆の面前で誘われた以上断れない。
…適当に丁寧な言葉遣いで距離を取り続けるしかない。
アランや王太子のそばに居ると、前の時間軸のことを思い出さずにはいられなくて気分が悪い。
中身が前世の俺に戻ったから、アランを見ても恋愛感情なんてもんは無いが、前の時間軸の、あの制御できない程の狂おしい愛情に苦しみ、自分をこんなに掻き乱すアランへの愛憎の末に処刑された、言葉では言い表せない禍々しい感情を思い出す。
さっきまではケーキが美味しく感じられたのに、今じゃゲロ甘で吐きそう……
だが、呑気にも隣の少年は間髪入れずに話しかけてくる。
「そ、その…良かったら、また僕の家に来てご飯食べに来て欲しいな!」
「はい。機会があれば是非。」
「ていうか、敬語はなくていいって言ったのに!」
「はは、確かにそうですね。」
「もう!僕の言った事忘れないでよね!」
「はい。努力しますね。」
「も~!だから堅苦しいよ!」
ずっと喋りかけてくるな~この子。
返答はわざと面白味のない物にしているのに…。
こんなのロボットに話しかけてるようなものじゃん?楽しくないだろ?頼む、さっさとどっか行ってくれ…
痛くなって来た口角にムチを打ち、俺は完璧な社交スマイルでアランにほほ笑みかける。
それだけでアランが息を飲むのが聞こえた。……なんだよ、キモイとでも??
…早く適当なこと言って逃げよう。
「アラン様、後ろの方々が羨ましそうにこっちを見てますよ。」
「えっ?あ、確かにずっとこっち見てるね…」
「きっと、主催者であるアラン様を私が独占しているからですよ。アラン様は人気者ですから。」
「そ、そんな事ないと思うけど…!」
「いえ、ご謙遜なさらないで下さい。アラン様は素晴らしいお方です。」
「あ、う、うん。ありがと……」
「しかし、私のようなものがいつまでもアラン様のおそばに居る訳には参りません。アラン様にはもっと相応しい相手がいらっしゃるはずです。」
そう、王太子とか王太子とか王太子とかな。早く王太子んとこ行ってきてくれ…アランを独占してる俺に今頃嫉妬の炎を燃やしているとかだったら、俺はこの時点で死亡だ。
「え……?な、なんで?僕は君と……」
「それではこれで。至福のひとときをありがとうございました。」
なんかアランがごちゃごちゃ言っているような気がしたが、そんなことを気にかけている場合では無い。聞こえないふりをして、笑顔で誤魔化した。
俺が微笑むだけで、騒がしい会場も、席から立って俺の腕を掴もうとしていたアランも、ピタリと止まって恍惚に染る。
その隙に颯爽と俺はその場から離れた。
「レオベルト様…良かったのですか?アラン様と仲良くしておいて損は無いのに…」
後ろからハルが心配そうに話しかけてくる。
「…もちろん、アラン様は俺の大事な人脈だよ。分かってる。
だけど少し事情があるからね。積極的に関わりたくはないんだ。」
事情ってのは皆もわかるとおもうが、俺がこの世界の悪役だからだ。しかもよく知りもしない世界で。
なろう系小説は腐るほど読んできたが、俺はあいにく「何をしたらこのイベントが起こる」などと、頼もしく発言する主人公ではない。
つまり、よく分かりもしないBLゲームの悪役令息という立ち位置で出来ることなんてのは大人しくする事ぐらいだ。
という事はハルには言えないが。
「……」
ハルは暗い顔をしている。
「ごめん…それでも仲良くした方がいいんだよね?…誤解しないで欲しいんだけど、エンフィア家とメロヴィング家との仲を悪くしようとはしてないよ。」
ハルはそれでも、もじもじしている。
「きっとうまくやるから、ね?俺を信じて欲しいな。」
俺が悪くしてしまったであろうこの空気に自分で耐えきれなくなった俺は、さっさと歩き出す。だけど後ろから声が聞こえた。
「れ、レオベルト様っ!」
「わっ、な、なに?」
「…俺、レオベルト様にずっと使えてきたから分かります。今日のレオベルト様はいつもより凄く大人っぽくなってて、身だしなみにも気を使って、物も投げず、こんな俺にも優しくしてくれる。
……何かあったんですよね?
もし、事情を聞いたらレオベルト様の気分を害するかと思って聞けませんでしたが、今日ずっと苦しい顔をしているレオベルト様を見て、決心致しました。」
「え、え?ハル……?」
「どうか私に話して下さい。レオベルト様に一生仕える身として、レオベルト様の事はなんでも把握したい。レオベルト様の一番の理解者になりたいんです。」
真剣な表情……。
会場の中心から離れた俺たちは、まるでこの世界に2人だけのような感覚になる。
「あ、俺は……。」
待て。何を口走るつもりだ。
さっき自分で思った事だろ?この世界で何が起こるか分からないんだから大人しく生きるって。
ハルに「俺は2つの記憶がある」って?
「しかも俺はこの世界で悪役なんだ」だと?そう言うつもりか?
甘えるんじゃない。
前の時間軸の俺は記憶が無かったとはいえ、それでも俺だったんだ。被害者ぶってハルに慰めてもらうのか?そもそもハルにこの話を信じてもらえる訳無いのに。
「…心機一転ってやつだよ、ハル。」
「レオベルト様……」
前の時間軸でも、ハルとアランにだけは『レオベルト』と名前で呼ぶ事を許していたし、そう呼ばせていた。
信頼していたし、なにより大事だったから。
だけど、やっぱりこんな酷いやつは裏切られちゃうよな。
でも今回は真っ当に生きるからさ。だからどうか……
「信じて、俺の事。」
ーーーここから作者のコメントですーーー
投稿が夜遅くなり、申し訳ございません。
こんなに沢山の方にお気に入り登録されてとっても嬉しいです。ありがとうございます。
文才の無さから、1話書くのにも時間がかかってしまうので、これからも投稿が途切れ途切れになるかと思います。
どうか気長に待って頂けると嬉しいです。
「あ、あぁどうも。」
俺はこれからハルとスイパラだと思ってたのに、こんな事になるとは…。
隣には輝かんばかりの美少年、そして俺の前の時間軸における俺を愛に狂わせた張本人であるアランがニコニコしながらケーキを差し出してくる。
「僕の家のシェフはとっても料理が上手なんだ~!」
「それは素晴らしい事ですね。」
アランとは絶対に関わりたくない。
だけど公衆の面前で誘われた以上断れない。
…適当に丁寧な言葉遣いで距離を取り続けるしかない。
アランや王太子のそばに居ると、前の時間軸のことを思い出さずにはいられなくて気分が悪い。
中身が前世の俺に戻ったから、アランを見ても恋愛感情なんてもんは無いが、前の時間軸の、あの制御できない程の狂おしい愛情に苦しみ、自分をこんなに掻き乱すアランへの愛憎の末に処刑された、言葉では言い表せない禍々しい感情を思い出す。
さっきまではケーキが美味しく感じられたのに、今じゃゲロ甘で吐きそう……
だが、呑気にも隣の少年は間髪入れずに話しかけてくる。
「そ、その…良かったら、また僕の家に来てご飯食べに来て欲しいな!」
「はい。機会があれば是非。」
「ていうか、敬語はなくていいって言ったのに!」
「はは、確かにそうですね。」
「もう!僕の言った事忘れないでよね!」
「はい。努力しますね。」
「も~!だから堅苦しいよ!」
ずっと喋りかけてくるな~この子。
返答はわざと面白味のない物にしているのに…。
こんなのロボットに話しかけてるようなものじゃん?楽しくないだろ?頼む、さっさとどっか行ってくれ…
痛くなって来た口角にムチを打ち、俺は完璧な社交スマイルでアランにほほ笑みかける。
それだけでアランが息を飲むのが聞こえた。……なんだよ、キモイとでも??
…早く適当なこと言って逃げよう。
「アラン様、後ろの方々が羨ましそうにこっちを見てますよ。」
「えっ?あ、確かにずっとこっち見てるね…」
「きっと、主催者であるアラン様を私が独占しているからですよ。アラン様は人気者ですから。」
「そ、そんな事ないと思うけど…!」
「いえ、ご謙遜なさらないで下さい。アラン様は素晴らしいお方です。」
「あ、う、うん。ありがと……」
「しかし、私のようなものがいつまでもアラン様のおそばに居る訳には参りません。アラン様にはもっと相応しい相手がいらっしゃるはずです。」
そう、王太子とか王太子とか王太子とかな。早く王太子んとこ行ってきてくれ…アランを独占してる俺に今頃嫉妬の炎を燃やしているとかだったら、俺はこの時点で死亡だ。
「え……?な、なんで?僕は君と……」
「それではこれで。至福のひとときをありがとうございました。」
なんかアランがごちゃごちゃ言っているような気がしたが、そんなことを気にかけている場合では無い。聞こえないふりをして、笑顔で誤魔化した。
俺が微笑むだけで、騒がしい会場も、席から立って俺の腕を掴もうとしていたアランも、ピタリと止まって恍惚に染る。
その隙に颯爽と俺はその場から離れた。
「レオベルト様…良かったのですか?アラン様と仲良くしておいて損は無いのに…」
後ろからハルが心配そうに話しかけてくる。
「…もちろん、アラン様は俺の大事な人脈だよ。分かってる。
だけど少し事情があるからね。積極的に関わりたくはないんだ。」
事情ってのは皆もわかるとおもうが、俺がこの世界の悪役だからだ。しかもよく知りもしない世界で。
なろう系小説は腐るほど読んできたが、俺はあいにく「何をしたらこのイベントが起こる」などと、頼もしく発言する主人公ではない。
つまり、よく分かりもしないBLゲームの悪役令息という立ち位置で出来ることなんてのは大人しくする事ぐらいだ。
という事はハルには言えないが。
「……」
ハルは暗い顔をしている。
「ごめん…それでも仲良くした方がいいんだよね?…誤解しないで欲しいんだけど、エンフィア家とメロヴィング家との仲を悪くしようとはしてないよ。」
ハルはそれでも、もじもじしている。
「きっとうまくやるから、ね?俺を信じて欲しいな。」
俺が悪くしてしまったであろうこの空気に自分で耐えきれなくなった俺は、さっさと歩き出す。だけど後ろから声が聞こえた。
「れ、レオベルト様っ!」
「わっ、な、なに?」
「…俺、レオベルト様にずっと使えてきたから分かります。今日のレオベルト様はいつもより凄く大人っぽくなってて、身だしなみにも気を使って、物も投げず、こんな俺にも優しくしてくれる。
……何かあったんですよね?
もし、事情を聞いたらレオベルト様の気分を害するかと思って聞けませんでしたが、今日ずっと苦しい顔をしているレオベルト様を見て、決心致しました。」
「え、え?ハル……?」
「どうか私に話して下さい。レオベルト様に一生仕える身として、レオベルト様の事はなんでも把握したい。レオベルト様の一番の理解者になりたいんです。」
真剣な表情……。
会場の中心から離れた俺たちは、まるでこの世界に2人だけのような感覚になる。
「あ、俺は……。」
待て。何を口走るつもりだ。
さっき自分で思った事だろ?この世界で何が起こるか分からないんだから大人しく生きるって。
ハルに「俺は2つの記憶がある」って?
「しかも俺はこの世界で悪役なんだ」だと?そう言うつもりか?
甘えるんじゃない。
前の時間軸の俺は記憶が無かったとはいえ、それでも俺だったんだ。被害者ぶってハルに慰めてもらうのか?そもそもハルにこの話を信じてもらえる訳無いのに。
「…心機一転ってやつだよ、ハル。」
「レオベルト様……」
前の時間軸でも、ハルとアランにだけは『レオベルト』と名前で呼ぶ事を許していたし、そう呼ばせていた。
信頼していたし、なにより大事だったから。
だけど、やっぱりこんな酷いやつは裏切られちゃうよな。
でも今回は真っ当に生きるからさ。だからどうか……
「信じて、俺の事。」
ーーーここから作者のコメントですーーー
投稿が夜遅くなり、申し訳ございません。
こんなに沢山の方にお気に入り登録されてとっても嬉しいです。ありがとうございます。
文才の無さから、1話書くのにも時間がかかってしまうので、これからも投稿が途切れ途切れになるかと思います。
どうか気長に待って頂けると嬉しいです。
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